不良品

 社会と脳の規格が違う人間は、手術台に乗せられる。甘い匂いの麻酔の針。脳みそに入れられるメス。気がついた頃には、配線が変わってしまっていて、もう自分がどんな人間かもわからない。
もらったIDは、人間#9002/code:c-7783A
僕の役目は、国が新しい時代を作るための実験台の身体を提供すること。
 
 社会のマシンが音を立てて回り出せば、アタマのなかのハエが泣き喚く羽根の音で頭痛。自分が醜すぎて、また気が狂いそうだ。CMでやってる薬を処方してもらって飲みなさい。すこしはアタマは良くなるよ。

 個性ならお金を払えばたくさん売ってるよ。どの人生がいいかならカタログに載ってるよ。どの女の子を選ぶかは電話機のなかにあるよ。価値も魅力もハンガーにかかってる。もっと大きいクローゼットのある広い部屋に引っ越すんだ、結婚する前に彼女と同棲期間も欲しいし、商品も溢れてきたから...

 なんてことだ。人生は短い、こんなゲームに付き合ってる時間はない。なのに逃れられない。脳みそも心も腐ってるのは僕のほう。街には、たくさんの綺麗な物が溢れてる。なのでとても憂鬱な気分になる。

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