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Vol.24 縁の下の力持ち

この前、障がいを持っている方の自立支援に取り組んでいる団体の話を書きました。


こちらの「かたつむり」という団体では、障がい当事者とそうではない方とを含んだ劇を定期的に披露しています。先日、その練習にまた参加させていただきました。


これは僕の都合なんですが、春休み期間中の練習に定期的には顔を出せなくて、これじゃ役をやってもらうにも中途半端になってしまう。それなら音響の裏仕事やってもらおうか!ということで、普段触ることのない音響機器をいじらせてもらえることになりました。


(まだまだ部外者と言ってもいい立場の僕のことも、どうしたら劇に関われるかと真剣に考えてもらいました。寄ってくる人を決して除け者にはしない団体としての姿勢に一人ひっそりと心打たれます...)


その際、音響に詳しいおじさんの方がいらっしゃって、機器の操作を教えてもらいながら、たくさんお話聞けました!

以下、その方をHさんとして書いていきますー。






音響のお仕事って?

僕は、舞台裏のお仕事をやったことがありません。演劇やライブ、ショーなど、舞台を使って披露するパフォーマンスは小学校の学習発表会以来です。そこでも普通に役をもらって舞台上で演技するのみだったので、裏で何をどう操作したら音が出たり光を出せたりするのかよく分かっていませんでした。

そんなズブの素人なんですが、根気よく教えていただいたおかげで(😭)、音響の仕事に関しては概観と内容をそれなりには把握することができました。


かたつむりでの音響のお仕事は大きく分けて3つ。

一つ目は、映像の出力。かたつむりが普段の活動の様子を独自にまとめてつくったVTRがあり、それを劇中の所々でスクリーンに映す仕事です。
二つ目は、効果音やBGM、劇中歌の挿入。こちらも劇の中で要所要所で出てきます。構成もけっこう凝っているので、音も劇の演出としてふんだんに取り入れられています。
三つ目は、役者のマイクのオンオフ。かたつむりにはメンバーが30人ほどいて、劇中ではみんなが何かしらの役を持っています。舞台上で話す時は口元にマイクを取り付けるのですが、さすがに30人分はないので少ないマイクを使い回します(もちろん都度消毒をして)。演技が終わって舞台裏でマイクがオンのまま話す人もいるので、この仕事も何気に重要。

今回、僕が任せていただくことになったのが、そのマイクの切り替え担当です。大きなキーボードのような機材を前にして、これから〇〇さんが喋るから△番のマイクをオンに、といった具合でやっていきます。

Hさんの話では、これがある程度使いこなせるようになると、結構いろんな所で重宝されるんだそうで。音や声を扱う現場ではたいていこれがあって、これを使える人が求められるから、覚えとくといいことあるよ、と。やってみないわけにはいかないですね。

本番は3月上旬。初心者ながらしっかり合わせに行きます。





かたつむりへの共感と献身

そんな感じでHさんに教わっていまして、もうとっても詳しいので音響関係の仕事でもやっておられるのかと思ったら、そうではありませんでした。

Hさんが勤めておられる会社は、電子部品を扱う会社です。パソコンや電子辞書みたいな精密なものを扱うことが多いそうで、すごいんです。この前、劇でも使用するパソコンの調子が悪くうまく機能していなかったんですが、なんとHさんがその場でパソコンのキーボードの部分を開けて中をちょちょいとやったらすぐに直ってしまいました。パソコンの中身初めて見た。

よく触る商品の中には今回使っているような音響の機材もあったそうで、その中身までいじっているなら使い方も詳しいだろうということで、かたつむりの音響担当に大抜擢されたと言います。これが5年前のお話。それ以来、かたつむりの劇の裏にはいつもHさんの姿があります。


なんだか不思議な人なんです。
音響は舞台の表には出ないので、練習でも割と置いてけぼりにされがち。いつも一人でやっていたところ、久々に話し相手ができたからか、僕にいろいろ愚痴をこぼしてくれました。

「〇〇はいつも仕事丸投げしてくるから面倒なんだよ。これどれくらいかかるか知ってんのかな」
「そこ担当するのは◇◇じゃねえだろ、周りがサポートしてやんないとなあ」

愚痴といえば愚痴なんですけど、聞いてる僕からするとあんまり悪い気はしないんですね。Hさんは、面倒だなんて言いつつ結局しっかりこなすんです。相手に文句を言うのはそれを終わらせた後。なんだかかっこいい。また、Hさんは愚痴をこぼす時、目じりをくしゃっとさせて笑います。その顔もまたいい。



かたつむりに入った経緯も少しうかがいました。
きっかけは、もともとかたつむりにいた友人の紹介でした。もともと障がいとは縁遠いと自分では感じていたそうですが、来てみたらそうは思えなくなった。ここのメンバーの想いの大きさや芯の強さに惹かれたと言います。

ただ、当時のかたつむりは、そうした目に見えにくいものは確かにもっていたものの、それをちゃんと形にする術をもっていなかったのも事実でした。当時から取り組んでいた劇は、音も光も粗雑で素人の域を出ない。ここにこそ自分が力になれることがあると気づいたとおっしゃっていました。

音響の機材の価格、想像つきますか?
一通りちゃんとそろえようと思うと、ウン百万かかるそうなんです…
もちろん、主に団体で使うものなので団体としてお金は降りるんですが、いかんせん高い。そこで、Hさんは一部の機材を自費で購入し、自分のものを貸すという形で劇の機材をかたつむりで使わせています。そこまでできますか、普通?



Hさんは、すでにかたつむりには欠かせない存在です。僕からするとかっこよくて優しいおじさんです。

音響習いながら、Hさんのお話ももっとお話聞けたらと思います!






読んでいただきありがとうございました!

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