8月16日〜23日 第4巻 『夜鷹殺し』
8月16日
『ゴールデンカムイ』が無料公開されているので、じわじわと読んでいく。アシリパを幼さで決して侮ることなく知恵と勇気に心からリスペクトしている杉元、というコンビのあり方が好き。普段は喧嘩ばっかりだけどいざというときは結束する凸凹コンビも楽しいけど、こういう互いをちゃんと信頼するところから次第に打ち解けて関係が和らいでいく描き方のバランスはいいなぁと思う。キャラの面白さ、情報量のたっぷり詰まったアイヌ文化解説や歴史描写など、いろんな要素が詰まっていて読みごたえがある。これは人気出るわけだ。
仕事帰りにははらだ有彩『女ともだち ガール・ミーツ・ガールから始まる物語』を読了。漫画や小説、映画、古典など様々な物語に登場する女性ふたりについて書いたエッセイ。たとえば「女の女は敵」と言うとき、そう言ってアングルを二人の関係に当てはめようと視線を投げてくるのは二人の外にいる第三者だ。そうした外からの押しつけではない、ふたりの間に生じている関係を、物語の読み手という第三者でしかあり得ないところから誠実に読み取ろうとするスタンスがいいなぁと思う。『少女革命ウテナ』はアニメを途中まで観て止まっているので、視聴再開したくなった。
8月17日
楽しみにしていた『東京の生活史』の刊行がちょっと先延ばしになったので、その隙に積ん読を解消しておかねばという気分。
この前読んだインタビューが良かったので木下古栗『生成不純文学』を通勤鞄に入れる。相変わらず端正な文章と丁寧な描写で、本当にどうしようもない下ネタや突飛な展開を次々と繰り出してくる。宇宙飛行士の話から急に地上のOLへ視点が映り、さらに彼女が偶然見つけたノートへと段々大きなものから小さなものへ視点が狭まっていく構造の巧みさの末に、「野糞に色をつける試み」というどうしようもない本題にするーっとエスコートされてしまう。「なんだこれ……」となりながら、それでも読んでしまう感じ。
仕事をバタバタっと済ませて帰宅。英語をちょっと勉強して、本をちょっと読んで、NHK『コンテンツ・ラヴァーズ』を見る。局を越えた番組の話や、面白い構成作家の紹介とか、思いつくままに好きなコンテンツ談義を繰り広げる肩ひじ張らない感じが程よい。一昨日見つけたばかりのアーテイストについて、ものすごい熱量で語る松本まりかのその語りっぷりがよかった。
8月18日
今日要るからと言われて昨日急いで制作物を作ったのにリスケになったり、発注の仕方が適当なために振り回されたりと、自分起因じゃないところでの面倒臭さがすごい日だった。
その上、昼休憩で外に出たらそのタイミングでゲリラ豪雨だし。
discordの自習室グループでは、「英語わからないから中学レベルからやり直したい」談義で盛り上がった。僕の大学は英語の必修が1年生だけで、それ以降まったく英語の勉強をしてこなかったので、10年以上英語にまともに触れずにきたのだ。そりゃ忘れてるわ。
試しにYoutubeで中学生向けに英語の授業をやっているチャンネルを見たのだけど、文法以前の発音レベルから「お~!そういうルールだったんですね!!」という箇所が多々ある。TOEICとか受験するのはまだ先になりそう。
8月19日
ちょっと前から考えていた「自主制作の歌集ZINE」、TwitterBot版と紙版で2パターン作ろうかなと思った。Bot自体が歌集になる。短歌は1首1首が独立した作品であり、一方、歌集としてある構成の中に並べられることでまた見え方が変わってくる場合もある。その両方を「ひとつの歌集」「ふたつの媒体」としてやるのはアリな感じがしている。どちらにしろまずは短歌をセレクトせねば。
Spotifyの新サービスで、トークと音楽を交互に並べてラジオ番組のようにパッケージ化できるようになるという。これは以前柿内さんがそういうのをやりたいと言っていたなと思ってやり取りしているうちに、なんとなく僕もちょっとポッドキャストをやりたい気持ちになってきたので、なんとなく準備を始めた。
なんだか一日で急にやりたいことが増えてきた。いいことだ。
8月20日
みずほ銀行がまた不具合起こしているらしい。惰性で使ってきたけど、そろそろ口座買えたほうがいいかもしれん。それにしても、雨漏りやら何やら、考えなければいけないことがどんどん増えてきたな。
自宅で早速ポッドキャストの収録。多少喋りが拙くても、BGMが付いてくると程よくごまかせて、ちゃんとラジオっぽい感触になってくる。収録して、音源と交互に並べて配信。自分の曲振りでアーティストの曲が流れると「おーっ!」と嬉しくなってしまい、いろんな人に聴いて聴いてとリンクを送った。
8月21日
久々に晴れている休日なので外に出た。朝から代官山蔦屋を覗いて、歩いて渋谷へ。奥渋谷のSPBSもチェックしてから、代々木八幡駅で小田急線に乗り、下北沢へ出る。
