見出し画像

【毎日日記】11月14日 なぜ働いていると本が読めなくなるのか 三宅香帆

毎週木曜22時〜配信しているラジオ番組
【水道橋博士のオールナイトイッポン】
番組内で博士と本を紹介し合うコーナーがあり、今週は僕の番。
今回は書評家•三宅香帆さん著「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を選書。

三宅香帆さんの存在は、仕事もお金も無く膨大な時間の使い道を将来への漠然とした不安に費やしていた19歳の夏に知った。
不安から逃げるように図書館へ通い、焦燥感や罪悪感から目を背けるように読書に没頭していたころ、三宅香帆さん著「副作用あります!? 人生おたすけ処方本」をたまたま本棚で目にし、タイトルに惹かれて縋りつくように読んだ。

「絶望時の読書こそ真の読書である」という吉田松陰の言葉があるが、当時の僕にとって三宅香帆さんの本はまさにその言葉通り、「人生を狂わす名著」だった。

そんな三宅香帆さんの新書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」が数ヶ月前からあらゆる書店でうず高く積まれているのを見て、インディーズ時代から応援していた「推し」がメジャーデビュー曲でオリコンチャートを独占している時のような喜びを感じていた。(僕が知った時には既に名実ともに知れ渡っていたが)

この本のタイトルを見て、「自分のことだ」と思った社会人がほとんどだろう。
その証拠に、発売1週間で累計発行部数10万部という驚異的な売れ行きを記録している。(現在は電子と合わせて20万部以上)

労働と読書は両立しないという暗黙の前提が敷かれている現代社会に対して一石を投じ、日本の近代以降の労働史と読書史を並べて俯瞰し、歴史上、日本人はどうやって働きながら本を読んできたのか、どうすれば労働と読書が両立する社会を作ることができるのか追求している。

すぐに結論を知りたがる我々現代人を試すかのように、労働史と読書史をしっかりと理解した上で本質に切り込むので、そこまで読み進めることによって自然とこの一冊で読書習慣が取り戻されていく。

僕が一番共感した言葉は、「読書とは自分から遠く離れた文脈に触れること」という一文。
新たな文脈に触れ、脈を図ることによって、自分の鼓動が速くなるような発見•趣味•嗜好との出会いが生まれるのが読書の醍醐味だとつくづく思わされた。

だが、本書の中で三宅香帆さんは、新しい文脈という名のノイズを受け入れられない時は休もう、とも記載している。
体と心が回復するまでは、本なんか読まなくても、趣味なんか離れてもいいと。
こうやって言い切ってくださることが、何もできない辛い時にどれだけ救われることか。

様々な情報が日々アップデートされ、憶測や噂が飛び交う現代の中でも、本は変わらずに待っていてくれる。
いつ読んだっていい、いつからまた読書を再開したっていいのだ。

最後に、三宅香帆さんが考える「働きながら本が読める社会」の理想の形が綴られているので、ここまで僕のnoteを読んでくださった方は、ぜひご一読ください。

話を冒頭の【水道橋博士のオールナイトイッポン】に戻すと、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」を博士に紹介するにあたって、参考にした三宅香帆さんの本がもう一冊ある。
その本が「好きを言語化する技術」

こちらも、帯文と同じような悩みを抱えている人は多いだろう。
例に漏れず、僕も本を紹介する時や好きなものの話をする時に、うまく伝えられなかったり、誰かが言っていた情報や世論を自分の言葉のように使ってしまうことが多々ある。

その状態を打破するために、本書の中で三宅香帆さんは「自分の言葉をつくること」を強く主張されている。
そして、自分の言葉をつくるために必要な技術やプロセスを余すところなく書いてくださっている。
この本を読んだ上で、自分の言葉を使うことを意識しながら三宅香帆さんの著書を博士に熱弁しているので、ぜひご覧ください。

※31:50 秒ごろから話しています。
観てくださるとよろこびます、最初から最後まで観てくださるともっとよろこびます、高評価とチャンネル登録をしてくださるともう飛び跳ねます。


【著者略歴】
三宅香帆(みやけかほ)
文芸評論家。
1994年生まれ。
高知県出身。
京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了(専門は萬葉集)。
著作に『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』、『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術―』、『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』、『人生を狂わす名著50』など多数。

いいなと思ったら応援しよう!