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星空ナイス・ネイチャのギャンブル漫才第3回「アサクサキングス博士の『超ヒモ理論』」

アサクサキングス博士って誰やねん? 競馬界の裏側に迫る覆面漫才師・星空ナイス&ネイチャが、“万馬券と宇宙の謎”を解き明かす!?


ナイス 「2023年の夏、競馬ファン、とくに公営競馬ファンにはうれしいニュースが届きました」
ネイチャ 「船橋競馬出身の中野省吾騎手がGⅠマカオダービーを制覇! 船橋時代、となりの馬をムチで叩いて制裁を受けたりして、一時引退してたんやけどね」
ナイス 「となりの馬に右ムチ一発、二発! そしたら、となりの馬がゴール前の熾烈な争いからピューッと抜け出して1着入線!」
ネイチャ 「ムチにこたえて豪脚爆発……って、となりが勝ったんかい!」
ナイス 「人の馬を勝たしてはいけません」
ネイチャ 「当たり前やがな。中野騎手は、自分に噛みつこうとした馬をムチで叩いたそうやな。いわば正当防衛や」
ナイス 「ところできみ、覚えているかなあ。昔、名前もない、たいそうぐーたらなライターがいましてね」
ネイチャ 「ほうほう」
ナイス 「そいつの書いた原稿が今ひとつだというんで、夜中に美人編集者が、そのぐーたらライターのいる事務所に押しかけた」
ネイチャ 「美人編集者が夜中に。ええなー」
ナイス 「右ムチを一発、二発……って、そうじゃなくて、もうこんこんと、涙ながらに諭したわけだ。『こんなぐーたらな原稿を書いていたらいけませんよ。年も越せませんよ』と」
ネイチャ 「なんや『芝浜』みたいな話やな」
ナイス 「そして上がった原稿が『万馬券と宇宙の謎』」
ネイチャ 「なんや、それ」
ナイス 「万馬券の裏側には宇宙的理論がいくつも存在しているというのです。まずすでに解明され恐れられているのが、サンスポ佐藤洋一郎記者と水戸正晴記者の◎が並ぶ『魔の惑星直列』」
ネイチャ 「聞いてるだけで不吉やな」
ナイス 「万馬券を期待し予想を信じて馬券を買った者に、とんでもない厄災がふりかかるという、ね」
ネイチャ 「買うたらあかん、買うたらあかん」
ナイス 「続いて、70数年に一度、ものすごいビッグバンを起こすという“エダテル彗星”の驚異」
ネイチャ 「2015年のヴィクトリアマイルで最低人気のミナレットを3着に持って来て、3連単2070万円!」
ナイス 「最初に地球に最接近したのが1998年の日経賞ね。12頭立て最低人気のテンジンショウグンを1着に持って来て、馬連21万3370円!」
ネイチャ 「当時は3連単も馬単もなかったからね。ごっつい配当や」
ナイス 「2000年は、GⅠスプリンターズステークスで、やっばり最低16番人気ダイタクヤマトで1着。単勝2万5750円! 単勝ですよ、単勝。2012年には、またまた日経賞、14頭立て12番人気のネコパンチ1着で、このときはもう3連単があって、2着3着は2番人気1番人気だったのに、45万7140円!」
ネイチャ 「ちょっと待てや。エダテル彗星、70数年に一度やなくて、けっこう頻繁に地球に接近しとるやんけ!」
ナイス 「それから、アサクサキングス博士の『超ヒモ理論』」
ネイチャ 「アサクサキングス博士て! ホーキング博士に似せるなら、せめてボーンキング博士にせえや!」
ナイス 「いえ、忘れもしない、2007年のダービー。ボクは、1番人気のフサイチホウオーも2番人気のヴィクトリーも嫌って、わざわざ3番人気ウオッカ頭で馬券を買ったのに、2着が14番人気のアサクサキングス! そこまで人気薄を連れて来なくても!」
ネイチャ 「3連単215万やもんなー」
ナイス 「狙った人気薄がヒモにもっと人気薄を連れて来て馬券が丸っぱずれになってしまうという、これがアサクサキングス博士の超ヒモ理論」
ネイチャ 「まあ、3番人気が人気薄かゆう話はあるけど、あのウオッカで単勝1050円もついとったからなー」
ナイス 「『ザコビニ流星群の日』というのもありますね」
ネイチャ 「ジャコビニちゃうんかい!」
ナイス 「木幡育とか富田暁とか、☆(星)にもなっていない騎手、つまりザコみたいなのが、その減量を生かして人気薄を持って来る、と」
ネイチャ 「ザコ言うな!」
ナイス 「2023年の秋には田口貫太騎手が、16頭立て12番人気のマイネルプロンプトでみごと1着! 3連単は82万9790円!」
ネイチャ 「11歳馬ですからねー。ちょっと買えません。というかこの漫才、時空ゆがんでない? 富田暁騎手なんて、もうGⅡ勝ってるやんか」
ナイス 「われわれ人間は、時が流れていると勘違いしがちですが、時間なんてものはじつはないんです。現在・過去・未来、この宇宙には全部が同時に存在しています」
ネイチャ 「おいおい、どさくさにまぎれて、本当だったらノーベル賞級の発言してんぞ、きみ」
ナイス 「♪馬柱からも見えなかったよと 翌朝 弟が新聞を広げつぶやく〜」
ネイチャ 「それはユーミンの『ジャコビニ彗星の日』や! 昨日の競馬新聞広げてんのか、弟は! だいたい、“星☆にもなってない”て、話が専門的すぎるやろ」
ナイス 「見習い騎手は勝ちが30回以下が黒三角(▲)印、50回未満が白三角(△)、100回未満でようやく星印(☆)ですからね」
ネイチャ 「こんなネタ、競馬場の営業でしか使えんわ!」
ナイス 「じゃ、そろそろ帰ろうか、無料バスで」
ネイチャ 「またギャラ全部使ってもうたんか! もうええわ」



タイトル画/ゴローちゃん
(※本記事は以前「別冊宝島」競馬読本シリーズに収録されたものに加筆し再構成しています)


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