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「Our New World(Internet Tredns 2020)」 和訳

毎年「Internet Trends」を出しているBond Capitalのメアリー・ミーカー(※リンク先 wikipedia)が、今年4月にタイトルをOur New Worldに変えて2020年版の「Internet Trends」として公開しました。ひたすら「コロナウイルスによって、世界をどう変わってしまうのか」について書かれたレポートなのですが、各産業や政府のあり方、生活者のライフスタイルが今後どう変わっていくのかを分析した内容で、実例もかなり出していて読み応えがあります。

半ば趣味的に「Our New World」全文を日本語訳してみたのですが、かなりボリューミーです。約21,000文字です。もし気が向けば目を通してみて下さい。引用画像は全て元文レポートからの転載です。

要点だけ知りたい方は「4) 急速な変化により加速する成長(Rapid Changes Drive Growth in Both Directions...)」のパートだけ読んでみて下さい。産業、ライフスタイル、企業のあり方など、after/withコロナで引き起こされた変化(と今後の予測)が細かく書いてあります。

そろそろコロナ収束ムードが漂い始めているのですが、せっかく見え始めた変化の兆しを忘れないという意味でも、あえて半年たったこのタイミングで読むのは意外と悪く無いと思います。(4月当時よりも冷静に捉えられるという点でも)

以下、全体構成です。

1)収束後も大きな影響をもたらすコロナウイルス(Covid-19 = Shock + Aftershocks)

1906年にサンフランシスコで発生した地震は分速138マイルだった。例えるなら地震は地球を引き裂く高速ジッパーであり、それにより人々の生活は突如一変する。
コロナウイルスもほぼ同じだ。2020年4月16日時点、つまり中国国外で最初の感染が報告されてからの94日間で、全世界の陽性患者は210万人に、死者数は14万人に達し、世界193か国のうち93%が感染を報告、感染拡大を抑えるため、政府は前例のない社会統制の施策を実行するほか無かった。

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世界GDPの80%を占め、また人口の大部分も占めているGDP上位20カ国では総じて、ソーシャルディスタンスや検疫が行われたが、私たちがようやくこのウイルスの正体を理解し始めた時、既に我々の生活は一変していた。
この突然の変化によって、医療関係者や介護従事者を除く殆どの人の移動が制限されてしまった。まるで別の時代を生きているようだが、グローバル化された現代の話である。
この難局に直面し、(私たち)アメリカは強くなった。隣人同士は互いに気を配り合い、あくまで継続的な支援体制が整うまでではあるが、各地域で応急処置的な慈善活動が行われており、そして、1800万人以上にも及ぶ医療従事者が最前線で戦ってくれている。
感染が広がるにつれ経済は停滞し失業者も急速に増えている。現在のペースで進めば、数ヶ月もしない内に大恐慌以来のレベルまで失業者数が達する恐れがある。
アメリカ人労働者の4人に1人は、飲食業やサービス業、小売業やその他業界のいわゆる接客業の仕事をしている。1ヶ月前の2020/3/17時点では、既に5人に1人は職を失っていたし、73%の家庭で世帯収入が減少していた。
1929年に起きた大恐慌以後7年間の株価と失業率の推移と、(2020/4/17時点での)直近43取引日のそれらを比較すると、直近の失業率は物凄いスピードで上昇している一方、株価はほぼ同じ減少の動きをしている。同じく他の先進国でも同様に株価が下落し、国際的な不景気を加速させる連鎖反応を引き起こしている。

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政府主導の封じ込め施策によって、かつてないスピードで、広範囲かつ大規模、複雑な資金貸付/流動化/活性化のプログラムが必要になっている。
アメリカ政府は、弱った経済を安定させ活発にする施策として、消費者と経済の救済目的で2兆ドル以上の支援を約束し、一方FRS(連邦準備制度)は地方債購入なども含め、中小企業向けの融資制度を最大2.3兆ドルまで拡大することを約束した。これについては、今後も増えていくと思われる。スクリーンショット 2020-06-16 18.53.12

色々なこと(経済成長/一般消費活動/雇用/賃金)が順調なタイミングで起きた(健康面/経済面/心理面の)危機であり、こんなエラー(危機)が起きる余地は殆どなかったはずである。

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参考までに、今回の4.3兆ドル(2兆ドル+2.3兆ドル)の金融・財政政策は、アメリカ政府の2019年の収入の124%もしくはGDPの20%に相当する。つまり、総負債/GDPの比率は、2019年の107%から(2020年は)127%になるということである。唯一良い面を挙げるとすると、金利が記録的な低さになっていることで、新規借入のここ数年間の年利が比較的低くなることである。

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どれも非常に大きな数字で、ワシントンDCとしては最大・最速の介入である。現状を考えると良くも悪くも、このブースター(バズーカ)は急激に悪化した経済を安定させ、再始動させるためには必要なものだ。
ただ、これだけでも十分でない可能性がある。誰かの収入が減ると、誰かの収入が減り、というように問題は連鎖し複数階層に跨っている。しかもまだ比較的初期段階である。私たちは皆、まだ経験したことのない規模の財政・金融政策の検証に参加しているようなものである。
この迅速な資本投下によって、下降傾向の景気を安定させ、短期間で回復さえることが出来るのだろうか。お金はお金であり、自信とはまた別物である。すぐに結果は分かるはずである。2020年第3四半期の景気は、第2四半期と比べれ良くはなっているだろうが、相当低い水準ではないだろうか。

主に以下5点が現在の課題である。

1)いつになれば安心して外に出られるか、以前の生活の一部を取り戻せるようになるか、経済活動を再開させられるのかを見定める
2)政府の資金を正しく行き渡らせ、経済全体がこの停滞を乗り切れるよう援助する
3)定期的なシャットダウンが起こりうることも考慮しながら、企業が徐々に立ち上がり再始動することを支援する
4)長期的な経済成長に繋がるように、人々が仕事に復帰できたり、支援を受けられたりするのに十分で創造的な方法を用意する
5)財務負担の急増が将来を圧迫しないよう、(不運なことに良い時期には増えてしまう)公債を管理する

