辛酸なめ男

    以前付き合っていた北関東の男。 そこまで遠くもないけれど、だからと言ってちょくちょく会える距離でもないので一カ月に一回程度会っていた。 仕事は宅配便のドライバー。 CDを集めるのが趣味で、デートでも都内のショップ巡りばかり付き合わされていた。 彼女は十年以上居なかったようで、田舎の朴訥とした、少々訛りもある男だった。 ただそういう男ほど頑固な部分もあったけれどあまり気にはならなかった。
 ある時、何かの拍子で私が辛酸なめ子さんの話をした。なめ子さんのこときっと知らないだろうなと思い訊いてみたらやはり知らなかった。 サブカルやオカルト系が好きな人なら知っているかもしれないけど、その男が辛酸なめ子さんを知らないのは想定の範囲内である。
 そして私は
「この名前面白いよね、辛酸を舐める、からとってるなんてね。」
そうしたらその男は
「ん?シンサンをなめる?何それ。聞いたいたこともない言葉だし、もしそんな言葉知らなくても俺は今まで特に影響もなく生きてきたからこれからもその言葉を知る必要もない」
と、その単語を知らないのを指摘されたことに機嫌悪くなっていたようだった。
 小さいことだけれど、その時点でもうその男に呆れてしまっていた。 確かに「辛酸を舐める」という言葉はそこまで使わないかもしれないけれど四十過ぎた男がそれを知らないのは他の人達の場面でもあったら・・と思った親切心だったのに。
  それ以外でもその男は色々な言葉や常識を知らず、それを優しくも教えてあげてもいつも又開き直ってしまうのでもうこれ以上は付き合ってられないと思い、その後暫くして別れを告げた。 勿論、直接の原因はこれではないけれど。 


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