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ソーシャルベンチャーの最新トレンド/事例、ベンチャー投資傾向を読み解く

ベンチャー企業が創り出す新市場や産業の未来を考えるヒントをお伝えする「FUNDINNO未来産業レポート」の第二弾です。

第一弾のアグリテックをテーマとしたレポートはこちら!

今回は「ソーシャルベンチャー」をテーマにお伝えしていきます。

ソーシャルベンチャーとは?

ソーシャルベンチャーの定義は、様々ですが、日経新聞ではこのように紹介されています。

事業を通じて貧困や環境汚染など社会課題の解決を目指すスタートアップ。寄付などの外部資金に頼らず、収益を得ることで継続的に課題解決に取り組む。
2019年11月30日日経電子版より引用

最近では、ユニコーン企業と対比し、ゼブラ企業というキーワードが出てきています。

ゼブラ企業の特徴
①社会的インパクトの創出
②株主のみならず多様なステークホルダーへの貢献
③他のプレイヤーとの共存・コラボレーション
④革新性(イノベーティブさ)
Tokyo Zebras Uniteより引用

企業として成長を目指すのは当然ですが、IPO/キャピタルゲインのみをゴールとせず、社会課題解決を目指す活動が明確に打ち出されている企業を大きく括ると「ソーシャルベンチャー企業」となります。

ソーシャルベンチャー企業の経営指標は、売上や利益を中心とした企業の成長性だけではなく、SDGs(持続可能な開発目標)やソーシャルインパクト測定の指標をもち、解決に取り組む社会課題を明確にしていることが特徴です。

背景にあるESGの流れ

なぜソーシャルベンチャーの存在が注目を集めているのでしょうか。

背景はESGの考えがあります。

ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉です。企業の長期的な成長のためには、この3つの観点から長期的な事業機会や事業リスクを把握する必要があるという考え方が、世界に広まってきています。

投資指標としてESG(企業の長期的な成長を測るための指標)が重要視される流れは、今後はさらに強化されることが予測できます。

社会課題解決に対する投資と事業機会の増加

ここまでの説明をまとめると、社会課題解決は政府やNPOが取り組むだけのものではなく、企業が積極的に取り組むべき領域となっているということです。

年金積立金管理運用独立行政法人GPIFより公開されている資料をご紹介します。社会的な課題解決が、事業機会と投資機会を生む流れになっていることが理解できます。

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ポイントまとめ
・ESGにより社会課題解決に取り組む企業への投資機会が増加
・SDGsにより社会課題解決に取り組む企業への事業機会が増加

ここからソーシャルベンチャーのモデル事例をお伝えしていきます。

ソーシャルベンチャーの代表事例:グラミン銀行

ソーシャルベンチャーの代表事例が、グラミン銀行です。

グラミン銀行は、1983年にバングラデシュの経済学者であるムハマド・ユヌス氏が設立し、マイクロクレジットと呼ばれる貧困層を対象にした比較的低金利の無担保融資を主に農村部で行っています。2006年にはノーベル平和賞を受賞しています。

グラミン銀行の仕組み
対象
貧困層・低所得者層(主に女性)

仕組み
①貧困層の女性を対象

貧困層の主に女性を融資対象とする(
女性はコミュニティ貢献に
向き合いやすいため)
②5人組の仕組み
担保はいらないが
借り手同士が5人組グループを作り
連帯して責任を持つ
③コミュニティ作り
定期的に借り手が集まる集会を開催。
16の決意を唱和し、よりよい豊かさを感じる生き方、資本主義の考え方、ビジネスの基礎知識を資金返済の中で学んでいく仕組みをコミュニティ内に作る

解決課題

農村にはびこる貧困課題を解決

ソーシャルインパクト
農村の貧困者に小規模ローンを提供する「マイクロファイナンス」モデルを世界中に広げるきっかけに(40カ国以上で類似のプロジェクトが動く)

図解するとこのようなイメージです。

グラミン銀行の仕組み.001

グラミン銀行の仕組み.002

グラミン銀行は持続的に貧困課題を解決するビジネスモデルを作っている、ソーシャルベンチャーのモデル事例と言えます。


FUNDINNOで資金調達をしているベンチャー企業の中にも、社会課題解決に取り組む企業が増えてきています。

ソーシャルベンチャー企業事例「パラリンアート」

世界中の企業に新しい価値を〈アート×障がい者〉により創出を目指す「パラリンアート」です。
FUNDINNOでは、23,700,000円を調達しています。

解決に取り組む社会課題(ミッション・ビジョン)
・ 誰もが隔てなく経済的自立ができる世界の実現に向けて。「企業」と「障がい者」の架け橋になり、アート事業の輪を拡げる
・すべての企業がSDGsに取り組める社会を目指して。障がい者アート「パラリンアート」を通し、新たな価値観を創出

具体的な解決方法
・ライセンス利用、商品化等、企業の利益に貢献しながらビジネス化を実現
・賛同企業のニーズに沿った柔軟なカスタマイズが可能な、年間契約オフィシャルパートナー制度を構築
・代理店によりパートナー企業を獲得。著名人がスペシャルサポーターになることで広告価値も向上

資金調達後のビジネス展開
・ 現状の関東拠点のみから日本全国へ拠点を拡大し、事業範囲を拡大
・世界大会を毎年実施。さらに海外の障がい者支援等、パラリンアートの輪を海外へ

事業内容の詳細はYouTubeをご覧ください。

ソーシャルベンチャー企業事例②株式会社カミーノ

植物成分96%以上の「次世代プラスチック代替素材『PAPLUS ®』」で、“世界の脱プラ”に挑む「株式会社カミーノ」です。

解決に取り組む社会課題(ミッション・ビジョン)
・ 日本は石油由来のプラスチック製品への依存が根強く、環境保全に向けた国際レベルの取り組みができていない

具体的な解決方法
・石油をほぼ使わない、植物由来で生分解性を持ったプラスチック代替素材「PAPLUS®」による次世代素材の展開

資金調達後のビジネス展開
・普段の生活で使われる身近なプラスチック製品を「PAPLUS®」に代替していく
・欧州を皮切りに海外企業との協業により、日本から世界へと拡めていく

事業内容の詳細はYouTubeをご覧ください。

ソーシャルベンチャーのトレンドまとめ

ここまでソーシャルベンチャー企業を理解するためのポイントや事例をお伝えしてきました。

ポイントを要約します。

・ソーシャルベンチャーは、解決に取り組む「社会課題」を明確にしている
・グラミン銀行のように、持続的に社会課題を解決する仕組みを、事業の中に内包している
・ESGやSDGsの動きが、ソーシャルベンチャーへの投資活性化や事業機会の拡張につながっている

投資するベンチャー企業が向き合っている社会課題に注目してみると、新たな成長可能性に関する発見があるかもしれません。

FUNDINNOではソーシャルベンチャー特集も行っているため、ぜひこちらのページもチェックしてみてください!

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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