2)終わりなき感染症との戦い(Viruses + Microbes = Consistent + Periodic Agents of Disaster)

人類と感染症の戦いは永遠に続いているし、人類が増え続ける限りそれは終わらない。ウイルスはありふれたものであり、大規模なウイルスは珍しいが、例えば世界を変えてしまったウイルスにはこういったものがある。(下図)

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1957-1958年のアジアかぜの犠牲者は110万人、1968-1970年の香港風邪の犠牲者は100万人、2009-2010年の豚インフルエンザの犠牲者は20万人、2014-2016年のエボラの犠牲者は1.1万人、2003年のSARSの犠牲者は8千人。過去100年間のウイルスは全てアメリカ外で発生し犠牲者を出してきた。
主にアジアだが、近年アメリカ以外の地域では死亡率の高いウイルスは感染拡大しやすかった。一方アメリカで起きた最後の感染爆発は100年前のスペイン風邪だ。そして不幸なことに三〜四世代という時の流れは、多くの人にその痛みと、次に訪れる感染症に備えることを忘れさせてしまうのに十分な期間である。
より浸透しやすい世界となり、コロナウイルスが世界に大きな打撃を与えるための準備を万全にしてしまった。
またデジタルによる接続、空の移動、国境を超える動き、貿易などが増加するにつれて、私たちは物理的な繋がりや地理的制約からも解放され、簡単に地点間を移動するようになった。さらに人々は農村など孤立した地域から、より人口密度の高い都市部に移動するようになった。(下図参照)

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これらは、ウイルスが人間や何かの表面に乗っかり、陸や海を越えて何百マイルも移動し新しい世界に拡大することを可能にした。そうなると、ウイルスは誰かがあなたを封じ込めるよりも早く、静かに増殖する。
このウイルスは賢い。長い潜伏期間と無症状のまま他人に伝染する特徴を持ち、とても穏やかな症状で殆どの保菌者は働き続け動き回り続けてしまう。これにより、グローバル全体の環境に適応する形に進化した。
最初は何も感じず、鼻詰まり、咳、そして呼吸困難、最後には死と、まるで予測できない有毒性を持ったカクテルのように人間に影響を与えていく。
これにより、感染しているかどうかに関わらずあらゆる人同士の間に恐怖感が芽生え、見えない敵との戦いに無力感を感じる事になる。
私たちは皆、この危機の期間と深刻さに焦点を当て、感染の恐れなく外出し始められるように、コロナウイルスの感染が収束するのを監視し、待機し、祈っているのだ。
良いニュースもある。"ソーシャルディスタンス"はうまく機能しているようだし、各国の政府も取り入れ始めている。
前例のない迅速な世界各国の対応の結果、上位20の経済大国では何らかの形でのロックダウンが始まり、そのうち19の国では4週間以内に行動を起こしている。

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世界中から寄せられた疫学的なデータから、過去起きたパンデミックの歴史よりも速く、この惨事の原因について詳しく知ることが出来る。
1)介入しない場合、コロナウイルスは指数関数的に増加する
初期のコンセンサスとして、コロナウイルス感染者1人から、新たに2-3人の感染者が発生するということ。平均的な人が1日あたり10-15人と接触しているこの世界において、伝染可能な期間には何百という場面で感染の恐れがある。経験的にもそれは世界中の国で実証されており、ソーシャルディスタンスが取り入れられる前の一週間では、3日で感染者が倍増していた。この急速な感染拡大によって、世界中で一気に警戒体制が敷かれたのである。
2)極端なソーシャルディスタンス策は機能する
ソーシャルディスタンスなどの対策実施後各国では、感染者2倍に達するのに6日間要するようになるのに2週間、11日間要するようになるのに3週間になるなど一定の効果が出ている。
厳格な社会的対策を取るなど、いち早くロックダウンに入った国では、入院率と死亡率が約4週間ほどでピークに達した。
その結果、4月には全世界の日々の新規感染者数は安定し、感染者数が2倍になるのに15日間を要するようになるなど、このパンデミックのピークを迎えたと考えられる状態になっている。
3)私たちに「中間」的な選択肢はあるのか
コロナウイルスの感染力とそれに対抗する徹底的な感染防止策。この対策を緩め始めるとどうなるのかまだ分からない。そうするためには、数日ではなく数分で100%診断可能な方法が必要だし、ワクチンを持てるようになるまでは、最も効率よくコロナウイルスを封じ込める方法やその影響度合いをすぐにシミュレーション出来るようなシステム、ツールも必要である。

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全世界共通の課題は、感染拡大・指数関数的な症例増加を引き起こすことなく、いかに適切な時間・場所で適切な対策を緩和するかという微妙な境界線を見つけていくことである。
この問題は、技術によって解決可能な問題であると私たちは信じる。

3)ウイルスに勝るクリエイティビティ(Creative Innovators (Globally + Together) Will Rise Above the Virus)

過去数世紀の大規模な疫病によってもたらされた壊滅的なダメージからも分かるように、コロナウイルスが猛威を振るい続けことの恐ろしさは想像に難くない。
24時間365日リアルタイムにグローバルに繋がっている現代では、問題に対する気づきや認識はかつてないほど急速に広まる。科学者や専門家が議論・討論を始め、市民、企業、起業家、政府も刻一刻と変わる緊急度に応じて動く。問題を解決するための行動や探究もまた、記録的な速さで増加し得る。
また、コロナウイルス拡大阻止のために医療・公衆衛生における取り組みが各国で急速に始まっている。
●グローバルな情報共有
公衆衛生対応において、同様の段階にあった感染災害時の20倍に当たる3,000もの論文が出されている。
●臨床研究の迅速な動員
34もの国において、コロナウイルスを用いた進行中もしくは完了している臨床試験が500件行われている。
●前例のない規模感
臨床参加予定者は、500万人にも及ぶ。

