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【詩】夏が来る

夏はマボロシ
存在自体が疑わしい
ひとの気持ちを盛り上げて
いい感じで突き落とす
実体のない高揚感
雰囲気だけで酔わせてくる
そのまま気を許したら
がんじがらめにされるだけ
それだったら
どうでもいい平日の夜
牛丼なんかを喰ってから
暮れない海をひとりで眺めて
不幸ごっこするのもいい
脳裏に残る景色は
たぶんこのほうが綺麗だ
体温の記憶なんて
夜を長くするだけだから
そんなこと考えながら
ぼくは
昭和最後の夏を過ごして
少しだけ大人になったっけ
また夏が来る
これもきっとマボロシで
でも今は
実体のある
何かを探している
少しだけ夏を
信じてもいいかと
思い始めている

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