賛美歌と唱歌の意外な関係

 ゴスペルクラスは現在オンラインでレッスンしていて、オンラインになってからGospel Studyという座学の時間を設けています。毎月テーマを決めて、わたしが少し説明し参加メンバーでディスカッションしています。オンラインだと同時に歌唱するとずれずれガリガリになるので、苦肉の策ではありましたが、なかなか楽しく好評です。参加メンバーが新しいことを覚えたり、調べるのが好きということもあり、毎回こちらもテーマと内容を考えるのが楽しいです。

 1月のGospel Studyは歌の課題曲”Jesus Loves Me"についてでした。この曲は日本において日本語で初めて訳されて歌われた讃美歌2曲のうちの1曲だということで、参加者が日本に関係する事柄として興味がとてもわいたようだったので、2月のテーマは「日本の唱歌と讃美歌」にしました。

 "Jesus Loves Me"『主われを愛す』がシャボン玉と関連があるという説があります。実際、賛美歌としては知らなかったゴスペルメンバーは、"Jesus Loves Me"を習った時に『シャボン玉』と似ていると思ったそうです。

 替え歌中の替え歌!『お玉じゃくしはカエルの子』『権兵衛さんの赤ちゃん』は、実は『リパブリック賛歌』(”The Battle Hymn of the Republic”)で、アメリカの讃美歌集にも載っています。歌詞の冒頭にジョン・ブラウンさんという人名が出てきますが、彼は黒人奴隷解放に力を注いだアボリショリストだそうです。後半折り返しの歌詞は”Glory Glory Hallelujah!”で賛美歌ではあるのでしょうは、南北戦争時の北軍の歌です。元歌、元曲については似た曲がある等の情報はありますが、確実なものは今のところなさそうです。そもそも、欧米においては賛美の曲はいわゆる替え歌をするのは常でした。讃美歌集にはミーターという項目があります。そのことはまたいずれ書きたいと思います。メソジストの創始者でもあるウエスレー兄弟も教会から出て行って伝道する時に、人々の愛唱している曲に賛美の歌詞を乗せたりしていたということをどこかで読みました。その辺りまた調べてみようと思います。その頃は著作権もなかったのでしょうかね。そのパターンで有名な曲では、アイルランド民謡『ロンドンデリーの歌』があります。讃美歌は同じメロディーで歌詞が異なります。タイトルは"He Looked Beyond My Fault"。日本語タイトルは『この世のなみかぜさわぎ』です。『リパブリック賛歌』の話に戻ると、日本ではヨドバシカメラのCMソングとしても耳にしているし、坂田寛夫さんの歌詞で『ともだち讃歌』もあります。他にもいくつか替え歌があるようなので、Gospel Studyでは引き続き調べていくことになりました。

 他に日本人が馴染んでいる曲で、賛美歌としても有名な曲があります。賛美歌題名は『いつくしみ深き』(讃美歌21では『いつくしみ深い』)("What a Friend We Have in Jesus")です。日本の小学校の音楽の教科書に文部省唱歌として同じ曲で異なる歌詞のものが載っています。『星の世界』杉谷代水作詞(『星の界《よ》』川路柳虹作詞)という曲名です。唱歌の歌詞は、キリスト教賛美の部分は全く取り払われています。先日或るキリスト教会からの依頼で礼拝用のピアノ演奏の動画を作成しました。2曲のうち1曲を『いつくしみ深い』にしました。賛美歌として世界中の教会で歌われるのですが、キリスト教に縁がない日本人は多いので、ピアノ演奏で歌詞がない場合は『星の世界』として聞いてしまわれるのではないかという不安が一瞬過ぎりました。まあ、この曲に関して言えば、キリスト教式結婚式で聖歌隊が歌う曲の代表2曲のうちの1曲だと思うので、心配無用かもしれません。日本のキリスト教式結婚式で歌われる代表曲もう1曲は"Amazing Grace"です。2曲とも実は結婚式で歌うのにふさわしい曲ではないのです。新郎新婦さんの愛唱歌とか思い出の曲ならまだしも、さらに披露宴ならともかくお式の方ではなぜその曲を選ぶのかわたしには理解できません。"Amazing Grace"は確かに本田美奈子さんが歌った歌詞など讃美歌の歌詞の訳ではないものもあありますが、結婚式での聖歌隊は多分賛美歌の歌詞で歌うと思います。少し調べたらわかることではありますが、イメージ優先の方が多いのでしょうね。

 ここでは本当に触り的なことしか書いていませんが、日本の唱歌と賛美歌の関係についてご興味がある方は、安田寛先生の著書『唱歌と十字架 明治音楽事始め」音楽之友社をお読みになるといいと思います。現在、再販されていないので、Amazonとかでは中古で安くないです。Gospel Studyメンバー情報によると、市の図書館では探せなかったけど県の図書館にはあったということでした。

 

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