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私たちは、ニューヨークヤンキース、UCLAブルインズ、ボストンセルティックス、シカゴブルズ、ニューイングランドパトリオット、アラバマクリムゾンタイド、ゴールデンステートウォリアーズなど、その振り付けやチームプレー・勝利でファンを魅了するドリームチームについてはよく話す。
医療専門家によるグローバルなヘルスケアドリームチームも24時間体制で、
情報・ベストプラクティス・フィードバックを大規模に、リアルタイムで高速に共有・反復するなど、前例のない方法で取り組んでいる。彼らは、世界中のコロナウイルス関連の情報に記録的な速さで整理しアクセス可能にしてくれることで安心感を与えてくれている。
民間部門と政府・規制当局の間の連携も含めて、健康関連の問題に対してこういったグローバルな共同の技術支援による迅速な対応はこれまでになかった。データ・技術・機器・情熱を持ったグローバル規模の専門家たちによる速攻が、ウイルスによる速攻に対抗できるかがすぐに分かる。
時間は刻々と過ぎているが、反撃の確率は高いように思える。

4) 急速な変化がもたらす成長(Rapid Changes Drive Growth in Both Directions...)

私たちの習慣的な活動の多くは制限され、完全に止めざるを得ないものも出てきた。しかし一方でコロナウイルスによって成長が促され注目を集めている分野もある。そのほとんどは、長年進行していたトレンドが加速したものであり、デジタルと結びついているものである。
例えば、こういったものがある。

■科学者・エンジニア・各領域の専門家の必要性の増加
■ワークライフバランスの再調整
■DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
■経済の成長ドライバーが継続し、消費者向け・ビジネス向け共にオンデマンドサービスの台頭
■経済安定/活性化という政府の役割を現代テクノロジーで実現
■テクノロジーとヘルスケアにとって2020年は「飛躍の年」になるか
■Afterコロナの進化により、他ビジネスに繋がるようなリアルタイムでのエンゲージメントの糸口がもたらされる

以下、各項目について。

■科学者・エンジニア・各領域の専門家の必要性の増加
私たちBODN CAPITALは、テクノロジー、イノベーション、そして進歩するサイエンス・エンジニアリング・データの力強い役割に注目している。
Afterコロナの環境では、テクノロジー領域やその領域の起業家が輝く機会があると思っている。
このセクターは、アメリカ経済の成長と価値創造を常に後押ししてきた。
事業の勢いや成功の指標として公開時価総額を見たり、過去10年間のアメリカ発の時価総額トッププレーヤーをみると、ある共通項がある。

1)テクノロジー/イノベーション
2)デジタル/クラウドベースのビジネスオペレーション
3)エンジニアリング/コンピューターサイエンスの学位をもつCEO
4)過去30年以内に設立

リスト上位は、Microsoft、Amazon、Apple、Alphabet / Google、Facebookである。これらの成功企業は、短期・長期(10-20年以上)のビジョンと、データ、エグゼキューション(実行)、イテレーション(繰り返し)、エンジニアリング、サイエンスに基づいた事業プランを持った人間に導かれている。
過去3-4ヶ月の出来事は、大規模でデータドリブンなプランニングとエグゼキューション、現代テクノロジーの必要性を強調している。
産業界・政界の両方で、より多く、意見を持った科学者・エンジニア・各領域毎の専門家による計画にフォーカスしていこうとしている。これは良いことである。

■ワークライフバランスの再調整
幸運にもこの状況で働いている人は「避難所生活が日常業務を変えた」と控えめに言う。テクノロジー領域の投資家は、Instagramが約2年間で100万人MAUを確保したりFortniteが18ヶ月で100万MAUを獲得した伝説を思い出すが、Zoomのビデオ通話プラットフォームがそうであったように、ビジネス向けアプリにも関わらず3ヶ月で毎日10万から200万の参加者が入るようになったのを見たことがない。Zoomは新たな記録を打ち立てた。

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コロナウイルスに続く形で、他のビジネス用途のアプリ(メッセージングやコラボレーションプラットフォーム)も劇的に利用量が増えた。
Slackは第1四半期の有料顧客が2倍以上に、また1ユーザーあたりの1日の平均送信メッセージ数も20%増加したといい、Microsoft Teamsは、3/19週に前週比3.7倍の4,400万DAUに達したと報告している。
長年に渡りたくさんの時間を費やして、私たちは仕事・働き方の進化を目の当たりにしてきた。eBay、Upwork、Uber、Airbnbのようにオンラインマーケットプレイスの起業家から、Uber、Doordosh、Instacartのような新しい方法で収入を得る労働者や、Automatic、Zapier、GitLabのようにリモートで働くオフィスワーカーなどだ。
私たちは、バックグラウンドノイズを消すためにヘッドフォンを付け、立ち机でラップトップを使う人が沢山いるテクノロジー企業の広いオープンスペースもよく知っている。
同じスペースにいる利点があるにも関わらず、ワーカーは良くコラボレーションのデジタルツールを使う。私たちは、何割のワーカーが同じ時間に同じ場所にいる必要があるか質問した。双方にとってより良い取り決めはあるのだろうか。
3/2から、ベイエリアのテクノロジー企業はコロナウイルスの影響でWFH(Work From Home)体制に移行し始めた。多くの労働者はPCや身の回りの備品をバッグに詰め家に帰り、毎日の通勤を止め、寝起きし、オフィスでやっていた仕事と同じ仕事を家のキッチンテーブルやソファなどの場所で始めた。
実際に、オフィス勤務のやり方を変えてしまう可能性のある壮大な実験が始まったのである。
私たちは、過去10年間に設立されたテクノロジー企業に投資する傾向がある。彼らのビジネスは大抵、最先端のテクノロジーを用いてクラウドベースで運営されており、ほとんどはオンラインビジネスである。そして多くの場合、従業員の40-50%はプロダクト開発とエンジニアリングに集中ている。

一部の企業を非公式に調査し、新しいリモートワークの環境についていくつかの質問に回答してもらった。

•ビジネスはより効率的に運営されていると思うか?
•チームや個人の生産性は向上しているか?
•より効率的で幸せなビジネスユニット/チームはあるか?
•効率が悪く悲しいビジネスユニットやチームはあるか?
•ビデオ会議/メッセンジャー/その他サービスを使用しているか?
•リモートワークのメリットは何かあるか?
•リモートワークを通じて、企業文化をどのように維持しているか?
•リモートワークのデメリット/課題は何かあるか?
•ビジネス原理が以前計画した通りに3-6ヶ月で実行される場合、リモートワークから学んだことを踏まえ、事業運営の方法をどのように変えるか?

