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チビ焼き
昔、実家の駅前には海とたこ焼き屋台だけがあった。
パンチパーマのおじさんと毎日電車通学の小さいガキンチョだった私はものすごくいいコンビで、いつも2人で照れて笑い合っていた。
おじさんは他のお客さんには時々ヒヤッとするほど怖かったり、焼きたてのたこ焼きは美味しいが結構怪しい失敗作のこともあったり(笑)外の暑さや寒さや、猛烈な空腹。そのスリルや開放感が、熱々のタコ焼きと一緒にハフハフと体に入ってくるのは生きる幸せだった。買い食い、禁止だったんだけど!
あの屋台はたしか私が高一の頃に無くなったし、銀だこが現れてたこ焼き欲は満たされていたし思い出すことは無かった。
…なのに!この村に引っ越して来て少し経った頃、「たこ焼きが食べたい」と体がよじれるくらい思った。
屋台のガスコンロの油の匂い、熱くて湿ってくる舟の形の木の皮の皿、長く飛び出す竹串、真っ赤な紅生姜。脳みそから手が出るほどあれが恋しい。
私の体のどこにこんな、たこ焼き屋台への激しい郷愁が眠っていたの!
そんなわけで、ガスコンロ用のたこ焼き器とスティック、そしてあのペラっとした舟形の木皮の皿と竹串を私の一昨年の誕生日プレゼントにしてもらって、それからターバンもして焼きに焼いた。
私は私の中に、あのたこ焼き屋台を建てたのだろう。いつの間にかこの街にも落ち着けるようになった。
…台所でクリーンに作っているけど、私のたこ焼きにはスリルと渇望の匂いが、やっぱり凄くあると思う(笑)
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邪道な家盛り〜
子供時代、あの屋台のおじさん街にいてくれた事がどれだけ大事だったか、どんな深い影響を受けていたか、こんな風に気づくなんて思わなかった。
タコ焼きのパックを受け取る時にはいつも満面の笑みで「ありがとうございますっ!!!」て、夢中で言ってきたと思う。だから後悔はないんだ。
ただもう伝えられない今になって、ありがたさがしみじみもりもり巨大になっちゃってる事に、胸いっぱいなだけ。
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最近私はチビコと一緒にたこ焼きを焼いている。一緒と言ってもお手伝いだと熱いし飽きるから、チビコは一箇所だけ自分の場所をもらって独自に焼いて好きに食べるのだ。
たこ焼きのサイズもチビコ的には若干大きかったらしいので、それも自分で調整していいよ、と言って。
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「チビ焼き」は、チビコの夢が詰まっている。
「いままでのどんなタコ焼きもチビちゃん焼きには敵わないよ!あー!美味しい美味しい!食べなよっ、最高だよ!」
と、すさまじい自慢ぶりで一個もらったけど、ほぼタコでむっちゃくちゃ美味い、たしかに!(笑)
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