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〔米国〕雇用統計 事前考察&ドル見通し


❏ 背景と予想

アメリカ景気の鈍化を感じとれるかが今夜のポイントになる

6/12FOMCを控え、FRBの金融政策の行方が関心を集めています。確かにインフレ率は強く、FOMCではターミナルレートの維持がおこなわれやすいでしょう。しかし一方、直近の指標データは悪いものが増えてきました。

6月序盤の米指標は、ISM製造業景気指数(ISM製造)、建設支出、 雇用動態調査(JOLTS)、ADP雇用者数が弱く、ISM非製造業景況指数(ISMサービス)のみが強いデータでした。5月も弱いデータが多く、いよいよアメリカの景気はダウントレンドに迫った可能性を示唆しています。

そうした中、雇用統計データが注目され、結果によってマーケット思惑が変化していくでしょう。


❏ 雇用統計(アメリカ)とは?

▶主要指標

・非農業部門雇用者数(Nonfarm Payrolls)
非農業部門雇用者数は、農業部門以外の全ての業種で働く雇用者数の変化を示します。この指標は経済の健康状態を測るために広く利用され、特に月次の変動が注目されます。増加すれば経済が成長していると判断され、減少すれば経済が停滞または後退している可能性があると見なされます。

・失業率(Unemployment Rate)
失業率は、労働力人口に対する失業者の割合を示します。労働力人口とは、働く意思と能力がある全ての人々を指し、失業者は仕事を探しているが就職できていない人々です。低い失業率は経済が強いことを示し、高い失業率は経済が弱いことを示します。

・平均賃金(Average Hourly Earnings)
平均賃金は、従業員が受け取る平均時給を示します。この指標は、労働者の所得の動向や消費者支出の可能性を測るために重要です。賃金が上昇すれば、消費者がより多くの金額を使う可能性が高まり、経済全体にプラスの影響を与えると期待されます。


▶集計方法

非農業部門雇用者数と平均賃金:これらのデータは、米国労働統計局(BLS)の月次調査である「Current Employment Statistics (CES)」調査によって収集されます。この調査は、全米の約144,000の企業および政府機関を対象に行われ、約697,000の事業所が含まれます。

失業率:失業率のデータは、「Current Population Survey (CPS)」と呼ばれる家庭調査に基づいています。これは、約60,000世帯を対象に毎月行われる調査で、労働力の状態(雇用、失業、労働力外)を詳細に分析します。

▶集計時期および発表日

雇用統計データの集計は、毎月12日が含まれる週(日曜始まり)におこなわれます。そして発表日は集計週の3週間後の金曜日です。ゆえに巷によくある第一金曜日という説明は不正確です(暦に応じて2週目になるケースがある)。

アメリカに新規失業保険申請件数という週次の経済指標がありますが、これらの理由から、12日を含む週のデータが注目される場合があります。


❏ ファンダメンタル分析

失業率(右軸)、非農業部門雇用者数(左軸)

上記グラフは、失業率と非農業部門雇用者数(+4週移動平均)を2021年から集計したものです。雇用状況が一発で判かる優れたグラフです。

まず失業率は、2022-2023年に対して着実に上昇しています。徐々に雇用環境は悪化しているのは間違いありません。しかし非農業部門雇用者数は強いままです。4週平均は上昇していますし、再上昇しそうな傾き方です。これが本当にそうなのか?一過性なのか?これも重要な確認項目です。いずれにせよ異様なほど強いです。

FRBは、この異様な雇用情勢への答えとして「移民の増加」が移民の急増が挙げられます。年数百万人がメキシコ国境より不法就労しており、雇用増加の一因とされます。(慢性的な住宅不足も同様の理由)
彼らは低賃金の労働をおこないますが、それは雇用統計の平均賃金に反映されにくいという分析も存在するそうです。集計企業は、たった14万社しかなく特に知名度の高い企業が含まれ、ここに不正移民の雇用データが入り込む余地は少ないでしょう。


▶ 金利予測(FOMC予測)

プロの投資家達は9月利下げを見込んでいる

FRBはデュアルマンデートとは「FRBが掲げる2つの使命」という意味で、「最大雇用(Maximum Employment)」と「物価安定(Price Stability)」を指しています。雇用統計は、このうち前者における最重要データと言えるでしょう。そのため、FOMCに対する影響力は大きいものがあります。

今回、アメリカのファンダメンタルに影響を与えるほどのデータがでてくれば、FRBの金利予測を動かしてくるでしょう。金利予測が動けばドル相場も動きます。為替は金利によって動くものですから!
発表後に金利予測データがどう変化するかも注目に値します。


❏ 発表後、ドル相場見通し(ドル/円)

ドル/円(月足)

▶ 雇用統計が予想より強い場合

つまり「ターミナルレートが続くとの思惑」が強まるデータだった場合、非常に強ければドルは買われるでしょうが、予想通り~やや強いデータ程度ならば、ドル売りになる可能性が高いです。
なぜなら、金曜の週末である事に加え、FOMC、CPIが控え、四半期末を控えたレパトリエーションも進むでしょう、13日には米国株メジャーSQもあるため売り要因満載なのです。特に大口投資家の手仕舞い、利益確定は起きやすいでしょう。

▶ 雇用統計が予想より弱い場合

つまり「早期利下げの思惑」が強まるケースだった場合、それを肯定するデータに沿ってドル売りが進むでしょう。すでにドル買いに及び腰になりつつあることは、直近のチャートから感じ取っている投資家も多いのではないでしょうか?ということは、もっと優れた投資家は皆が感じています。
6/12FOMCが、よりハト派になる思惑が強まるようならドルは一斉に売られるでしょう。ドルホルダーが、ドル下落リスクを回避する行動に出れば、現状の相場は一気に崩れます。

場合によっては雇用統計ショックと後日呼ばれるシナリオも想定されます。それにだけは巻き込まれないようにしましょう。



記事は以上です
ご参考になさってください。
Fundalia financial philosophy(FFP)

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