以下でリモートワークの最初の1ヶ月半で学んだことを示す。

•まだ早い。新しい物はすり減り崩壊し始めるかもしれないが、今のところは良い。
•損益の観点では、生産性は同じかもしくは高い。
•ビデオ会議は、使い過ぎない場合、効率的/生産的。時間通りに(または早く)開始/終了する傾向がある。
•メッセンジャー及びビデオベースの情報共有/編集は非常に効果的。
•本社外に勤務する人々は、(リモートワークにより)より含まれていると感じる。
•外部の人とビデオでクイックに話し合うことが可能。
•時間の柔軟性/通勤時間の削減/家族での食事の時間が得られたことは、労働者にとって大きなメリット。
•個々のパフォーマンスや組織設計に関して元々存在していた管理上のボトルネックは、リモートワーク環境においてはより増幅される。
•生産性とバランスの最大の課題は、就学前または学齢期の子供を持つ親において特に顕著。在宅勤務の指令が出るより以前に、勤務日に他の子供の面倒を見てくれるサポート体制があるかどうかが大きい。さらに、特に現在の「避難所」環境では、潜在的な心理的・肉体的ストレスやリモートワークに関するその他の課題を理解するために行うべきことがある。
•効果的な文書によるコミュニケーションとドキュメント(「Amazonの方法」と呼ばれます)に焦点を当てている企業-計画は編集のために書面で共有されます-同期/非同期のどちらでも-分散作業への移行が容易になりました。多くの人は、この形式のコミュニケーションがより洞察に満ちた入力と意思決定につながる可能性があることを観察しています。
•オンラインでの「オフィスの作成」は成功する可能性があります-定期的にスケジュールされた会議に加えて、仕事関連のクラスやトレーニングなどのアクティブなソーシャルエクスペリエンス、ライブストリーミングトレーニングなどのアウトレットも含まれます。

リモートで仕事をせざるを得なくなりどの企業もリモートワーク体制になっているが、今後は更に業務も分散されていくだろう。
リモートワーク拡大における課題の中でも、最優先事項はいくつかある。

1)クリエイティビティの確保と生産性の維持
2)毎日対面した方が良いのか、たまにで良いのか、殆ど対面しなくて良いのか、チームに最適な働き方の見極め
3)エンゲージメントと文化をの意地、採用・教育・育成・雇用維持など人的資源のマネジメント
4)リモートワークの人数増加に併せたテクノロジー・セキュリティを管理する
5)オフィスとの物理的な距離が関係なくなったとした時の採用方針
6)オフィススペースの整理・利用方法
7)出張旅行やエンタメの進化


「スタートアップは、特に固定観念も無く新しいアイデアや変化にも俊敏かつ柔軟に対応する。(リモートワークによる)分散的な働き方も、新しい選択肢としてそれがベストであれば取り入れる。色々と良いことも沢山ある」と、そう語る創業者もいる。

■DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
2020年春の時点でのトレンドを見てみると、相対的には以下のような特徴を持った事業は最も良い状況にあると言えるかもしれない。

1)PCを使うビジネスマンであれば、どこにいても仕事ができるようなクラウドベースのサービス
2)常に需要はあるが、不安な時期には特に需要が増えるサービス(マズローの5段階欲求で言うところの、水・食糧などの生理的欲求に始まり、シェルターなどの安全的欲求…ひいてはエンタメまで)
3)スムーズに消費者に届き課題を解決してくれるようなオンラインでの見つけられやすさを持ったサービス
4)限られた手段の中で消費者に効率よくプロダクトを届ける方法を持ったサービス
5)ビジネスのデジタル面での効率化を実現するサービス
6)広く(新しい)ソーシャルメディアで存在感を持ったサービス

具体的には、こういった事例がある。

・地方飲食店は店内での食事から、Curbside Pick up(指定のパーキングに停車するとお店の人が商品を車の窓まで持ってきてくれるサービス)に移行
・地方販売店は商品情報を載せたウェブサイト上での販売に適応
・地方コミュニティの接続がより加速する
・大手ブランドのオンライン強化(オフライン弱体化の一方で)
・インストラクターが対面からバーチャル授業に移行
・学生の授業が物理的なものからバーチャル/デジタルに移行
・家族向け/個人向けエンタメはよりデジタルのものに移行
・日用雑貨店の買い物客が来店ではなくデリバリー注文に移行
・外食から自宅での食事に移行
・医者の対面診断が遠隔医療/遠隔診断に移行
・CEO/CTOがクラウドベースの製品・プロダクトへの投資を加速

これら多くのOffline→Onlineの移行は元々起きていたが、まさにコロナによって加速することとなった。上記で挙げた例の参考画像やデータは以下参照。

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■経済の成長ドライバーが継続し、消費者向け・ビジネス向け共にオンデマンドサービスの台頭
オンデマンドサービスの増加は元々ここ数年続いていたが、オンデマンドサービスのトッププレーヤーの多くは、コロナによってマイナス影響を受けている。オンデマンドの交通ニーズに応えるプラットフォーム(Uber / Lyft)や宿泊ニーズに応えるプラットフォーム(Airbnb)、その他のオンデマンドサービスは、StayHome施策やソーシャルディスタンス、国境封鎖などの結果、トラフィック/利用量が減っている。
一方、オンデマンドの食料品配送プラットフォーム(Instacart / DoorDash)では需要が急増しており、食料品店や飲食店、日用品店の需要に応えるために積極的に従業員を増やしている。
正味な話、今回のコロナをきっかけにオンデマンドの自宅配送サービスは継続的な市場シェアを獲るだろう。ただ、消費者にとってオンデマンドサービスのメリットは比較的明白な一方で、こういったオンデマンドサービスが労働者に新たな仕事と柔軟性をもたらしているという大事な事実がアメリカではまだまだ正しく評価されていないと言えるだろう。世界中の他の地域、特にアジアではアメリカよりもオンデマンドサービスが普及しているし、先進的でもある。
アメリカにおけるオンデマンドエコノミーは巨大で、今もなお拡がり続けている。2018年初期には、5,600万人がオンデマンドの消費者として推定されていた。Checkrによれば、2019年にオンデマンドサービス従業員のバックグラウンドチェックのプラットフォーム上で1,150万人分の申請があり、2015年から累計で3,500万人分になったという。アメリカ合衆国労働省労働統計局の統計によれば(2020年)3月のアメリカにおける労働者人口1億5,600万人と比べても、かなりの規模になっていることがわかる。

