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2023年のリノエアレース 出場機紹介

最後のリノエアレース開催目前となった今、色々と情報が出揃って来たので僕目線で簡単に最も人気のあるアンリミテッドクラスの出場機の紹介をしてみることに
公式サイトのエントリーリストはこちらから(非常にわかりにくいですが、、、
https://airrace.org/news/2023-racing-lineup-announced/

優勝候補の3機

#3: Steve Hinton – Bardahl Special(P-51)

Photo By 松田未来
Photo by すずきやすお

今年の一番の注目株はバーダル・スペシャルだろう。リノエアレースファンでもあまり馴染みがないかもしれないこの機体は60年近く前に行われた最初のリノ・エアレースではゴールドレースで1位になるもポイントではスミノフに負けてしまい優勝を逃すことに
その後はスカイレーダー用のドロップタンクなんかを装備した長距離レーサーとしてアメリカ大陸横断レースに参戦、バーダルはオイル添加剤とかで有名なメーカーで初期のリノ・エアレースの重要なスポンサーだった会社だ。
その後大改造の進んだリノ・エアレースの黄金期と言える80-00年代にかけては小規模の改造にとどまったバーダルスペシャルは活躍の場もなく表舞台に現れることもなかったが、昨年からまさかの復活!昨年の時点ではほとんどノーマル状態に近かったものも、今年に入ってP-51系レーサーの究極系とも言えるブードゥー(詳しくは僕の同人誌のVol.5で!)からレーシングエンジンを始め、レース用ウィングレットや専用ラジエーターなどを移植し、キャノピーこそはノーマルなままだが、第一線級の戦闘力を備えて最後のリノ・エアレースに参戦することに
熟成期間が少ないため信頼性がどこまで確保できているかが懸念点ではあるものの、実績のあるチノキッズ(プレーンオブフェイム系のメンバーたち)たちを始めとしたメンバーによって改造され、パイロットも若くして何度も優勝経験のあるスティーブ・ヒントン・ジュニア(FAIによるレシプロ機による最速記録保持者でもある)今年大注目の機体だ。

#11: Brent Hisey – Miss America (P-51)

長年リノ・エアレースの顔役とも言える機体が、このミス・アメリカだ。
デビューも古く60年代からリノ・エアレースに参戦を続け、いくつか欠場した時はあれども歴代オーナー達によってリノ・エアレースに出場を続けて美しい星条旗カラーと共にリノ・エアレースの生き証人とも言える機体だ。
戦歴を見ると、大改造されたストレガやダゴレッド、ブードゥーなどのマスタング勢には一歩譲ったものの(詳しくは僕の同人誌のVol.1を見て!)
シルバークラスの常連として活躍し中堅どころのベテランと言った機体だった。
風向きが変わってきたのはここ数年で、多くの大改造機のエントリーが少なくなった結果、優勝を狙えるようになってきたミス・アメリカはハイチューンのマーリンエンジンの手配を始め着々とアンリミテッドクラスの優勝を狙うようになっていく。ぱっと見はノーマルのようにも見える本機だが、主翼は切断されラジエーターも小型化されてウィングレットも装備、ちゃんとやるべきところは改造されておりレース用のエンジンが威力を発揮すれば十分優勝を狙えるだろう。
正直私自身バーダルスペシャルがブードゥーのパーツ移植の報がなければ今年の優勝候補筆頭だった機体だ。パイロットのハイジーさんは全米でもトップレベルの脳外科医で、こちらも優勝経験こそ無いもののレースにおいての経験はヒントンジュニア以上の経歴の持ち主で、機体のコンディションさえ良ければリノ・エアレースの優勝争いはミス・アメリカとバーダルスペシャルの一騎打ちになるだろう。

#8: Joel Swager – Dreadnought (シーフューリー)

優勝候補最後の3機目はサンダースエアクラフトが誇るシーフューリーレーサードレッドノートだ。ドレッドノートの特徴はなんといっても大排気量エンジンと信頼性の高さだろう。サンダースエアクラフトは大戦機のレストアやエアショー用のスモークシステムの販売で有名な会社で、特にシーフューリーのレストアで知られ、アメリカの会社でありながら、ヨーロッパのシーフューリーのレストアを依頼されるほどの実力チームだ。こちらもリノ・エアレースの参戦歴は長くドレッドノートも40年以上リノ・エアレースに参戦している古参機で、エンジンはオリジナルのセントースから大排気量のR4360に換装され、比較的にノーマルに近いエンジンではあるものの、他のムスタングレーサーたちがオリジナルの倍以上となる3000馬力オーバーのパワーと引き換えにガラスの心臓と言われるほどエンジンブローが多い一方(近年はだいぶ解消されているが)ほぼトラブルレスと言っていいほどエンジン廻りのリタイアが少ないのがドレッドノートの特徴だ。実際私自身ムスタング系レーサーは何度かエマージェンシーによるリタイヤを経験したことがあるがドレッドノートのエンジントラブルによるリタイヤは一度も見たことがない。
ただ、エアショーでの空中接触事故でレース用の大型垂直尾翼を破損してからフルパワーでの飛行は出来なくなっており、優勝するには前述の2機のトラブル待ちというのが正直なところだろう。(とはいえ制限がかかっている今の状態でもリタイア上等なガチレーサーがいなければ他の機体を寄せ付けないほど圧倒的な速さを持っている)

