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11月14日〜22日 第13巻 『春雪』

11月14日

仕事の作業中には、ナツノカモさんと落語家さんとのスペースのアーカイブを聴く。立川志ら乃師匠の回と、柳家花ごめさん。志ら乃師匠はお弟子さんとの関係や、人に落語指導をするときの話など、あまり外で語っていなさそうなことが多くて、いちいち「そうなのか!」と驚いてしまう。花ごめさんとの創作についての話で、「書くまでそのキャラが出てくることを知らなかった」「ストーリーに要らない部分を削らず残す」というカモさんのスタンスは、カモさんが好きだという保坂和志の小説とかも想起させる。ただ、新作落語でそういうことやっている人、あんまりいなさそう。

帰りに一人カラオケに行って、米津とかVaundyとか歌っている。このままだと、50代・60代になっても、その時にはやっている20代アーティストの曲とか歌ってそうだな。

11月15日

山本ぽてとさんがホスト役で、文化系トークラジオLifeの外伝ポッドキャストが配信されていて、ゲストが柿内さん、住本さんに、海猫沢めろん先生という座組。住本さんとも山本さん経由で知り合っているので、「これは知り合い(+海猫沢めろん先生)の番組だ…」となる。柿内さんが日記で山本さんのポッドキャストに出た、と書いてあったので、これは近々そういう企画をやるんだろうな、とは思っていたが、まさかTBSラジオ案件だとは。午前中は聴きながら仕事の作業を進める。めろん先生が柿内さんの弟・午後さんの論考を読んでいたことが判明したり、急に住本さんの兼桝綾さんに対する巨大感情が炸裂していたり、文学フリマというテーマによって引き出される話がとても楽しい。ノーマークだった本の名前をいくつかチェック。あと、柿内さんのプロフィール紹介で雑談・オブ・ザ・デッドの名前が出たときにさらっと、「Ryota氏との共著」というワードが出たので、僕も名前だけLifeデビューした。

神田伯山・柳家喬太郎の「真打ち競演」、配信アーカイブも聴いた。喬太郎師匠、今でも地方の会場とかなら「キョンキョン」の枕を振るんだなぁ、と思う。

仕事はうっすらバタバタしていたが、一応切りのいいところまでは終わらせた。

帰ってから、『金色のガッシュ!!2』の最新話をU-NEXTで読んでいたら、キャンチョメの手足が伸びていた。

11月16日

チェンソーマンの最新話を朝のうちに見る。閉鎖空間ホラー映画のエッセンスも感じられる。どんどんみんながメンタルを崩す中で、頼りになりそうな人の心がぽっきり折れてしまう瞬間。

昼休憩で石田夏穂『我が友、スミス』を読了。「別の生き物になりたい」と思い、筋トレにのめり込む主人公が、とあるきっかけでボディビルの大会出場に臨む話。一見、世間的な”女性らしさ”から離れていくかのようでありながら、大会では外の世界よりも”女性らしさ”を求められてしまう、ボディビル業界という題材自体が興味深くてどんどん読めてしまう。ジェンダー意識から開放されたいはすが、より”女性らしさ”を求められる状況に置かれてしまい違和感を抱く一方、鍛え上がった自分の体を見て自分のことを好きになっていく、という描写もあって、いい感じに落ち着かせてくれない。エンタメ的なストーリーでもあるし、これはちょっと実写映画とかでも観たいな、と思うんだけど、題材的にちょっと難しいのかなぁ。筋トレやボディビルの専門用語の説明に文字数を取られていた印象も受けたので、専門性の薄い題材の作品も読みたい。

アトロクの「笑える太宰治」特集がよかった。解説の斎藤理生さんの柔らかくて軽妙な関西弁が、従来の「太宰治」のイメージを程よく崩してほぐしている感じがあった。

夜、短歌を作らなきゃなぁ、と思っていたのに、蛙亭のYoutubeでイワクラが芸人仲間に新衣装をお披露目する動画とかを見ていたら、あっという間に時間が無くなった。

11月17日

『水は海に向かって流れる』実写映画化が決定で、大島里美の脚本ということなので、結構良い作品ができるのではないか、と楽しみ。

文学フリマのおまけペーパーに載せる新作短歌5首が完成。当初載せようと思っていた2首がはずれて、結局、ここ数日でバタバタと出来上がったものが載ることになった。コンビニで試しにプリントして再チェックしたらもう少し修正したいところが見つかったので、明日やろう。

11月18日

ここ最近では一番暇な日で、仕事の合間におまけペーパーの修正をしたり、もりたの無料配布ポストカードのWEB入稿などもしていた。
Twitter本社がえらいことになっている、ということで、Twitter以外の避難先としてマストドンのアカウントも作っておく。Twitterでしか繋がっていない何人かのフォローもできてちょっと安心。Twitterで知り合った友人がかなり多い僕にとっては、生命線のようなツールなので、何とか続いて欲しいがどうなるのか……。