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今、不確実なことは沢山あるが、以下のことは分かる。

1)人々の働き方が変化している
2)職を失う人が増えている
3)多くの人が経済的な不安を感じている
4)3ヶ月〜2年の間にこの世界がどんな風になっているか全くわからない

具体的には以下のようなトレンドが現れるだろう。

●仕事の性質が急速に進化する
第二次世界大戦以来経験が無いような、急速かつ短期的な労働力の再配分を経験していくことになるだろう。コロナの衝撃は、輸送機関、サプライチェーン、食料品店、医療機関での労働力不足を引き起こしているが、例えば米ウォルマートは2020/3/19に、15万人もの時給労働者の雇用を行う計画を発表し、CVSファーマシーは新しく5万人のフルタイム/パートタイム労働者を追加雇用すると2020/3/23に発表している。
ZipRecruiterのようなオンライン求人情報プラットフォーム上での直近の求人情報は、輸送(トラック運転)、Eコマース(倉庫管理・サプライチェーン)、医療機関などの著しい成長を示している。

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●オンデマンドに関わる仕事/職業が進化、経済の大部分を占めるようになる
オンデマンド関連の仕事は、職を失った労働者に複数のプラットフォーム上での仕事への登録を可能にしているし、例えば教育や育児などの生活上必要な時間を生み出すためのスケジュール調整を可能にもしている。日用品店や食品、Eコマースにおけるオンデマンドプラットフォーム化が再加速していくことにより、労働力不足がより顕著になっていく。実際、Instacartは3万人のShopperの求人を発表し(2020/3/23)、Amazonは17.5万人の倉庫管理・配達の求人を発表している(2020/3/16と2020/4/23)。

●多方向の同期/非同期コミュニケーションとフィードバックの関連性が増加
この種の即時的な、フォーカスされたコミュニケーションは、オンデマンドサービスの基礎であるし(例えば、Uberの運転手は、サービス終了後にすぐに評価を受け取るし、新しい注文が入ればすぐにわかる)、レガシーな仕事においてもどんどん利用され始めてきている(これは、Zoom/Slack/Microsoft Teamsなどの機能強化のおかげかもしれない)。そしてこれは、より効率的な訓練ツールにもなり得る。あらゆるビジネス運営においての基礎となっていくはずであるし、生産性・効率性・満足度を上げていくことすら可能だろう。
実際のところコロナは、どうすれば労働力を機敏・適切な状態で保っていけるのか、仕事の性質や訓練・教育の必要性を強制的に再考させる機能としても働いた形だ。

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■経済と雇用の安定/活性化という政府の役割は現代テクノロジーにより実現される
StayHome施策により経済停止を選んだ政府の判断、そしてビジネスを再開させて経済を活性化させようとする政府の努力、これについての議論は今後も続いていくだろう。
だが今現在、幾つかの課題に直面している。前述の通りだが以下。

1)いつになれば安全に外出できるか、一部でも以前の生活通りに再開できるか、そして経済を再稼働させられるのかを把握しなくてはいけない。プライバシーと市民の自由のバランスを保ちながら。
2)政府の資金が適切に行き渡るようにし、唐突な景気停滞を乗り切れるように支援しなくてはいけない。
3)定期的な経済シャットダウンの可能性に気をつけながら、企業活動の再開を支援しなくてはいけない。
4)長期的な経済成長を維持していくために、人々が仕事を再開できるような(もしくは支援を受けられるような)十分な方法を確保しなくてはいけない。
5)財務的な危機が将来への負担とならないよう、(不運にも)景気の良い時代に抱え込んだ政府の債務を管理しなくてはいけない。

コロナは人類だけでなく、人類の「システム」全体にもダメージを与えた。
基礎疾患のある人がウイルスに感染しやすいのは我々もよく知るところだが、政府もまた同じく基礎疾患を抱えていると言っていい。党派に関係なく、全体として抱える問題である。コロナにより、古く脆弱な政府のオペレーションシステム・テクノロジーが明らかになった形だ。今回のコロナをきっかけに、長期に渡って放置されていた政府におけるテクノロジーやプロセスの徹底的な見直しが進めば良いし、より密に納税者、有権者、市民と繋がるようなきっかけになれば良いと思っている。
経済活動の再開準備は各地域で順調に進んでいるが、社会活動が始まるに伴いウイルスの発生源が新たに出てきた場合にロックダウン継続となることを考えると、ゆっくり、じわじわとしか進んでいかないと思われる。世界的には、政府がうまく技術インフラを活用して、市民に情報を知らせ続け、ウイルスの拡大状況をモニタリングすることに成功している例はいくつもある。
シンガポール政府は、WhatsApp、Twitter、Telegramを利用して4つの言語で日々コロナウイルスの更新情報を届けている。韓国政府は、Corona 100Mとうアプリを開発し、市民に半径100メートル以内の感染者情報を届けるようにしている。

