秋の気配が少しだけ
先週の初めくらいから、夜になると窓の外からコオロギの声が聞こえてくるようになりました。
毎晩同じ方向から、同じ音量で、一匹だけの声が聞こえてきます。
私がここ最近聴いているのは、おそらく同じコオロギの声だと思われます。
眠っている部屋のすぐ近くから聞こえる声。
初めのうちは、今年初めて聴く音色にときめき、お布団に入ってからは、その声にじーっと耳を傾けていました。
鳴き声に合わせてリズムをとっていると、あと数回鳴くだろうなと思う手前で鳴き声が止まります。
鳴き声が止まるたびにリズムが崩れ、ぬん!となります。
コオロギはその後少しの休憩を挟み、再び鳴き声の発信スタートです。
鳴く、休憩、鳴く、休憩、鳴く、休憩…
鳴き方は一定のリズムではなく、不規則に発せられると気付くと、今度は不規則に聞こえてくる鳴き声の長さが気になり、なかなか眠れなくなってしまいました。
その日は鳴き声を気にするパワーより睡魔が優位になった頃、やっと眠りにつけたようです。
鳴き声による寝不足になりました。
コオロギからすれば、必要な場面で必要な表現方法でいざという時に鳴いている訳であり、声を発する際のリズムがどうだかこうだかなんて、しーらなーいよーというところでしょう。
鳴き声寝不足をした日以来、私はコオロギの鳴き声でリズムを取るのをやめました。
小さな体を使い、少し離れた場所にいる人間にもしっかり届くような音量で響かせる声。
リズムなんて取らないで、ただただがんばれーと思って聴くようにしました。
夜になっても外の気温はまだ高く、個人的には秋の気配を微塵も感じられない夜ばかり。
たくましく生きる昆虫たちの体内時計ではもう秋の気配を感じ取っており、秋支度が始まっているのだろうな。
誰にも教えてもらわなくても、自ら察知して行動して。
立派だなぁ。
どうかもう少し、同じ場所から発せられるこの声を聴かせてくださいと、やっぱり鳴き声でリズムを取りそうになりながら、思うのでした。
篠原 友紀
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