文フリの新刊情報がまだまだ出てくるので「お金がない」とツイートしたら、「未経験から月収100万円!」というような、胡散臭いアカウント5つ、6つほどに一気にフォローされる。恐ろしい世の中だ。

もりたとLINE通話で文フリの確認事項について話し、荷物の準備を済ませて眠る。

11月19日

今日はもりたハウスに泊まって、翌朝もりたの彼氏さんの運転する車で文フリ会場に行く、という流れなので、キャリーケースに『傑作』の在庫、リュックサックに着替えなどを詰めて、昼前に出かける。
新宿南口のキンコーズで、前日に入稿したもりたのポストカードを受け取り、自分のおまけペーパーの配布分をコピー。彼氏さんと合流して、車に乗り込み移動する。

もりたと合流して、3人でサイゼリヤで昼食。ほうれん草とベーコンのオーブン焼きがメニューから消えて意気消沈してしまって以来なので、かなり久々に来た。海老クリームグラタンを食べる。

もりたハウスに着いて、しばらくはすることがないのでぼんやり過ごす。もりたは明日配布するフリーペーパーの準備。途中で、校正も手伝った。
もりたは香り付きの短歌カードも販売予定で、あやのさんにセレクトした香水を吹き付けてもらう作業が残っていたので、夜に車に乗り込んで移動。あやのさん宅へ行く前に、安楽亭で焼肉食べ放題。もりたカップルがしっかり食べ放題を楽しんでいたので、この辺りの土地勘がない僕は「あやのさん宅はここからすぐのところなのかな」と思っていたが、単にふたりとも時間を忘れて肉を食べていただけだった。そこから結構な時間車に乗って、予定よりだいぶ遅くあやのさん宅に到着。あやのさんがどんどん香水瓶を持ってきて、あやの夫妻・もりたカップルで吹き付け・封入作業を行なうが、僕はお腹いっぱいですっかり眠くなっており、作業を全く手伝うことなくまったりしながらテレビで「ドラフトコント」を見ているだけだった。

もりたハウスへ帰宅後、風呂だけ借りてすぐに寝る。

11月20日

7時頃に目が覚めて、もりたカップルが起きてくるまでYoutubeを見てぼーっとする。彼氏さんが先に起きてきて、トーストを焼いてもらう。メープルシロップを少し垂らす。

もりたも起きてきて、準備して出発。一時間弱で到着して会場入り。バタバタと設営準備。僕は『傑作』におまけペーパーの挟み込み作業をする。12時から一般開場。隣のブースの人がもりたの知り合いで、開始早々『傑作』を買ってくれて、自分のブースで読んで感想をツイートしてくれた。「面白かった。ちょいちょいフフッてなる」というのは、割と面白み狙いな自分にとっては嬉しい感想。その後も、ちらほら『傑作』を買ってくれる人がいて、中には「やりとりしたことは無いけどTwitterをよく見てます」と言ってくれる方もいた。思いついた短歌をぽんぽん置くような雑な運用しかしていないので、嬉しさ半分、「もうちょっとちゃんとせねば」という気持ち半分。おまけも「嬉しい!」と喜んでいただけて、ちゃんと間に合わせられてよかったなと思う。

開始から1時間くらい経ったところで自分の買い物に出発。今回は買い物リストがパンパンなので急いで回らねば、と自然と早足になる。第一展示場では山本さんと、センケイさん、スズキロクさんに挨拶しつつ、他にも欲しいものをどんどん買ってはどんどんトートに詰めていく。どちらかというと第二展示場の方が欲しいものが多いはずなのに、すでにトートが結構な重み。
第二展示場は先に詩歌エリアへ。ナナロク社ブースで、久々にまほぴさんに会えたので少しお話。もしかすると最後にお会いしたのってコロナ前とかかも。まほぴさんは後でこちらのブースにも来てくれて、『傑作』を買っていってくれた。まほぴさんが歌集を出す、というのを聞いて「僕もだらだらと長いこと短歌をやってきたから、一度過去作をまとめてみようかな」と思ったのが『傑作』を作るきっかけの一つだったので、まほぴさんにその歌集をお渡しできたのは嬉しい。
おしゃれ表紙歌集で気になっていたtoi toi toiのメンバーの方(男性だったのでおそらくイトウマさん?)と話す。よくわかっていなかったのだけど、名古屋で活動しているそうで、平和園の話になる。やはり名古屋の短歌界にとって平和園というのは重要な場所になっているっぽいな、と思う。まず料理がめちゃくちゃ美味いらしい。なんだか、伝説の楽園に行ったことある人に、その素晴らしさの話だけを聴くような心持ち。
PINFUさんのブース(前回のと合わせて日記2冊購入)や、代わりに読む人(後で友田さんに新刊のサインをもらった)、H.A.B.(雑談・オブ・ザ・デッドを買ってくれた人がいたらしい)などにも立ち寄る。事前に気になっていた『笑福亭羽光越後道中記』を買いに本屋しゃんのブースに行ったら、狙い撃ちで真っすぐ買いに来る人があまりいなかったようで、とても驚かれた。「本屋しゃん」は屋号だけ聞いたことがあって、漠然と本の販売とかリトルプレス制作とかやっているのかなくらいに思っていたんだけど、聞いてみるとZINEの制作は今回が初めてで、落語会や展示の企画などかなり幅広い広いジャンルで活動しているとのこと。謎が解明された。
lighthouseで「フェミニズムのつどい」本を買って、その日の予算は尽きてしまった。「これにて、今日の予算はなくなりました」と関口さんに言う。