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どう行った人や企業が追加支援を受けるべきか、そしてそれをどう受け取るかという取り組みは、それぞれ効率にばらつきはあるが、徐々に改善していくだろう。
政府は支援金の支給方法を決める事になるのだが、直接形式/ 拡張形式 / 使い易いアプリベース形式など各種決済方式にはそれぞれ顧客基盤を持っている企業は産業全体に多くいる現状がある。この中には、クレジットカード/ 支払などのフィナンシャルサービス企業、コミュニケーション企業、APIベースのインターネット企業や公益事業体も含まれる。
この緊急の貸付制度においては、IntuitやPayPal、Squareなどのデジタル決済プレーヤーの参加を考えること、小切手による給付などは考えないことをアメリカ政府にはぜひ考えてもらいたい。
人々が仕事に復帰するようになるとどうなるのかは誰も正確には知る事はできないが、回復が見込めないビジネスも多いだろう。ただ、大小の微調整が必要なものの、多くは元通りになるだろうし、以前より更に成長するビジネスも出てくるだろう(そのうちいくつかは、我々も驚くような領域で起こるかもしれない)。数年前には考えられなかった新しいビジネスも興っているだろう。
ビジネスに携わる人であれば、終わる時は一瞬で、それが戻るには長い年月がかかることを知っているが、2020年は多くのビジネスにとって失われた1年になるだろうし、あくまで理想としては、2021年に向けて、ある程度の規模で事業を再開するというチャレンジをしていくことになるだろう。
その時、過去10年間にリモートワーク/オンデマンドビジネス/スマホ向けプロダクト・アプリの拡大に伴って培われた技術インフラは、衛生面を配慮しながら仕事を再開するというバランスを保つ上で、非常に重要な役割を果たすに違いないだろう。
ただし、継続中の失業給付金に加えて直近の財政・金融施策のコストを考えると継続的なものとは言えず、安心して職場に復帰するためには、今後も政府や納税者に負担がかかり続けるこれらのコストを減らしていく努力が必要になる。私たちは、政府がこういった部分にフォーカスし、一方で優良企業は人々に新旧様々な形の業務を見つけられるよう支援し、医療による支援も加えてこれらがうまく混ざり合うような形が理想的と考える。

■テクノロジーとヘルスケアにとって2020年は「飛躍の年」になるか
コロナウイルスの戦いの最前線にいるのは、アメリカの医療提供システムを構築する機関・医師/看護師などの個人である。何百万もの医療従事者が、自身や家族をコロナ感染のリスクに晒しながら戦ってくれているのである。彼らには感謝と誇りしかない。
残念なことにコロナの感染拡大は、医療システムにおける構造的な欠陥も明らかにしてしまった。2019年のアメリカGDPの8%相当と、連邦予算の1.2兆ドル(メディケア/メディケイド/その他医療サービス)が、予算全体の28%にしかなっていない事は、今回のコロナをきっかけに根本的に考え直さなくてはいけない問題かもしれない。
今回のコロナ影響の中でわかった、注目すべきことが二つある。

1)(アメリカの)医療提供制度は1918年に発生したスペインかぜの時から何も変わっていない
技術革新によるインパクトは、プライマリケアの患者にはほぼ何ももたらしていなかった。患者が症状を発症し、医者のいる診療所を訪問し(コロナに感染していた場合、他人に感染させる可能性はもちろんある)、医者は外見からわかる症状を元に診断し、経過観察ということで家に帰してしまうことが大半である。その後、回復に向かうか、症状が悪化し救急処置室に入ることとなる。
こういった対面診断/治療のサイクルは年間5億回ほども繰り返され、このパターンは100年間一切変わっていない。

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2)データは大量にあるが、接続性とインサイトが欠けている
コロナウイルス拡大初期のタイミングで、政府と州の医療機関は、利用状況と医療機関のキャパシティを手動で追い続けるためスプレッドシートでやり取りする必要があった。データに接続されていないが故に、保健当局は、仮定が少し変わると大きくモデルに影響するような、理論的な指数関数モデルに頼らざるを得なかった。過去数十年の電子医療データへの投資があったにも関わらず、アクセスも出来ず暗い闇の中にあるデータばかりという状態だった。また仮にデータが利用可能な場合でも、プロバイダーがワークロードと膨大なデータ量に圧迫されてしまっており、デジタル化によるメリットはほぼ無いと言っていい状態だった。

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既に起き始めている医療分野での多くのイノベーションは、医療を病院以外にも分散させて患者を消費者として捉えてよりエンパワーし続ける中で、コロナウイルスによってのみ加速していくだろう。

・遠隔医療
 遠隔医療になると、従来の医療システムよりも速く、良い品質で、大抵の場合はより安価に医療を提供出来るようになる。近年急速に進んできており(下表)、コロナウイルスの環境下において、家にいながら診断を受けられるため、感染拡大を抑え、生存者を増やすことに繋がる。
・コネクテッドデバイス
 ネット接続された医療モニタリング機器は、遠隔医療と組み合わされることでその効率性は上がり、慢性疾患から感染症まで、臨床範囲全体で良い結果を生みやすい。
・迅速なPOCT(Point-Of-Care-Testing)検査と診断
 速くて正確な分子診断を行うための基礎技術が10年以上前からあったとしても、分子診断は家庭はもちろん、医師の診療所でも行うことが出来なかった。今や、iPhoneで同じレベルの診断が出来るようになりつつあり、かなり進歩したテクノロジーを持つ企業が多い。コロナウイルスにより、そのような典型的な規制は、障害ではなくイノベーションのためのインセンティブにならなくてはいけないということを思い知らされる。
・埋もれていた医療データとの接続
 医療分野では、相互運用性とAPIからなるモダンなデータアーキテクチャを採用し始めたばかり。コロナウイルスの環境下で、ようやくシステム接続の機運がかつて無いほど高まっている。政府の支援を受けて、革新的な企業によって、過去のシステム統合要件などに囚われずにシステム接続が加速されることが期待される。
・自動化とAI(人工知能)の適用
 
コロナ環境下で、医療従事者のリソースが圧倒的に足りないことが浮き彫りになった。そんな中で自動化は、業務負担の軽減と取得データの質改善という意味において、今後も引き続き浸透していく。応用 / 垂直型の人工知能は、まさにEHR(Electoric Health Record)データと組み合わされ始めたところで、今後は適切な洞察を適切なタイミングで提供しくれるようになっていくはず。

