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(1)群像が一年分、当たった。

2022年12月10日。熊本での社員旅行から帰ってきて、自宅に着いたのが夜9時ごろ。移動で随分と疲れてしまったから、荷物の片付けは明日に回して、今日は風呂だけ入って早く寝よう。そんなことを考えながらアパートまで帰ってきたところ、僕の部屋の郵便受けに刺さっている分厚い封筒に気付いた。
「もしかして……、あれか?」
郵便受けの差し込み口からゆっくりと封筒を引き出す。その表面に印刷された「群像」のロゴマークが目に入った。
「あれじゃん……!」
小走りで自分の部屋に駆け込み、カバンをドサッと置く。「うわぁマジか、マジか……」と呟きながら、部屋の中をウロウロ歩き回る。旅行疲れも相まって変なテンションだ。一旦気持ちを落ち着かせるために、先に風呂を済ませる。シャワーを浴びながら、落語「宿屋の富」で、大金が当たって取り乱す登場人物のことを思い出した。アイツもこんな気持ちだったのかも……。
風呂から上がって少し冷静になったところで、いよいよ封筒を開けると、中から文芸誌「群像」の2023年1月号が現れた! 本当に、当たってるじゃん!!!

2022年に実施された「講談社文庫×「群像」文庫で文学キャンペーン」は、対象の文庫に付いている応募券を4枚集めると、抽選で10名に群像一年分、すなわち、2023年1月号~12月号の計12冊がプレゼントされる企画だった。僕はそれに当選したのだ。

さて、僕はこのキャンペーンに応募する際、自身のTwitterで「もしも群像一年分が当たったら、全収録作を読み切る企画をやりたい」という旨のツイートをしていた。これは単なる思い付きでしかなかったし、その企画をやるにはもちろん懸賞に当たらなければならない。抽選で10名という狭き門をくぐり抜ける確率は相当に低いはずで、だから「一年分読破」という宣言はほとんど冗談だった。

しかし実際、群像一年分は当選し、僕の目の前に1月号が届けられた。これは「一年分読破に挑戦せよ」という、何かしら高次の存在から与えられた試練なのかもしれない。もしくは文芸誌をもらうために文庫本を4冊買って抽選に応募する物好きなんて、当選を争うほど多くなかったのかも……。

とにもかくにもこうなったら有言実行だ。当たっちゃったんだから、後には引けない。これから届く群像の収録作を全部、読んでやろう。僕は1月号の分厚さに若干ひるみながらも決意した。
こうして僕の「群像一年分の一年」が始まったのだった。

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