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2024年2月の七ならべ

※ここでは、七音のフレーズのみで構成された詩形式を「七ならべ」と呼んでいます。
Xなどにあげたものをまとめました。


立春なんて
絵空事だよ
暦の中の
つくり話さ
北のはずれで
僻んでいても
こことはちがう
そらのしたでは
春の蛇口を
すこし緩めて
色とりどりの
朝を奏でる
それを想像
してみるだけで
歩幅がすこし
ほころんでいる
(2024年2月4日)



雪降り積もる
星に生まれて
言いたいことも
言えないままに
胸のいちばん
深いところが
中途半端に
あたたかくなる
探してるのは
体温でなく
たったひとつの
コトノハだから
寂しい月と
静かな夜を
かばんに詰めて
バスに乗り込む
(2024年2月6日)



白い記憶は
夜間飛行に
持ち込むことが
できないという
地上の雪も
置き去りにして
振り切るように
重力を蹴る
ぼくはと言えば
いつになっても
きみの気持ちに
気づかないまま
ひかりの粒は
夜を纏った
意識の奥に
吸い込まれゆく
(2024年2月9日)



つよさはいつも
外に向かうし
よわさはいつも
内へと向かう
降り止むことの
ない雪のなか
道なき道を
歩いてるけど
つよい気持ちも
よわい気持ちも
混ぜこぜにして
寝ぼけてるだけ
目覚めたければ
こころの奥に
つよいわさびを
置いて泣いちゃえ
(2024年2月11日)



春の魔法に
誑かされて
あけぼのの芽を
踏んでしまった
生きることとか
死ぬこととかも
すべては水の
変化のように
ほんとうなんて
どこにもなくて
変哲のない
日常だって
すべて奇跡と
気づいたときは
ただ呆然と
するしかなくて
手放すことも
得ることもなく
(2024年2月14日)



時間が消えた
ぼくの宇宙に
大切なもの
集めてみても
すぐに迷子に
なってしまうし
きびしい冬を
思い浮かべて
ここでたしかに
戦っていた
そんな記憶も
粉々にして
もうこの町を
出ていくんだね
春は猶予を
くれないんだね
(2024年2月16日)



深夜一時に
交わすあいさつ
こんばんはより
おはようがいい
何かはじまる
予感がするし
そのおはようは
夜行性でも
ひかりを帯びた
おはようだから
恋の予感に
似て
むず痒い
黒い筋肉
震わせながら
白い呼吸が
隠せなくなる
(2024年2月17日)



二月のそらが
やわらかいから
まだあたたかい
ひつじのゆめを
綴ろうとして
てのひらをみた

途切れかかった
ぼくのことばは
フォントのしろい
こくはくだから
春になったら
雪にまぎれて
消えてゆくだけ
それでいいから
うん、それでいい
(2024年2月18日)



ペットボトルの

ジャスミンティーに

忘れたくない

夕焼けをみる

ぼくのことなど
覚えてなんか
ないだろうけど
変わる季節に
きみと交わした
ことばの影は
今もこうして
夜を広げて
動くことない
文字列をただ
見つめてるんだ
(2024年2月22日)



陸地しかない
海図をひろげ
季節の先を
思い浮かべる
カザフの丘で
虹追いかける
少女の影も
描き残せずに
せめてこれまで
歩んだ道を
ゆうやけの背に
刻みたいんだ
春の本音を
聞いてしまえば
二度と魔法は
使えないから
(2024年2月23日)



気持ちが冷める
きっかけなんて
実にたわいも
ないことばかり
夜明けの海に
雨が降ったり
好きなワインが
買えなかったり
この世の中は
不可抗力の
かたまりだから
まだ色のない
こころもようを
握っていても
仕方ないけど
時の流れに
乗るくらいなら
ぼくはこのまま
空を見てるよ
(2024年2月25日)



まだ二月だし
雪が降るのは
仕方ないけど
春のこころを
上書きされて
歩き出すのが
億劫になる
だけど季節は
何をしたって
過ぎてゆくから
喜怒哀楽を
部屋に脱ぎ捨て
ぼくの知らない
ぼくになるまで
朝を覆った
雪踏みしめる
どんな気持ちで
雪は舞うのか
春は宿命
逃れられない
(2024年2月28日)

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