喫茶店での密かな愉しみについて。
あるとき、喫茶店に一緒に行った母が幼かった私に教えてくれた。
「あなたのお父さんはね、コーヒーにミルクを入れて混ぜずに眺めるのが好きなのよ」、と。
コーヒーにミルクを入れてしばらく眺めていると、一度は沈んだミルクがぷつぷつと小さな気泡のように水面に上がってくる。
物を作る仕事を長くやっており芸術的な感性が強い父は、それを飽きずにずっと眺めていたのだという。
(こうやって書くとまるで父が他界してしまった後かのように聞こえるけれど、彼は今も40代前半でピンピンしているので心