7月28日〜8月4日 第11巻 『男色一本饂飩』
7月28日
配食が到着。段ボール2箱にぎっちり食料が詰まっていて、これは確かにひとり暮らしなら10日くらいは過ごせるな、という量。とりあえず置き場がないので、部屋の真ん中にどんと段ボールを置いて、冷蔵庫や電子レンジの上などにいくらか食べ物を移動させて整理する。残りの日数は余裕でしのげそう。
夜はちょっと本が読める感じがしたので、文学フリマで買ったきりだった九龍ジョー『東京で聖者になるのはたいへんだ』を読み終える。
7月29日
熱は平熱高めをキープしているが、目眩と鼻水、痰、咳はまだ続いていて、ほとんど寝転んですごしている。U-NEXTでヨーロッパ企画『来てけつかるべき新世界』を観てから昼寝。テレビで『バイス』を軽く流し見したけど、途中で集中力が切れて中断。WOWOWプラスで清水ミチコの武道館でのライブ映像が流れ始めて、それを観ていた。観客参加のゲーム大会、からの、プレゼントをかけてのじゃんけん対決を、武道館の規模でやっているのを初めて見た。
7月30日
今日も寝て、起きて、ご飯食べて、何かしら観て、また寝て、という感じ。結構寝たな~、そろそろ夕方かしら、と思ったらまだ13時。時間の感覚がおかしくなっている。
思考錯誤vol.2を読んだ。前回は「大相撲観戦記」がトップバッターだったけど、今回は「蓮實重彦論」が冒頭に来ている。連載の並びも結構自由度が高いみたい。友田さんのエッセイで、刺身のツマだけを専門に作っている工場・ツマ八、という架空の業者が登場する。僕も時々こういう「架空の専門業者」の妄想をすることがある。ビニール袋製造の大手「袋のタカハシ」、警察から委託で押収された盗品を並べる作業を行なう「山田陳列(株)」など。
7月31日
熱は下がってきている。頭がぼーんやりとしてはっきりせず、これはコロナの後遺症なのかもしれない、とちょっと不安。本当ならこの月末は色々と見に行きたいものがあったんだけど、それもできず、ずっと家にいた。大河ドラマを観ながら、この前『キャラクター』と『鎌倉殿の13人』を続けて観たのが一週間も前のことだと思えず、毎日ほとんど寝て過ごしてきたとはいえ、あっという間に時間が過ぎていることに驚く。そうやって、気づけば7月もおしまいだ。
8月1日
今日からテレワークで仕事復帰。他の制作メンバーも自宅作業なので、メールやLINEで連携をとりつつ作業を進める。結構カロリーの高い案件がいきなりやってきて、それを終わらせたらほとんど就業時間を使い切ってしまった。
溜まっていた日記を書き進めて、コロナ罹患前に読みかけて止まっていた小山田浩子『庭』を読み終える。転居や出産、帰省などの環境の変容、あるいは日常生活の鬱屈といったものが、様々な生き物や、庭に生える植物などを媒介にしてじんわり表出していく感覚がどの短編にもある。改行が少なくびっしり文字が埋め尽くされている紙面、その中で繰り広げられる細密な描写や、時に発話者や時制が混線してカオスになる言葉たちによって、どの短編からも独特な迫力と圧力が感じられた。他の作品も読みたい。
8月2日
今日から自宅療養は解除だが、念のためまだ仕事はテレワーク。家にいると「仕事だ!」という気分が薄れてくるが、作業案件は通常くらいあって、あんまり気が抜けずに過ごしている。
夜は久々に外へ出る。夜でも暑い。軽い買い物をして、寿司を食べた。
8月3日
テレワーク作業の間に、溜まっているラジオ英会話と英会話定番レシピを進めていく。崩れたルーティンを取り戻さねば。
夕方になって面倒な案件が入ってきて、通常出勤している時よりも遅くまで作業をしてしまった。出社した方が環境が整っていて作業効率上がるんだよな。そろそろ出社して作業したいな、と思ったが、熱をはかるとまだ37.1℃で微熱だったので、明日もテレワーク決定。
ユリイカの最新号「現代語の世界」を買ってきて、山本ぽてとさんの原稿を読む。「この特集テーマで何で山本さん?」と思ったが、インタビュー原稿の構成という「音声を文章に置き換える作業」についてのライター目線の話で、なるほどとなった。僕も過去に仕事や趣味でインタビュー原稿を構成したことがあり、言い淀んでいる発話を言い切りの形でどう直すか頭を働かせる場面は何度もあったので「そうですよね~」と頷きながら読んだ。
寝る前に『岸辺のアルバム』5話を観た。横たわっている八千草薫の顔を覗き込みに行くようなカメラワークにぎょっとする。
8月4日
鬼平犯科帳は第11巻に入った。今回は同心・木村忠吾がメイン回。冒頭、季節の移り変わりと忠吾の人柄が一緒に伝わる一文が良い。
こういうさわやかな文章をさらっと差し込んでくるのが池波はうまい。
見回り中の忠吾は、途中で立ち寄った一本うどん屋で、男色家らしい侍に遭遇。その後、誘拐されてしまう。火盗改一同が行方不明になった忠吾を探して奔走する、という話。
忠吾を誘拐した侍・寺内武兵衛は、実は盗人。しかも表向きは今でいう経営コンサルタントのような仕事をしていて、それで親交を得た大店に盗みに入るという悪どい手口を使っている。剣術も強く、平蔵と大立ち回りも繰り広げるという、かなり存在感のあるキャラ造形。助け出されたあとの忠吾について周囲の仲間が「くすくす笑い」しながら噂している、というのは読んでてイヤだなぁと思う。平蔵が忠吾のことを慮ってくれるのが救いではあるけど。
密偵でもなんでもないうどん屋の女中さんが、寺内の手下を尾行するシーンのスリリングさもあり、本筋以外のところも読み応えのある回だった。
今日も自宅ワークで、あれこれ細かい修正に対応して、合間で西村賢太『瓦礫の死角』を読み終えて、夜からは北村薫『空飛ぶ馬』を読み始めた。『空飛ぶ馬』はサイン本で僕の宛名入り。柳家三三師匠が『空飛ぶ馬』を朗読し、作中に登場する落語を一席演じるという公演があり、その会場でサイン会も開催されたのだった。今調べたら2011年の冬の公演だったらしく、ということは僕は大学2年生なのだけど、せっかく直々にサインしてもらった本を読まないままずっと積んでたというのは、我ながら不届きなやつだな、と思う。10年以上越しに、初めて読む。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?