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7巻を待ちわびて…

矢代は百目鬼に甘えてたんだよね。
いつも膝枕させてたね。勃たないモノを何度も口にしてたのもそう。甘えの行為に他ならない。
からかっては、笑い転げて、嘘のない言葉も仕草も可愛いかった。単純に楽しかった。
百目鬼が性的反応を返して来ないのも、もちろん安心材料なのだけれど、それだけじゃない。
ただ、甘えたかった……。
甘えれることが心地良かった。

百目鬼を刷り込みされた雛鳥だと言ったけれど、それなら矢代は、親にはじき出され人恋しくて震えている子猫なんじゃないの?
そんなもんが出会ったら、寄り添う以外ないじゃないの……。そう、子猫と雛鳥なら簡単だったのに。

百目鬼は朴訥。コミュ障すれすれに寡黙。何かを演じる事など出来ない。傷は傷として目に見える。隠す術も持たない。ある意味単純で裏がない。

矢代は軽妙洒脱。周りにも自分にも、要するに人生丸ごと演じている。隠された自己矛盾。直視出来ない傷口。

自然、人間は欠落したものを欲するものだと思う。息を殺して穴は埋められるのを待っている。
そう、いつも無自覚のままに。
無自覚だからこそガードが出来ない。そして、免疫自体がない。
凹は凸を求めてやまない。己の穴の大きさ深さに見合ったモノで埋めて欲しい。

「妹はよかったな…おまえがいて…」
人を羨んだことは無い。と、言ってた矢代が羨んでいる。助けに来てくれる人がいて“いいな“と…

あの日、平田と対峙して“このまま死んでもいいかな“と思った時、満身創痍でも百目鬼は助けに来たね。あの時、矢代はなんて言ったの?
「おまえ、俺を……」
……救うのか?……
……置いてゆくのか?……
さぁ、なんて言ったのだろうかね??

矢代が狙撃された時、百目鬼は失う恐怖で震えてた。今度は矢代が百目鬼の頬に触れて怯えている。
同じ構図。同じ喪失の恐怖。二人は鏡のよう。

百目鬼を撃った平田を石で滅多打ちにする矢代。
あの瞳孔の開いた目。激昂する感情。
初めて見た。あんなに激情をストレートに剥き出す彼を……。
だから、一番胸の奥に深く刺さった。
とても、苦しかった。
あの何にも執着しない矢代が、足の裏にプライドのある様な矢代が……
これだけは奪わせないと、奪おうとする者を許せないと。
私には、嫌だと泣き叫ぶ矢代に見えた。
子供の頃からなんでも受け入れて、欲しいものは諦めて、それに慣れきっていたはずなのに。
これだけは…これだけは…と、縋りついたものは百目鬼だったから。

「綺麗なものは汚したい。大事なものは傷つけたい。幸せなものは壊したい。」

そうだね。矛盾するよね。
でも、本当にそうかな……。
貴方は、「守りたい。」と思っている。

この人を埋めてくれるものは何だろう?
“綺麗なもの“ “大事なもの“ “幸せなもの“を、そのままに、真正面からただ「愛しい」と言えるには何が必要だろう。
素の自分をさらけ出して受け入れるには、どれほどの痛みを味わう事になるのだろう。
このふたりがこの愛を抱きしめ合うには、あとどれほどの道のりを行かねばならないのだろう。

「生きることは、途方もない」
本当にね。本当に……途方に暮れる。
何もかも、ままならない。

甘えさせてやりたい。思いっきり。
「もう大丈夫」だと「俺がいるから」と。
埋めてやりたい。癒されないまま放置された深い穴を。
溺れるように抱いてやりたい。すべてを解放して。

死の境界を超えるようにして、愛される快楽に登ればいい。そして、死人のように眠り堕ちればいい。
目が覚めたら。そこには、愛しい人がいて、新しい朝が来て。また生きている自分がいる。
それを“絶望“とは言わずに……“再生“と言って。

また何かを失っても、この男が傍に居れば…
それじゃダメかなぁ……ねぇ、矢代よ!

次巻を待つ間に何度も読み返し、深読みし妄想し。
もはや私だけの、別の物語になっておるやも…
ヨネダ先生、名作を汚してすみませんm(__)m

#BL #囀る鳥ははばたかない #ヨネダコウ

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