コント「脱獄計画」

A「おい、脱獄の話考えてくれたか?」

B「ああ、でもやっぱり協力はできない。リスクが高すぎるよ」

A「じゃあお前はこの先20年、塀の中で暮らし続けるのか?」

B「……」

A「ちゃんと道具だって揃えたんだ、絶対成功するって」

B「道具?」

A「ああ、これは壁を越えるためのロープ、これはボヤ騒ぎを起こして気を逸らすためのライターと薬品、これは看守の制服で他にも…」

B「おいおい、いつの間にそんな物用意してたんだ?」

A「俺は1年前からこの計画を進めてたんだよ」

B「でもどうやって調達したんだ?勝手に出歩くことすらできないのに」

A「……実はな、ここには古い地下通路があるんだ」

B「地下通路?」

A「ああ、この刑務所の色々な場所に続いていて、好きに移動できるんだ」

B「そんなものがあったのか…」

A「俺はそれを使って少しずつ道具を集めてきた」

B「なるほど」

A「例えば運動場の近くの倉庫、あそこは看守の休憩場所にもなってる」

B「ほう」

A「そこに忍び込んで盗んできたのが、この制服だ」

B「そうやって1つずつ調達していったんだな」

A「このライターも同じ倉庫で…」

B「うん」

A「薬品は医務室で…」

B「うんうん」

A「ロープはホームセンターで…」

B「…ん?」

A「顔を隠すためのマスクは薬局で…」

B「出れてない?」

A「ナイフはキャンプ用品店で…」

B「その地下通路、塀の外まで続いてない?」

A「軍手はコンビニにあった…」

B「ああもう出れてるわ、コンビニ行ったら終わりよ」

A「チーズバーガーはマクドナルドで…」

B「は?」

A「美味しんぼはブックオフで…」

B「もう脱獄関係ないじゃん」

A「ボーリングはラウンドワンで…」

B「遊んでるだけの時間」

A「これだけ用意できてれば、きっと計画も上手くいくよ」

B「いやもう計画とかどうでもいいから、最後のは何も持ち帰ってないし」

A「小さいピンのキーホルダーみたいなやつ貰ったぞ」

B「しょうもない景品持ち帰るな」

A「とにかく計画は完璧だ、あとはお前の協力があれば必ずここから出られる」

B「出れてるんだよ」

A「まずは倉庫でボヤ騒ぎを起こし、その隙に壁をロープでよじ登るんだ」

B「だからそんなリスク冒さなくても……っていうか、そもそもその計画に俺の協力要らなくね?」

A「お前には挫けそうになった時に励まして欲しい」

B「なんで脱獄中にメンタルケアしなきゃいけないんだよ」

A「協力してくれ、頼む!」

B「いやだから、そんなことしなくても地下通路で外に出られてたから」

A「……」

B「めちゃくちゃ静かに脱獄できてたから」

A「……だよな?」

B「え?」

A「何かもう普通に出られてるよな?」

B「あっ、本人も薄々気付いてた」

A「いや、1年前から計画して動いてたからさ、認めるのが悔しくて」

B「まあ確かに不完全燃焼感はあるな」

A「道に迷って適当に出たらTSUTAYAの駐車場だった時は膝から崩れ落ちたよ」

B「希望と絶望が同時に来たんだな」

A「…まあでも、そっちの方が確実に出れるもんな」

B「うん、計画のほう思ってたより雑だったし」

A「…仕方ない、不本意だけど地下から出るか」

B「そうしよう」

A「それじゃあ今夜決行だ、持って行きたい私物を準備しておけ」

B「私物なんて無いよ」

A「俺はこの少しずつ集めた美味しんぼ全巻を持って行く」

B「めちゃくちゃブックオフ行ってる…」


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