11月23日〜28日 第13巻 『一本眉』
11月23日
週の真ん中の祝日。1日中雨だったので、ほとんど家の中で過ごした。大河、『エルピス』の録画を消化。
昼にもりたカップルの入籍ツイートがあり、フォロワー界隈が盛り上がる。「東京のつらい場所」の最終回取材時が、今の夫さんのことが気になるけど付き合えるかどうか、みたいなタイミングだったので、そこから結婚までたどり着いたのはとても喜ばしい。
「おまけのグー」のネットプリント、すでに3名ほどがプリントアウトしてくれているらしく、嬉しい。
夜は、久々に「存在しない友だち名鑑」など、過去のnoteを読みなおした。またこういうカオスな創作物もやりたいな~と思っているけど、なかなか熱量が上がってこない。うーむ。
11月24日
仕事はそれほど忙しくなく、まったり働く。
前日、ねむみさんと自炊についてやり取りしていて、自分の中で炒め物の気運が高まってきていたので、晩御飯は豚キムチを作った。ごま油を敷いたフライパンに、豚バラとキムチをドカンと投入して炒めただけの代物だが、ご飯がすぐになくなるくらいに美味い。お腹いっぱいになって、すぐ眠い。文フリで買ったtoi toi toi『救心』を読んで、就寝。
11月25日
続々と案件が投げ込まれてきて、なんとか打ち返していたら一日終わってしまった感じ。
みーらさんから「傑作」の通販問い合わせがあったので、合間にDMで対応。ネプリも読んでいただいた上での注文なので嬉しい。
仕事帰りに代わりに読む人のメルマガを読む。わかしょさんの「大相撲観戦記」は相撲ファンでありながら、相撲の中に織り込まれている様々な差別や問題には賛同できない事のもやつきを真摯に書いていてよかった。どんなジャンルでも多かれ少なかれ、両手放しで賛同できない問題や構造は含まれていて、ジャンルを愛する時に「どういうところが好きなのか」まで突き詰めておかないと、平気で誰かの足を踏むことになってしまうよな~、ということは僕もここ数年、僕の好きなジャンルにおいて考えていることだった。そうやって考えるのはしんどいけど、そういう点にまで目が届くほど、そのジャンルに対しての解像度が上がった、ということでもある。伏見瞬「蓮實重彦論」での1966年の「アルファヴィル」評は、蓮實スタイル完成前はこんな感じだったのか!という驚きがあり、今回も電車内であっという間にメルマガを読み切ってしまう。
11月26日
山手線に乗っている間は激しい雨が降っていたけど、浅草に着いたら止んでいた。今日は大学の落語研究会の同期メンバー2人と買い物へ。落語家になった同期が二つ目に昇進したお祝いとして、羽織紐を買いに行くのだ。今日の2人とはかなり久々に会う。
地下鉄の浅草駅の出口付近で合流し、地上に上がると、浅草の町にはたくさんの人が行きかっていて、雷門の前でばしゃばしゃ写真を撮っている人が多い。コロナ禍が始まってすぐのころに比べると、もうすっかり観光客が戻ってきたんだなという印象。
江戸組紐のお店は、着付け関連の紐の他にも、観光客向けの雑貨が揃っていて、男物の羽織の紐は、店の奥の壁にぶら下げられて並んでいた。落語家同期の要望としては「紐の先端の房(ふさふさした部分)が無い方が好み」とのこと。並んでいる紐の半数以上が房ありな上、カラーリングやデザインも房ありの方がバリエーション豊富だった。3人で「房ある紐の方がオシャレじゃない?」「本当に房が無い方がいいって言ってた?」「もう房ありでもいいんじゃない?」などと話していたが、せっかくの本人の要望なので、房無しの方から良さげな紐を選ぶ。
買い物を終えて三人でランチへ。ヨシカミに行こうと思ったが混んでいたので、レストラン大宮へ。現在フォアグラの提供をしていません、という張り紙があり、よく読むと鳥インフルエンザが原因とのこと。そうか、ニワトリ以外でもかかるよね、鳥だもの。ハンバーグステーキデミグラスソースはしっかり肉の味がして確かにこりゃステーキだ、と思う。近況もあれこれ話して、全然知らなかった先輩の噂とかも飛び出して面白かった。同期女性陣の間で、僕のインスタグラムに女性の写真があるので、僕の彼女ではないか、という話になっていたらしいが、あれは「東京のつらい場所」のもりたです。
一人は用事があるので先に帰って、もう一人が大学芋を食べたいというので、おいもやさん興信へ。そういや焼きいもフェスは結局行きそびれてしまった。僕は愛小町、同期はみやびという芋の品種にして、店の前で立って食べる。愛小町は外がパリッとしていて身もしっかりしていた。同期にみやびを一つ貰ったらこちらはしっとり柔らかく、口の中で溶けるような感じ。こうやって食べると、品種で全然食感が違うんだな、とよくわかる。
同じ電車で上野駅まで乗ったところで解散。同期の忘年会が12月にあり、その時にお祝いを渡すので、それまで羽織紐は僕が預かることになった。天気が崩れたら嫌だったので、真っすぐ帰宅。