BOOKSHOP TRAVELLERでは、Neverland DinerのスピンオフZINE『二度と行けない下北沢のあの店で』を購入。Twitterで見て気になってたやつ。他の地方でもスピンオフZINEが出てるみたいなんだけど、そっちは入手できる機会とかあったりするんだろうか。
井の頭線に乗って吉祥寺へ移動。古書防破堤でちょっと気になってた生井英考『空の帝国 アメリカの20世紀』、百年ではでデザインに一目ぼれしてZINE『小説のなかの画家たち』をゲット。荻窪ではTitle、新宿では紀伊国屋書店に立ち寄ってからいったん帰宅する。
夜は『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』。かなり楽しみにしていたが、期待を大幅に上回る楽しさ。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーでは抑え気味だったグロ・ゴア描写や悪趣味ギャグも詰め込みまくった、完全体ジェームズ・ガン監督作、という感じだった。キャラの命の軽さがギャグになっているんだけど、冗談みたいに安い安いなけなしの命だからこそ、それをいかに使うかというところに尊厳が宿る。敵を倒す場面より、死ぬかもしれない状況で、しかし勇気に背中を押されて走り出してしまう場面の方がやっぱり好きだ。こんなふざけっぱなしの映画なのにボロボロと泣いた。
8月22日
とりあえず午前中に散髪を済ませて、読みかけていた絲山秋子『小松とうさちゃん』を読了する。非常勤のまま一生を終えそうな小松、逃避先だったネトゲの世界にもちょっと食傷ぎみなうさちゃん、「見舞い屋」というちょっと表立っては言いにくい仕事についているみどり。なんだか自分の人生をうまく生きれていない感じがしている3人が、恋をしたり友人として手助けしたりすることで、少し前向きになる、という、ささやかながらじんわりといい余韻にひたる。瞑想していた女性が海に浮かぶクラゲと交信してしばしの会話をする不思議な短編『ネクトンについて考えても意味がない』も好きだった。タイトルもいい。
夜はポッドキャストでやりたい企画が思いついたので、ひたすら収録作業。Music+Talkで音楽解説する人はたくさんいるだろうけど、落語を解説するというアイデアはまだ出てこないだろう、と思ったので真っ先にやっておいた。米津玄師の『死神』と五街道雲助師匠の『死神』を並べて、落語入門的なバランスの回。権利関係をクリアして、楽曲とその元ネタをひとつのプログラム内で流せるのってかなり画期的な気がする。Music + Talkって色々と使い道ありそうだな。
Twitterで手塚治虫の話題になっていて、小中学生の時に読んでいた記憶の扉が開いてしまった。父親がよく手塚の漫画本を買っていて、シリーズものではなく短編集ばかりが実家にはかなりの数揃っていた。トラウマ必至な作品や、結構大人向けのものまで読んでいたなぁと思う。『2から2を消せば2』とか久々に思い出した。手塚はタイトルもいいよなぁ。
8月23日
仕事は全然忙しくなかったんだけど、面倒くさい予定が入ってきて憂鬱な気持ち。
「恋人を喪った安田短歌」が生まれて5年だという話題になり、フォロワーさんがざわざわしていた。時間が経つのが早い。当時中高生だったフォロワーさんが成人になっている。
鬼平は『夜鷹殺し』。夜鷹が惨殺される事件が頻発するも、町奉行所はまともに捜査を行う様子がない。街娼が客を取る事は本来禁じられているため、かえって取り締まる手間が省けていいというのだ。吉原の遊女と違い、その日の食事すらままならずギリギリで命を繋ぐしかない夜鷹が、あまりにひどい扱いを受けていることに怒りを禁じ得ない平蔵。密偵の手を借りて秘密裏に捜査を始める。
犯人は街娼への逆恨みからシリアルキラーに転じた旗本だった。平蔵は彼を切り捨て、事件の真相ごと闇に葬り去ってしまう、というかなり陰鬱なテイストの話。途中のおまさ・彦十のやりとりによってちょっと空気は軟化するものの、なんともやりきれない気分になる一編。
この巻には佐藤隆介の解説がついてるんだけど、「やはり女には〔鬼平犯科帳〕の真髄は理解不能である」みたいなことを執拗に書いてて心底イヤだなぁと思った。鬼平の中で描かれる善悪のゆらぎのリアルや独自のモラルを、男の自己憐憫に回収する感じはかなりキツい。僕が持っている文庫は古本なので1976年初版・92年第28刷の文庫なので、最新のバージョンにこの解説が収録されているのかわからないけど……。
っていうか、そもそも、僕に鬼平犯科帳の面白さを教えてくれたのは、あやのさんという女性なんだよ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?