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令和3年8月29日 晴れ

西荻窪アートリオン「オレとナオヤのコロナ禍ロングトーン2021夏」

1.ドラムレディ
2.追走曲
3.潮騒
4.消極的な仕返し
5.夜の底
6.JetSong
7.マイ・フォトグラフ
8.星はただの点
・・・・・・・・・

その日、コンサート会場はいつもより静かな緊張感に包まれていた。
みながおれと目を合わさないように始終うつむいているようだった。とはいえ、おれはおれの腕に彫られたばかりの毒々しい刺青にみなの熱い視線を感じていた。目が一度でもかち合うようなら、にいちゃんなに因縁つけとんねん?と襟首を掴みに行っていただろうけど。
おれは常日頃、ギターを弾く際は、素人女の肌に触れるときのように、優しいタッチをもって挑むようにしているのだが、その日はいつになく力が入りすぎて、ステージの序盤で弦をぶった切ってしまった。おれにとっては非常に珍しいしくじりなのだが、その日、西荻窪の駅前でたむろして騒いでいた若者たちをしたたかに何十発も殴りつけてきたあとだったので、その余力が少なからず残っていたのかもしれぬ。すぐに換えのギターをもってくるよう、組の者を走らせようとしたが、カタギの沢田の若頭がどうか兄さん自分のギターを弾いてやってつかあさいと申し出てくれたので、彼の任侠に答えるべく、長渕の泣いてチンピラを文字通り泣きながら歌いあげ手打ちとなった。今夜も人情に触れることの出来たいい夜だった。
珍型コロコロナーバス・ウィル・スミス・デルタブルース株に気をつけて。

双葉双一


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