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2023年9月(下期)の七ならべ

※ここでは、七音のフレーズのみで構成された詩形式を「七ならべ」と呼んでいます。
ThreadsやXなどにあげたものを再掲します。



それぞれの朝
それぞれの場所
見えない絆
手繰り寄せても
指に絡まる
感覚だけが
取り残される
つむぎ続けた
ことばの川に
飛び込むことも
できないままに
淡い記憶を
透かしてみても
秋の速度が
増してゆくだけ
(2023年9月18日)


カラスの群れが

一斉に発つ

暮れゆく空は

加速してゆく

半袖だけじゃ

もう寒いから

あなたのことば

待っていたんだ

ぼくらはいつも

すれ違うから

本当のこと

言えないままに

季節を着替え

続けるだろう

届かない星

さがす視線に

カラスが鳴いて

夜ははじまる
(2023年9月20日)



夕陽の背中
追いかけていた
あの季節には
もう戻れない
それを今さら
思い出しても
書き出した詩は
もう止まらない
(2023年9月23日)


秋の速度に

ついて行けずに

なつかしい歌

繰り返し聴く

想い出なんて

ただの記憶と

言ったところで

その磁力から

逃れられずに

空の青さが

胸を突き刺す
(2023年9月25日)


季節を替えて
窓を替えても
色づくことを
止められなくて
果ての見えない
まっすぐな道
きみのなまえを
吹き消せなくて
微熱の椅子は
置き去りのまま
黄色い地図に
書いた説話が
終わらないこと
つたえたいから
ゆび一本で
雲をかぞえる
(2023年9月26日)


より親密に
なったふたりに
隠しごとなど
ないはずだけど
きみのこころが
つかみきれずに
重いとびらに
睨まれている
一緒にいれば
しあわせだって
風がコスモス
揺らしていても
とびらはとびら
勢いだけで
触れちゃいけない
(2023年9月26日)


日が沈むころ

絵文字の痕が

忘れられずに

赤茶けた道

追いかけている


ほころびた夜

あなたはぼくの

声を求めた

ぼくはそれには

応えられずに

優しい場所は

朽ちてしまった


いまでもぼくは

行くあてのない

声を抱えて

夜の長さに

縛られたまま

(2023年9月27日)


月の願いを
本に挟めて
黄色い夜を
独りで歩く
春、夏、秋と
痛い記憶を
引き摺ったまま
生きてきたけど
ぼくの願いも
本に挟めて
寡黙な窓に
甘えたくなる
(2023年9月27日)

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