033. #恋人を喪った安田短歌 について その3 「安田龍彦は喪われた恋人の夢を見るか?」
2017年の年明け早々、安田短歌の有志で本を作ろうという話が突発的に出て、あれよあれよという間に制作がスタートする。この辺りは安田短歌本の編集長である神山君の手腕によるところが大きい。以前からちょっとしたノリとして「安田短歌はそのうち本にまとめたいねー」などと口走ったりはしていたのだが、まさか本当に作ることになるとは。
収録内容については、早々に僕の方で草案を作った。
まずは参加者による自作短歌ページ。各自が自由にレイアウトしてOKだったので、単なる短歌の羅列になっていないのがよかった。僕は以前に作っていた連作の抄録を提出。横書きのレイアウトが僕ぐらいだったので他の人とはちょっと違うテイストを出せたように思う。
短歌作品以外に、安田短歌とは何かを「短歌として」「二次創作として」それぞれ論じる文章が欲しいなと思ったので、原井さん・ぐるぐるさんに依頼。
また、実作する際に何を考えているかを話し合うパートも必要だと思い、岡本さん・高野アオさんと共に座談会を行なった。新宿の喫茶店でひたすら謎の短歌について語らうのはとても面白かったし、僕が思い付きで作ったハッシュタグに過ぎなかったものが、ジャンルとして確立されつつあるような感触に少し高揚した。岡本さんや高野さんの安田短歌へのアプローチが僕と全然違っていたことも興味深かった。
森本マリさんによる小説や、安田短歌界隈と「シン・ゴジラ」劇中の出来事が混在して記載された年表などのコンテンツも加わった。
タイトルは三つの候補の中からTwitterの投票機能を使って「安田龍彦は喪われた恋人の夢を見るか?」に決定した。全体の投票数が70票という数字にも驚かされた。
3月7日に初稿が到着。それから校正を何度か行なって、2017年5月7日に開催された第24回文学フリマ東京にて、安田短歌本は頒布された。
当日、僕が会場に到着したのは11時30分ごろ。まだスタートして30分ほどだというのに、すでに数冊売れていると聞いてびっくりした。僕含め数人で店番をしていたんだけど、安田短歌本が予想以上にバンバン売れていく。中にはまっすぐコチラのブースに向かってやってきて「安田短歌本を買いに来ました!」と言ってくれる人もいる。ちなみに大学でお世話になっていた批評家の先生にも安田短歌のコンセプトをお伝えして、半ば無理やりに売りつけたりもした(笑)。
用意していた数十冊の安田短歌本は、14時28分、無事に完売した。正直、こんなに早く完売するとは思わなかったし、Twitter上でしか観測できなかった「安田短歌が好き」という人の実在を確認できたことがとても嬉しかった。
さて、本も出したしこれで安田短歌も大団円かな、と思いきや、そうは問屋がおろさない。このあと更にもう一冊、安田短歌本2が頒布されたり、WEB限定の安田短歌展が開催されたりするのだが、それはもう少し先の話だ。
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