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■伝統的なスポーツはコロナによって、新しいビジネスに繋がるようなリアルタイムのエンゲージメント要素が取り入れられ始める
アメリカにおけるコンタクトスポーツ(競技者同士の体が接触するスポーツ)への情熱は有名である。フットボール、バスケットボール、野球、サッカー、アイスホッケーなどが最たるものだ。他にも、モータースポーツ、ゴルフ、eスポーツなどがある。
ソーシャルディスタンスにより、アスリート・ファンどちらも上に挙げたようなスポーツに参加出来なくなってしまっている。世界中のスポーツ運営団体が、ここ1年以内程で、選手やファンがどうやって参加すれば良いか、その体験自体のあり方を再考せざるを得なくなっている。
例えば、上海のディズニーリゾートがやっているような、ゲストへのマスク着用、体温チェック、(モバイルデバイス上で)感染していないことを示すよう求めるといったやり方は、ワクチンが出来るまでの新標準になるのだろうか?(スポーツの)ファンに生体認証を行うようになるのだろうか?アスリート自身やサポートメンバーについてはどうなるのだろうか?
このコロナ禍におけるスポーツの急速な進化は、他のビジネスにおけるリアルタイムでのエンゲージメントがどう進化していくべきかのきっかけを示しているかもしれない。例えば、Zoomのような一つの大きな空間で何かが出来るかもしれない。TwitchやDiscordが元々想定していた、ゲームの最中の繋がり・共有・コラボレーションという用途を超えてソーシャルやビジネスの場面において使われ始めていることも注目に値する。こういった傾向は今後も続くだろう。

伝統的なスポーツもオンラインに移行し始めている。(NASCAR、フォーミュラワン)※ともにモータースポーツ

2020/3/17、NASCARとiRacingは、才能があり有名なドライバーを集めてeスポーツシリーズである「eNASCAR iRacing Pro Invitational Series」の設立を発表した。2010年に始まったアマチュアゲーム「iRacing Series」がコロナによって進化したのである。参加者たちは、大抵の場合自宅からバーチャルシミュレーターでレースを行い、その一部始終はソーシャルメディアなども利用しながらFox Sportsでライブ配信される。NASCAR曰く「実際に車が走れるようになるまでの間は、熱心なファンに対して、(オンライン)レース当日は独自の楽しめる体験をNASCARコミュニティ全体として提供していく。」とのこと。
実際、2020/3/22に行われた初めてのVirtual Homestead Miami Speedwayでは、Daytona500で3度優勝経験のあるDenny Hamlinが優勝を飾った。その際、彼は裸足で応援する娘と一緒にレースに参加していた。しかも引退選手のDale Earnhardt Jr.は現役復帰し、2位になっている。
2回目のレースは、130万人の視聴者の中、Texas Motor Speedwayで3/29に行われた。この視聴者数は前週から43%も増加しており、前週のレースでのeスポーツ視聴者数の記録を塗り替えている。
今のところまだ優勝者への賞金は設定されていないが、何人かのレーサーはバーチャル空間上の車にスポンサーのペイントを入れる契約を求めているという。
またPenn National Gamingは、5/3にDover International Speedwayで開催されるバーチャルレースのスポンサーになると発表している。このレースでは、Barstool Sports(Penn Gamingの子会社) の持つコンテンツを取り込み、ファンがよりイベントに参加している感覚を味わえるようにしているという。

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3/22には、フォーミュラワン(F1)がeスポーツであるバーチャルグランプリを立ち上げているが、このレースではF1ドライバーだけでなく、有名人、スポーツ選手がBahrain’s Sakhirのサーキットで競い合っている。レースはYouTube、Twitch、Facebookで配信され、視聴者数は320万人だった。

伝統的なスポーツ(大学バスケ)もオンラインに移行、AIが試合結果を予測する事例もある。

3/11、March Madness2020(アメリカの男子バスケットボールトーナメント)の代わりに、大学バスケのSubredditのメンバー120万人がトーナメントに参加し、College Hoops 2K8(バスケゲーム)を使って68チームで仮想NCAAトーナメントを開催し、その様子を配信した。試合の様子はYouTubeで配信され、コンピューター同士の試合の結果をトーナメントの結果として用いている。
Subredditのモデレータは、チームの選手をいじることができ、過去のバージョンにはいなかったチームも作ることが出来るという理由で発売から12年経っている、College Hoops 2K8を選んだ。第1ラウンドは3月後半には終わっており、Kansas, Gonzaga, Dayton,Baylorなどのチームが第1シードとして残っている。最終4戦は4/18にYouTubeで配信される予定だ。

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NBAやFIFAの伝統的なプレーヤー・ゲームアスリート達がオンラインで競い合う事例もある。

3/18、スペイン上部リーグ、ラ・リーガのレアル・ベティスとセビージャのプレーヤー/ゲーマーであるBorja IglesiasとSergio Reguilónは、コロナによりキャンセルされた試合をFIFA 20のゲーム上で行い、Twitch上で6万人以上の視聴者が観戦していた。
4/3からは、NBAと2K Sports(ゲーム会社)は、ゲームプレーヤーのためだけのNBA 2Kトーナメントを開催し、Kevin Durant, Trae Young, Harrison Barnes
などのゲームプレーヤー16名を招待している。
このトーナメントは、スポーツ専門チャンネルのESPNで10日間に渡って放映され、Devin Bookerのthe Phoenix Sunsがタイトルを獲りました。

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オンラインでの競争ゲームの成長は続いていく。

3月にTwitchは、ピーク時にのDAU 430万人、平均同時視聴者数 190万人、4,600万のストリーム配信という過去最高の使用率を達成している。
Steamのゲーム配信プラットフォームも3/15、オンラインで2,000万回、ゲーム内で620万回とそれぞれ過去最高の同時ユーザー数を達成している。
Discordのゲーム向け動画/音声/テキストプラットフォームは、過去1ヶ月の2倍以上のDL数を達成している。
League of Legendsは、Twitch上で最も良く見られているeスポーツの一つだが、プロ同士のチャンピオンシップシリーズを見れるようにしたところ、ピーク時に43万人の視聴者数と、3月には123万時間分の配信が行われた。もっとカジュアルな場合だと、プロの練習の様子を見たり、有名人やアスリートが主催するファンとの交流会が行われたり、技を磨くために上級者のプレイの様子を見たりする時もあるようだ。
(生で行われる)ライブスポーツが止まってしまうと、eスポーツやゲーミングがそれに代わり、ライブゲームや試合のストリーミング配信を通じてユーザーにエンゲージする場所を提供するようになっている。大陸を超えて、バーチャル上で友人や他のゲーマーと繋がり、ストリーミング配信を通じて学習とスキル向上の機会を提供している形だ。