『ふたりのアフタースクール』を読了。太田靖久さん、友田とんさんがぞれぞれZINEを作り販売する中で考えたことや感じたこと、売るための工夫などを語り合った一冊。基本的に「まずやってみよう、やってるうちにわかることもあるし」というスタンスなのは、「損しないやり方が分かんないと何も始められない」という、予防線でがんじがらめな人の(何か始める前から勝手に担いでいる)肩の荷を軽くしてくれそう。僕自身も発信することで思わぬことを色々経験したので、お二人が語られている感触で「わかるなぁ」と頷くこともあった。
最適日常のアカウントが「おまけのグー」のネプリをTwitterで紹介してくれていた。情報を拾える限りのネプリをどんどん出力してひと言紹介文を付けてツイートする作業、すごく偉いことをしているな……と思う。「磊落なユーモラスのあとに薫るほのかな切なさ」という紹介は、自分が目指している方向性にぴったりで嬉しかった。
11月27日
昼前に家を出で、電車の中で『若い山賊(仮称)誕生準備号』を読む。舞城王太郎「短歌探偵タツヤキノシタ」は、タイトルに違わず短歌を解釈することによって事件(?)を解決する短編で、舞台は西暁町だし、話の分かる兄弟は出てくるし、文体も舞城フルスロットルだしで色々すごい。これを連載で全100話やる目論見らしいが正気の沙汰ではないような……。森口ぽるぽのエッセイ、歌集が出るまでの経緯が書かれていて、「あのアルファベットの友達の連作ってそういうことだったの!?」と衝撃。『インロック』読み直さねば。
荻窪に着いた。Titleで赤染晶子『じゃむパンの日』を買い、fuzkue西荻窪を覗くもちょっと混んでるっぽかったので、三鷹へ移動。りんてん舎、水中書店を見て、吉祥寺へ歩いて防破堤、百年を回るいつものコース。百年では兼桝綾『フェアな関係』を買った。そのままさらに歩いて、もう一回fuzkue西荻窪を覗いたらいい感じに空いていたので入る。シャンディガフとチーズケーキといういつも注文するやつ。文フリで買った本と今日買った本をちょっとずつ読もうと思ったが、『言葉だけの地図』が面白かったので、一気に読み切ってしまう。行ったことがある書店は実際の風景を思い浮かべながら読み、行ったことが無い書店は読みながら道のりの風景を想像する。「ここの描写で字数稼いでそうだな~」と読みながらちょっとニヤニヤ。山本さんが拾ってくる、町行く人たちの発言が百発百中ですべて絶妙な良さですごい。
『VACANCES バカンス』『面とペルソナ20’s』の記事を拾い読み。アルコール入れてちょっとふらっとしたので、チャイシロップ入りのホットアップルサイダーを飲んでほっとひと息。サイダーという名前だけど、炭酸は入ってない。
『VACANCES バカンス』はZINEなのだけど、カルチャー誌の座組として結構強いメンバーの寄稿が集まっていて、それでもゆるく肩の力が抜けている感じもあった。編集メンバーのエッセイで、久々にポルトヨーロッパのことを思い出す。幼少期、母の実家が和歌山にあったので、そこへ遊びに行った帰りにポルトヨーロッパへ立ち寄ることが多かった。イルカが出てくるライドシアターのアトラクション、確かにあった覚えがある。それから、ぐるぐると座席部分が回転するジェットコースターとか。ついでに母の実家で飼われていたボクサー犬のことも久々に思い出した。
帰宅後、寝る前に『じゃむパンの日』を少し読む。短い文がどんどん積み上がって、日常がパンチの強いイカれたユーモアへ昇華されるような読み口。関西弁のイントネーションで音読すると楽しい。
11月28日
会社へ向かう電車で鬼平を読む。両眉の間にびっしり毛を生やして、まるで眉毛が一本に繋がっているような風体の男・甚五郎は、本格派の盗人の親方だ。ある日、甚五郎一味が狙っていた商家が、一足先に別の賊に襲撃され、急ぎ働きにより家の者が惨殺されてしまう。盗みの際に人殺しを行なうのを嫌う甚五郎は、盗みを横取りした奴らを成敗することに…。自分が盗みに入るつもりだった家の敵討ちとして、他の賊を叩きのめしにいく、というのは普通ならちょっと飲み込みにくいのだけど、このシリーズで本寸法と畜生働きの対比が何度も描かれてきているから、特に引っ掛かりなく痛快。ドラマ版では確か甚五郎と平蔵の絡みがあった気がするが、今回は直接会う描写はない。代わりに甚五郎と触れ合うのは忠吾で、お互いに正体を知らず酒を飲んで語らう甚五郎・忠吾のやりとりがハートフル。
『面とペルソナ20‘s』も読んだ。仮面・マスクをテーマにしたZINE。視線の権力構造など結構好きなテーマの話も入っていて、面白く読んだ。インタビュイーの舵取りにインタビュアーが全然沿ってくれないインタビュー記事が雑誌にひとつあると読み応えあって好きなのだが、そういう意味では、仮面屋おもての店主インタビューが「コロナと仮面を絡めてこられるのもううんざり」感が最初から最後までびんびん伝わってきてよかった。インタビューの最後でも「仮面とコロナ関係ないから」と言ってるし。それでいて、「自分にぴったりの仮面がある」幻想を持っているお客さんの話や、作り手のエゴの話など、面白い話もたくさんあった。
仕事帰りにも本を一冊買って、もう本棚がいっぱいだが、それはもう仕方ないことだ。
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