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弥生が始まった夜に、音楽に心身を浄化してもらった

3月1日の夜、東京・赤坂にある霊南坂教会に、音楽を聴きに行ってきました。
私は、クリスチャンではないですから、教会は縁遠い場所です。ただ、私が大ファンである音楽家の中には、ヨーロッパの社会で、キリスト教の教会が中心であった時代の音楽がご専門の方がいらっしゃいます。そうした方々が、割にコンサート会場を教会になさるんです。教会で演奏されるための作品のコンサートですから、当然と申せば、当然なんですけれどね。

今回は、サクバット(現在のトロンボーンの前身の、古楽器。バロック・トロンボーンとも呼ばれます)の演奏家集団に、パイプオルガンが伴奏でつく、という形のコンサートでした。私が大ファンのサクバット奏者・宮下宣子さんが主宰されている「Project S」という団体と、オルガン奏者の今井奈緒子さんの饗宴です。

サクバット奏者は総勢13名。演奏されたのはアンコール含めて16曲。この13名が、全員で演奏することもあれば、選抜されて(?)数名で演奏するケースもありました。

ルネサンス期から前期バロック時代までという、かなり古い時代の作品ばかりです。作曲家の名前を聴いても、私はほとんど知りませんでした。

けれども、つくづくこの時感じたのは、名演というのは、聴き手を選ばないということです。聴き手に何の知識がなくても、演奏から伝わってくるものがあるんです。私が感じたものが正しいかどうかはわかりません。けれど、音楽の受容に正しいとか間違っているとか、あるのかなぁなどと、最近開き直ってきている私は、考えたりしています。もちろん、♬一つわからない素人の私ですから、深さとかは変わってくるかもしれませんがね。謙虚に全身で演奏を受け止める。そこから感じたものは、その人にとっての真実じゃないかなと思うんですよ。

割に暖かい夜でした。会場周辺に植え込まれている沈丁花が、咲き誇っていて、私を楽しませてくれたものでした。演奏で聴いた曲から、私は沈丁花の清々しい香りにも似た高貴さを感じたのです。

サクバットは、今のトロンボーンよりも小ぶりです。なので、音の迫力を考えれば、金管楽器がお好きな方には物足りないかもしれません。けれど、13本のサクバットの響きは、迫力には欠けても、その分とても柔らかで温かいのです。それでいて、キラキラした輝きも持っています。

指揮者がいませんので、演奏家たちはアイコンタクトや息遣いでタイミングを計って、絶妙なハーモニーを響かせてゆくのです。チームワークが良くなければできないことです。ここに、今井さんのオルガンの伴奏があって、じわっとサクバットの演奏を支えて居るんですね。

今年に入ってからの能登の震災であったり、その後も続く腹が立ったり胸がふさがるような諸々の事柄に加えて、この冬の寒暖差の大きさに参っている部分があった私は、演奏が進んでゆくにつれて、次第に心身が暖かく、しかも軽くなってゆく感覚にとらわれてゆきました。

宮下さんたちが取り上げる作品には、時代背景もあって、”音楽は神への捧げもの”という観念が流れています。だからでしょうか。演奏される曲が、聴き手の感情を激しく揺さぶる、ということがないんです。ベートーヴェンとかブラームスの作品が持つような情念は、ないんですよね。その分、聴き手の感情を慰藉して、浄化するという作用が大きい気がします。

私はこのグループの旗揚げ公演から追いかけているのですが(今回で3回目です)、聴くたびに自分の中にあるわだかまりとか鬱屈などが消えているんですね。聴いた後、とてもすっきりした暖かい気持ちになっているんです。

今回もそうでした。キラキラ輝く音色は、時に散華のように私に降り注いできて、私の沈みがちな気持ちを明るくしてくれたのでした。聴き手に寄り添う暖かさは、私を包み込んでくれました。

宮下さんご自身が、とても誠実で気さくな方。加えて、とてもやさしいお人柄なんです。そういう方が見込んで集めたメンバーが演奏するんですから、そりゃあ、名演になりますわね。

先週の金曜の夜に聴いたので、少し時間が経っているのですが、演奏からいただいた素敵なエネルギーは、今も生きているようです。


寒暖差の大きな日々が続いておりますね。皆様、くれぐれもご自愛くださいませm(__)m💕💛

ここまで読んでくださった方に、心から感謝いたしますm(__)m💕💛

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