非エントリー機だけども注目

P-51Cベースのエアレーサー サンダーバード レースには出場しないもののレストアが終わりレジェンド枠として機体展示がされるらしい。
こちらはリノエアレースではなくて戦後直ぐに行われたベンディックス杯に出ていた強豪レーサー。 


その他の機体紹介(全部は無理なので一部だけ

#63: Patrick Nightingale – Pretty Polly (P-63)

珍しいP-63、博物館収蔵の機体で飛んでいるP-63を見れる機会はめったにないのでぜひ見てほしい

#62: Tom Nightingale – BUNNY(P-51)

鮮烈な赤の尾翼が格好良いP-51はタスキーギ・エアメンと言われる黒人だけで作られた戦闘機部隊のマーキングで通称レッドテイルズ。自国での差別と戦いながら欧州戦線で戦ったので有名。

#114: Mark Watt – Argonaut(シーフューリー)

ドレッドノートのところで紹介した、サンダースエアクラフトのデモ機その1のような立ち位置のシーフューリーがこのアルゴノート、エンジンはR-2800に換装され維持管理が難しいオリジナルのセントーラスに変わって扱いやすいエンジンとしてR-2800がチョイスされている。このエンジン換装プランのデモ機がこのアルゴノートというポジションだ。もう1機あるサンダースエアクラフトの機体との見分け方はこちらの機体はキャノピーがシングルで、4枚プロペラ

#924: Dennis Sanders – 924(シーフューリー)

サンダースエアクラフトのデモ機その2といえる924、非常にそっけない名前で見た目も普通のシーフューリーに見えるけども搭載しているエンジンが超珍しいスリーブバルブのセントーラスエンジンというオリジナル仕様!独特のメカノイズを持つ機体でレア度はかなり高かったりする。現役引退後セントーラスエンジンのオーバーホール技術は失われていたが、それを復活させたのがサンダースエアクラフトで924はオリジナルエンジンのレストアのデモ機という位置づけ、欧州のシーフューリーの中でもセントーラスエンジンの機体はサンダースエアクラフトによってレストアされていたりもする。アルゴノートとの見分け方は練習機向けのダブルキャノピーと5枚プロペラ

#0: Mark Moodie – Spam Can(P-51D)

#4: Jeff Lavelle – Sweet & Lovely(P-51D)

#18: Jim Thomas – Sneak Attack(P-40)

#19: John Maloney – Boise Bee(P-51C)

#26: Scotty “Scooter” Crandlemire – Rushin’ Thunder(Yak-11 R-2000 Mod)

#27: John Maloney – Miss Trinadad(Yak-3Uレプリカ 実質Yak-11かも)

#31: Dan Vance – Speedball Alice(P-51D)

#43: Steven Couches – 51(不明 ノーマルのP-51D?ひょっとするとH型かも)

#44: Brant Seghetti – Sparky(P-51D)

#44: Brant Seghetti – Sparky(P-51D)

#51: RT Dickson – Swamp Fox P-51(P-51D)

#55: Ken Gottschall – Man O’ War(P-51D)

#55: Ken Gottschall – Man O’ War(P-51D)

1945年3月にイギリスに配備されるも戦闘に参加することなく保管されていたところ朝鮮戦争に参加、、、するもここでも実戦は経験することなく、ユニバーサルスタジオに売却されてそこで映画撮影に使われるという不思議な来歴を持つ機体。

#64: Vicky Benzing – Plum Crazy(P-51D)

#64: Vicky Benzing – Plum Crazy(P-51D)

元々数々のスタント飛行やトップガンなどに協力した空撮会社のオーナーで有名だったクレイ・レイシーのP-51 機体カラーは余っていたハワイアン航空の塗料を利用したからだとか、一度もクラッシュしたことがない機体なので非常にクリーンな状態なのが特徴。(多くの大戦機はひどい状態のをレストアしているので特有の癖が付きがちらしい)

#69: Jim Rust – Miss Mavel(P-51)

昨年レースパーツを探していたらしいのでひょっとすると改造されてくる?

#75: John Muszala II – Lady Jo(P-51D)

#81: Rob Patterson – Wee Willy(P-51D)

#81: Rob Patterson – Wee Willy

大戦機の動態保存活動で有名なプレーンズ・オブ・フェイム航空博物館の機体、墜落したレッドバロンから回収された部品も使って組み直されたP-51Dでレジ番号もレッドバロンと同じN7715Cとなっている。

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