![_さよらい_ミカCS01](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/8250345/rectangle_large_type_2_bcb07f9df8e5e72b2ea160e28fbd619e.jpg?width=1200)
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大丈夫、まだ覚えている。
胸にしまった私の最後の願い。
少しずつ何かを忘れて、やることも何もなくて、願いを持って過ごすことで私は私を保っていた。
「なんであなた裸足なの?」
「……裸足?あー、なんででしょうね!」
彼女は特に気にしてない顔をして笑った。私もそうかと呟いてそれ以上はきかなかった。
二回目の鐘がなってから色々と忘れているらしい。
「あれ?どうして?」と思うことが増えて、もうそれについて追求する気すら起こらなくなった。彼女は裸足、そういうものなんだろう。
湿った空気の空を見上げて2人で階段に座った。三匹のポケモンが階段を登ったり降りたりして遊んでいる。私と彼女と三匹は何故かいつも一緒にいて、何故なのか考えたが思い出せなかったのでそのままにしている。
ポツポツと喋って、少し間が空いて、ぼーっとして、また何かあればたわいのないことを喋る。世間話も尽きてきた頃、私はなんとなしに口を開いた。
「ここに来てから気付いた願いがあってね」
「へぇ〜いいですね、なんですか?」
「私、帰りたい場所があるんだ、私がいなくなってみんな泣いてるだろうから、早く帰らないと……きっとそろそろだろうしね」
「そうですね、ところでそれはどんな所なんですか?」
「どんなってそりゃ……えっと……」
頭の後ろがさーっと冷めて行った、あれ、これ以上出てこない。どんなってそりゃ……言葉が詰まって、記憶を遡ろうとするも、考えれば考えるほど冷や汗が出てきた。
ついに瞼から涙がこぼれ落ちた。
一度落ちると止まらなくなった。
なんでこんなにも涙が出てくるのだろう。
嗚呼、無くしてしまったものはいつも届かない場所に行ってしまう。
オレンジ色のポケモンがすすり泣く私の背中を頭で押した。
遠くで鐘のなる音が聞こえた。
帰りたい場所があった、でもダメかもしれない
ごめんね
さよなら
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