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レッドブル・エアレースの終焉と最近のエアレース界隈

先月、レッドブルから2019年の日本大会を最後にレッドブル・エアレースは開催しないという発表が行われた。


公式からの声明は「レッドブルが世界各地で開催している 他のイベントと同じレベルで世間の興味関心を得ることが出来なかった。」とのことだが
一部のファンの間ではレッドブル・エアレースの中国進出の失敗と、東京以外の大会での動員の伸び悩み、そして飛び抜けて動員数が多くレッドブル・エアレースの収益を支えていた日本大会が東京オリンピックを控え2020年の開催が難しくなってしまったのが今回の開催中止の決定打になったのではないかと言われている。

1964年にアメリカでリノ・エアレースが始まってからいくつものエアレースが企画されては消えていったが、残念ながらレッドブル・エアレースもそういったエアレースの一つとなってしまった。

しかしながら日本に限って言えば、レッドブル・エアレースはかなり成功したイベントと言っても良いのではないだろうか。

リンクさせていただいた千葉日報のエアレース終了を伝える記事を読むと、来場者は7万人を超え経済効果も20億円ほどあったそうで、国内トップクラスの自動車レースであるSUPER GTの1レースあたりの観客動員数が3-6万人ほどという事を考えると、動員数だけを見ればほぼ同規模のイベントになっていて。流石に鈴鹿8耐やF1の日本グランプリと比べるといくらか差は大きくなってしまうが、国内のジェネラル・アビエーション系のイベントとしてではなくモータースポーツイベントとしても国内有数の規模にまでなっていったと言っても過言ではないだろう。ここまで巨大で多くのファンを獲得した航空イベントは、自衛隊の広報色の強い各航空基地の航空祭を除けば戦後の日本では見られなかっただけに残念としか言いようがない。これだけ定着したイベントがこのまま消えていくのは忍びなく。願わくはオリンピック以後に再びレッドブル・エアレースが再開されることを祈っている。また、最後のレッドブル・エアレースとなる2019年東京大会のチケットは絶賛販売中なので、少しでも興味のある方は悔いが残らないようぜひ見に行ってほしい、もしかしたらまた再開する原動力になるかも知れないし、世界トップクラスのアクロバット飛行がこれだけ見れるチャンスでは世界でもなかなかないのだから。

さて、レッドブル・エアレース以外のエアレースでも、ここ1年ほどでいくつか大きなニュースがあった。ひとつめはエアバス後援による電動機によるエアレースの開催だ。

昨今のジェネラルアビエーション界隈の動きとして、減り続ける航空用ガソリンの需要低下と環境問題etcによって航空用ガソリンエンジンの将来性が危ぶまれている。そんな中で現在注目されているのが電動飛行機だ。もっともまだ市場で成功している電動飛行機は存在していないが、そういった中で出てきたのがこのAir Race Eとなっている。Air Race Eに参加予定のエアレーサーのベースになっているのは第二次世界大戦前の小型エアレーサーをルーツに持つF1クラスのエアレーサーたち、リノ・エアレースを中心に小型でガレージでも自作可能なキットプレーンも充実しているいわばエアレースの入門クラスとして長らく愛されているクラスだ。小さくて可愛らしいエアレーサーと、アットホームな雰囲気で人気なF1クラス。ぜひこの電動機クラスでも同じように多くの人に愛されるクラスに育っていってほしい

写真は2018年のリノ・エアレース F1クラス。こちらも魅力的なクラスなのでぜひ見てほしい


最後はリノ・エアレースでも最も人気のあるアンリミテッドクラスでの良いニュースと悪いニュースについて

リノ・エアレースは50年以上続く世界で最も長く続けられているエアレースだ。中でも大戦機を中心にレシプロエンジンでの限界を競い合うアンリミテッドクラスは大きな人気を誇り、レース中の最高速度は800km/hを超える。中でも英国最後のレシプロ戦闘機だったシーフューリーを改造したセプテンバーフューリーは、最強のシーフューリーエアレーサーとして競合機の一つとして数えられていた。そのセプテンバーフューリーが売りに出され、エアレーサーとしての役目を終えノーマル機に戻されドイツに渡ることになってしまった。老朽化や多大な資金が要求されるアンリミテッドクラスは年々参加機が減り、ここ10年間は特に強豪チームの引退が目立っていたが、セプテンバーフューリーもその中の1機となってしまった。

セプテンバーフューリーは僕が最初にリノに行った年に見たエアレーサーでもあったので、今回のニュースはとても残念であり最近の衰退を続けるアンリミテッドクラスを象徴するようなニュースでもあった。

悪いニュースがあれば良いニュースもあり、セプテンバーフューリー引退のニュースの直後にレシプロ機による絶対速度記録更新のため、レアベアがレストアショップに送られたニュースが飛び込んできた。

レアベアはリノ・エアレースが行われているリノをホームベースにしているF8F ベアキャット改造のエアレーサーで、最強の空冷エアレーサーとして度々優勝をもぎ取り、旧レギュレーションによる記録ながら、850km/hのレシプロ機絶対速度記録のレコードホルダーで、2015年のレースからしばらく休眠状態に入っていた。

そんなレアベアだったが、2017年にP-51改造のエアレーサー ブードゥーが、絶対速度記録に挑戦し、レアベアの持つ記録の更新規定2%以上の記録更新には届かなかったものの、レアベアの記録よりも速いクラス別の速度記録を更新して最速のレシプロ機の座が脅かされ、ブードゥーの記録を抜き返し世界最速の座を確実なものにするため今回の速度記録の再挑戦が行われる事になったそうだ。記録挑戦の詳細はまだ未定のようだが、かつての王者の復活が今からとても楽しみなニュースだ。


最後に、これらのエアレーサーについては僭越ながら自分が過去に書いたリノ・エアレースの同人誌「AIR RACERS Vol.2」(レアベア)と「AIR RACERS Vol.5」(ブードゥー)にそれぞれ詳しく書いているので、ぜひお手にとってご覧頂きたい。特にブードゥーについては日本語で読める資料としては一番詳細に載っているのでぜひぜひお願いします!

それぞれ、神保町の書泉グランデと秋葉原の書泉ブックタワー、そして同人ショップのCOMIC ZINにて委託しており、COMIC ZINのページからは通販も可能なのでよろしくおねがいします。


飛行機とか好きな人