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コロナ禍の非常事態でも、ゲーム・遊びはなくならないと言える。

人間というのは、どんな状況になっても、オフラインでもオンラインでもどうにかしてゲームで競争する方法を見つけるということである。遊び心があればあるほど良いという感覚かもしれない。上に挙げた例を見るに、スポーツは(どんな形であれ)今後も支持され続けていくだろう。
このソーシャルディスタンスとStayHomeの期間に起こり始めているスポーツ領域メディアのイノベーションは、伝統的なスポーツの楽しみ方を変え、ファン・アスリートどちらにとってもより魅力的で面白く、インタラクティブな体験へと押し上げるポテンシャルを秘めているのでは無いだろうか。
ただし、こういったファン達は、安全で楽しいと感じられる限りは、やはり常に対面での体験・競争を願っているものだろう。

5)世界はそんな簡単に終わらない(‘The World Just Doesn’t End That Often’ = We Will Get Through This...But Life Will Be Different...)

このタイトルにある引用部分は、T. Rowe PriceチェアマンであるBrian Rogersが、2008年の金融危機の際の言葉だ。
私たちは、絶望の反対には希望があると信じている楽観主義者である。ただ、その「反対」はすぐには訪れない。大半の専門家は、数年ではなく数ヶ月でこの状況が終わると言っているが…。もちろんそうであれば良い事だ。
手を清潔にし、ソーシャルディスタンスを守り、自己をきちんと隔離し検疫する事、これらは最低限必要な事だが、医療従事者のための個人用の防護装備、ベンチレーター(送風機・換気窓)、抗ウイルス剤、ワクチン、アクセス可能な検査・追跡情報、迅速な診断、大規模な遠隔医療など、この次、そしてまたその次のウイルスに備えて計画と準備をしておかなくてはいけない。
また「反対」側に行くためには、政府、企業、起業家による(論理的な実行と効率性を伴った)大規模な介入も必要になる。市民が安心して働くことができて、十分なセーフティネットがあり、自分や家族、愛する人をきちんと大切にできるように、全員で協力して経済を再開させなくてはいけない。
元国務長官兼国家安全保障顧問のヘンリーキッシンジャーが書いたように「パンデミックは世界の秩序を永遠に変えてしまう。(中略)世界中の指導者は2008年の金融危機から重要な教訓を学んでいる。(中略)現在の経済危機はより複雑になっている。コロナウイルスによってもたらされた経済縮小は、その規模とスピードにおいて、歴史上に類を見ないほどのものである。(中略)アメリカは、新しい時代に備えて計画を早急に進める一方で、感染症から市民を守らなければいけない」のである。

今、私たちの生活が脅かされている。いくつかのデータによれば、直に大不況が来るのでは無いかということも示されているが、そうなれば私たちの自身(とバランスシート)は打ち砕かれ、失業率が大幅に上がるだろう。
過去20~30年間の成長(一部は、グローバル単位での急速な接続性の上昇により牽引されたが)によってもたらされていた最も良い時期もあった。
その成長を鈍化させてしまうようなコロナによる今回の調整で、広範囲で進行していく混乱を引き起こすだろう。
初期的には特にウイルス拡大の懸念と関連していたが、国境など境界線を閉じるなど早い段階で繋がりが絶たれていっているこの兆候は、過去数十年間においては成長ドライバーとなっていた国家主義の加速、サプライチェーンの再構築、グローバリゼーションの逆転へと変化していくかもしれない。これらは全て現実に起きてしまうかもしれない。
ここから数ヶ月で何が待ち受けているのか恐怖はある一方で、長期的には、夜明け前のキャンプにいるような状態が続いているという感じである。
私たちは、アメリカのその精神と楽観主義、そして急速に革新を起こし世界をより良い場所にすることのできる能力を過小評価してはいけない。
もし仮にコロナウイルスが団結して、以下のようなことを強制的に行うような社会全体の敵となってしまう場合はどうなるだろうか。

1)政府/医療/教育の近代化・改善、低コスト化と効率化
2)市民の利益のための企業・政府間の連携改善
3)自分のスキル・ライフスタイルに最適な仕事の発見
4)より堅実な消費活動
5)家周辺の滞在などの基本的なライフスタイルに戻る
6)家族の結びつき・コミュニティ・信仰の強化

今私たちが経験していることは快適でもなく、フェアでも無い。また、状況が改善するよりも早く悪化していくように思えるが、状況が良くなる兆しは見つけられただろうか?出来るだけ早く、この状況から抜け出すための最善な方法を見つけていくしかない。
最後に、才能ある起業家の言葉で締め括りたい。「私たちは、経済成長した好景気のタイミングに生まれ、逆に社会的にはより断片化されている状態に生きていた。そんな状況でもコロナウイルスは分け隔てなくやってきて、それに対応するには、官民、近所の住民、従業員、医療従事者、見知らぬ人も全員で団結する必要がある。私たち人類が団結してみたら、どうなるのだろうか。」

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非常に長かったですが笑、最後までお付き合いいただきありがとうございました。この中でも掘り下げられそうなテーマがいくつかあるので、また別の個noteで書いていこうと思います!来年のInternet Trendsが楽しみですね。

こういうコンテンツを書いて欲しい、和訳が全然違うのでちょっと一言いたい、レポートの内容について議論したいという方がもしいらっしゃいましたら、Twitter/Facebookどちらでも構いませんのでご連絡頂ければと思います。

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