もりたブースで目を惹くのはガチャガチャ機で、中にもりたの詩歌のフレーズが書かれたピンバッジが入っている。1回100円。これが結構盛り上がって、3人連れがそれぞれ1回ずつ回して、バッジに書かれた文言を読み上げてワイワイ話したり、ひとりしみじみとフレーズが心に突き刺さっている様子の人がいたり。

終盤近くなってきたので、ご挨拶しそびれていたたらちねmamaブースへ。笹選歌欄ファミリーの本条さんと小林さんにご挨拶できた。僕が全然歌会に参加しないメンバーなので、これが初対面だったりする。本条さんは僕がブースにいない間に『傑作』を買っていただいたみたいで、小林さんも買いに来てくださった。ありがたい…!
もうすぐ終了時間というタイミングでわかしょ文庫さんも『傑作』を買ってくれて、結果『傑作』は11冊売れた。思った以上の売上。在庫は残り20冊を切った。

天気が崩れるとのことで、ビニル袋で購入品を梱包して詰め込む。『傑作』が減ったスペースに本を詰めたら、しっかりリュックサックとキャリーケースの中に収まった。
もりたたちは別の仲間と打ち上げがあるので、会場で解散し、そのまま一人電車に乗って帰宅。あまり雨は降らず助かった。

ひとり打ち上げの気分で、回転寿司に行き、歌集の売り上げでたらふく食べる。帰宅後、文フリで買った本を整理したら、29冊あった。恐ろしい。

11月21日

前日の文フリの疲れがドッと出ていて、腕はうっすら筋肉痛。仕事がそこまで忙しくないのが救い。

仕事の行き帰りでナツノカモさん演じる「のん記らくご」の音源を聴く。のん記のキャラでありながら、夢の世界を舞台にすることでシュールなテイスト。「ガチャ」「パカッ」など擬音を声にして発すると人は途端にコミカルになる。カモさんからも、擬音がセリフ内に入ると深刻さや切迫感がなくなるというのは音声のみの落語における発見だった、というリプライがあった。そう考えると、セリフからグラデーション的に擬音へ変化する「シゴトトトト…」という表現が、のん記の一番の発明なのかも。

夜、文フリで買った『笑福亭羽光越後道中記』を読み始める。1日目の出来事と2日目の出来事を交互に語るという謎の手法により、時間のズレが生じたり、別々の時間が響き合ったりするような構成で謎の面白さ。タイトルから想像してたよりもかなりコンセプチュアルに尖った本なのではないか。

11月22日

「おまけのグー」をネットプリントにした。初めてのことなので、会社近くのセブンイレブンとファミリーマートで試し刷り。大丈夫そうだったので告知をしたら、最適日常のアカウントがRTしてくれている。短歌ネプリ情報が充実しているサイトで、今、コンビニのあの機械からこんなにたくさんの詩歌がプリントアウトされているのかぁ、と、短歌の地道な盛り上がりっぷりを感じる。

鬼平を読む。旗本・宮口の懐から老人が紙入れを掏摸盗った現場を目撃した平蔵。老人が金を抜き取り捨てた宮口の紙入れの中には、どこかの家の図面が描かれた紙が入っていた。平蔵はこの図面の家は、宮口の妻の実家である豪商の屋敷ではないかと勘づくが…。たまに大胆な手は使うものの基本的にはかなり綿密に考えて行動するものの、今回の平蔵はちょっと動きが軽率なところがあったり、勘が鈍かったりする。普段はどっしりと肝が座っている平蔵も、旗本相手の事案で焦ってしまうという、人間的なところが出ている。たまにこういうエピソードを挟んでおかないと、平蔵=完璧なヒーローになってしまうものな。思わぬところで掏摸の老人・宗八と宮口に関係性が生まれ、さらに勘違いが重なって惨劇が勃発するシーンは映画的な映像が脳裏にバッと浮かんで読み応えがあった。

『笑福亭羽光越後道中記』も読了。文章上では、1日目よりも先に2日目の落語会が始まり、どんどん時間のズレが激しくなっていく中、1日目の最初と、2日目の最後が同じ「ニューシネマパラダイス」というネタであり、そこでいきなり二日間の時間が接続されるかのような描写の盛り上がりがものすごい。「ニューシネマパラダイス」は落語の予告編のような作りで、ここにも様々なネタの断片が入り込んできてものすごい複層的なシーン。同じ演目でも、違う場所・違う時間で変わってくるものである、という落語の特性も描出される。たった2日間の出来事で、こんな時空間を生み出してくるような本だとは……! 思いもよらない方向性からの個人的大ヒットだった。

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