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5月最初の日の夜に、ベートーヴェンとチャイコフスキーを聴いてきました。

5月1日の夜、私は、上野にある東京文化会館にいました。広上淳一さんが指揮される「《響きの森》voi.52~ベートーヴェン&チャイコフスキー」を聴くためです。

クラシック音楽のコンサートで、私が聴きに行くとき、オーケストラの演奏ならば、まず最愛のマエストロ・山下一史さんの指揮が必須条件です。
ただ、時折、山下さんの指揮でなくても、「この方の指揮だったら、聴いてみてもいいなぁ」と思うものが出てきます。広上さんは、私にそう思わせる数少ないおひとりです。

また、今回のオーケストラは、東京都交響楽団。私は実は東京のオーケストラの音は、どうも高慢で冷たく感じて好きではないのですが、この都響はわりに聴きやすいなぁ、と思っています(このオーケストラを初めて聴いた時、指揮が山下さんだったからかもしれませんが)。

加えて、今回のソリストでピアニストの小林海都(こばやしかいと)さんの演奏を、偶然ラジオで聴いて好感を持ったんですね。ピアノが基本好きではない私の耳を引っ張ったのみならず、クラシックが好きではない相方の耳にも良い響きに聴こえたのです。それで、この方のチャイコフスキーなら聴きたいと思ったのでした。

3月以来、しばらくコンサートを聴いてなかったので、飢えていたということもあるんでしょうけれどね。

広上さんの指揮のコンサートを聴くのは、これで3回目です。山下さんより若干年上ですが、3歳しか違わないですから、同世代みたいなものかもしれません。
ただ、広上さんも音楽への真摯な愛情をお持ちですが、指揮台での表情はとても柔らかで包容力の大きさを感じさせる方です。ユーモアセンスもかなりのもので、指揮ぶりを拝見していると、私は自然に笑みがこぼれてくることが多いです。
山下さんの場合は、指揮台に立つと形相自体が変わって、ちょっと近寄りがたい雰囲気を醸し出すのですが、広上さんは、笑顔を湛えて、ふんわりとオーケストラを包み込んでしまう雰囲気をお持ちです。もし12年前、仙台フィルを指揮されていたのが、広上さんだったら、私が追いかけるマエストロは変わっていたかもしれませんね。

さて、肝心の演奏です。
ざっくり申し上げるなら、チャイコフスキーは素晴らしかった! 
ベートーヴェンは、いささか物足らなかったなぁ、というところです。

ベートーヴェンは2曲。オープニングの「エグモント」序曲と、メインの交響曲第5番「運命」。
チャイコフスキーは、ピアノ協奏曲第1番。

ベートーヴェンも、「エグモント」は良かったんです。これは、山下&千葉響でも聴いたことがありますが、この時期に聴くと(もちろん、良い演奏で、ですが)、さわやかなグリーンの音色が感じられて、気持ちの良い曲です。明るいエネルギーも伝わってきます。広上さんの柔らかな指揮で聴くと、舞台に若々しい新緑が生まれてきているようにも感じられました。
プログラムを組まれたのがどなたかは存じませんが(広上さんは、都響のスタッフではないのです。こういう場合、有名なマエストロでも用意されたプログラムで指揮されることもあるようです)、オープニングにはふさわしいな、と、好感を持ちました。

ただ、肝心の「運命」がねぇ・・・・・。広上さんの指揮は、とても解像度が高くて明晰で、わかりやすかったのですが、オーケストラがなんだかお疲れのような感じでしてね。チャイコフスキーにすべてのエネルギーを注いだわけでもあるまいに、という感じでして。
ことに、千葉響の腹の底に響くような心地よい低音を聴きなれている私には、都響のそれは物足りませんでした。実際、広上さんもコントラバスのほうに向かって、首を横に振っていらっしゃることが何度もありましたから、ね。3月に千葉で同じ曲を聴きましたけれど、迫力が違いました。コントラバスは、あの時の千葉響の倍はあったんですけれどねぇ・・・・・。

それでも、私の満足度が高いのは、前半のメインのチャイコフスキーが素晴らしかったからです。
ピアノが好きではないので、好んで聴きには行かないのですが、それでもオーケストラとの共演の協奏曲には、大好きな作品がいくつかあります。このチャイコフスキーもその一つです。4年ぶりくらいにコンサートで聴きましたが、情熱的な部分と冷静な要素が見事に表現されていて、改めてこの作品の魅力に気づかされた思いがしました。

ソリストの小林さんは、本当によくオーケストラの音を聴いて、対応してらっしゃいましたし、広上さんは、小林さんを生かしながら、オーケストラと巧みに共演させておられるように私は聴きました。楽しそうな指揮ぶりが印象的でした。

この曲の場合、どうしても第1楽章&第3楽章が強烈なんですけれど、小林さんの演奏する第2楽章は、透明感が違いました。鏡のような水面に、日の光が反射して輝いている。或いは、今回いただいてきた富士山の清涼さですね。決して、他者を排除する冷たさではなく、広上さんの包容力ある指揮に呼応するかのような暖かさです。そうしたものを感じて、私は心身が穏やかに緩んで、何故か懐かしさも感じて、涙ぐんだものでした。

小林さんは、27歳だそうで、これからが楽しみです。これから人気も高くなる才能だと私は確信しました。やっぱりねぇ。本物って、好きな人はもちろんでしょうが、そうではない人を惹きつける力持っていると思うんですよ。いろいろあるとは思いますが、どうか無事に大きくなって欲しいです。
昨日、私が或るコンサートで魅かれて、再び聴けることを願っていた若いチェリストの訃報を聞いただけに、余計そう願わずにはいられません。彼の成長を見届けることは、私にはできないでしょうけれどね(^^;


昨日書こうと思っていたのに、もう夜眠くて仕方なかったので、今朝に回しました。今日も気持ちの良い日和で、ありがたいですね。
ただ、今週末からは、いささかお天気荒れるとか。西の地方は、すでに雨のようですね。忙しかった方々には休養になるでしょうか。今日の晴天、大切に使うことにいたします💕

さて、では、私はこれから、インコたちのお世話の人になります。ここまで読んでくださったあなたに、心から感謝いたしますm(__)m💕💛
今日が素敵な一日でありますように(^^♪

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