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3月4日〜13日 第8巻 『あきれた奴』

3月4日

昨日の深夜に観た『しずる池田大好き芸人』が良かった。個人特集回でありがちな褒めているふりをして恥ずかしいところをいじる、みたいなのがなくて、全体的に和やかな雰囲気。池田が後輩に優しすぎて、バイクの後ろに乗せて家まで送ってあげる時、防寒具を全部後輩に着せてあげる話がとてもよかった。

この日記、誕生日から始めたからもうすぐ1年になるんだな、とふと気づく。ざっと文字数を数えたら16万字を超えていた。あやのさんからこの日記もZINEにしろと言われているけどどうするか。

武塙さんが「ホラー映画パーフェクトコレクション ゾンビの世界」DVD10枚組を買っていて、すごくうれしい。ちょっともう同志感がある。そして、『私はゾンビと歩いた!』について調べていたら、アピチャッポン・ウィーラセタクン監督の新作で、登場人物の名前が『私はゾンビと歩いた!』のキャラクター名から取られていると知る。マジか。

3月5日

眠い眠い昼寝したいと思いながらベッドの上でうにゃうにゃしていて、しっかりは寝れなかったけど2時間ほどうとうとしている。ここのところ睡眠の取り方がどんどんダメになってきている。
ぼんやりと寝転がったままで、日本映画専門チャンネルの岩井秀人特集で録っていた『世界は一人』を眺めていた。松尾スズキ・松たか子・瑛太が同級生を演じる音楽劇で、前野健太がいい声で歌っている。舞台の規模は大きくなっているけど、語られているサイズ感は割とこじんまりしている感があり、とはいえそれでも3人分の人生であるからして十分大きいのだけれど。「付き合いやすい自分なんていない」というパンチラインがよかった。

夕方から外出。シネマ・ロサに向かって歩く途中で、もう桜がちょっと咲いている木があった。

『偶然と想像』を観る。偶然によって生まれた対話を軸にした短編3本。演技を巡る話でもあって、自分の気持ちを隠して知らないふりをする1話、「ハニートラップ」を仕掛けようとして気のあるふりをする2話、勘違いをきっかけにして出会った二人が互いにある芝居に興じる3話という作りになっている。特に、それぞれが虚構を投影する媒体になるという特殊な協同によって自分の中に抱えていた心情を吐露し合っていく3話がものすごくて見入ってしまった。この作品といい、『アイネクライネナハトムジーク』といい、あの仙台駅前の歩道橋には素敵な出会いを発生させる魔力が宿っているのか。

帰って、NOBROCK TVの「100回ボケてツッコむタイムレース」真空ジェシカ編を観た。トンツカタン森本による「尖っているイメージを持たれがちだけど、実際はとにかく人を笑顔にさせたい2人」という真空ジェシカ評を聞いて、佐久間Pが「シザーハンズだな」とつぶやいたのが面白すぎて咽せた。

3月6日

昼から町田に出かける。町田は遠いし普段用事もないので初めて来たのだけど、駅前がかなり栄えていて驚いた。こんな感じなのか。町田市民文学館ことばらんどで「57577展」を観る。参加歌人や公募による短歌の展示などが中心。Titleでの展示の時もそうだったけど、こちらでも木下龍也『天才による凡人のための短歌教室』の作歌術が紹介されていて、この本は実作入門書としてかなり「使える」本なんだな、と改めて思う。

町田のBOOKOFFがデカい。あとで駅前に「一番売れているBOOKOFF」と書いてあるのを見かけたが、確かにものすごく広くて品揃えも充実していた。1冊だけ買う。

で、帰ろうと思ったら電車が人身事故で運転見合わせらしく、下北沢に寄りたかったので他の路線で帰るのもなぁと思い、運動がてらひと駅分歩く。思ったより駅間の距離があって時間がかかってしまった。都心の駅間隔で想定してはダメな距離だった。

電車に乗って下北沢へ。本当はFunzkueに寄りたかったが、思ったより遅い時間になったので断念。書店を軽く見て回って家に帰る。

夜はR-1グランプリ。ちゃんとリアタイして最初から最後まで観るのはとても久しぶり。全体的にどれも楽しく見たが、吉住のコント(「テレビを観てたから当事者」!)、寺田寛明のJRのくだりがとても好きだった。うまく場を和ませてくれる霜降りせいやがずっとかわいい。ただ、番組コラボCMに登場するのが全部コンビ芸人だったのは納得いかなかった。

3月7日

雑談・オブ・ザ・デッド最終回が更新された。聴いた武塙さんが「ゾンビって自由だなぁ」とツイートしていて、「そうなんですよね!」と頷く。ゾンビはジャンルとしての構造が強固な分、様々なものを突っ込める懐の広さがあるジャンルなのだ、ということを僕も喋りながら感じていた。全音源が公開されてしまったので、残るは制作作業だけだ。頑張らねば。

藤原無雨『その午後、巨匠たちは、』を読了した。葛飾北斎やモネ、レンブレントなど、かつての絵画界の巨匠たちを神様として祀った神社。その中での巨匠たちの交流や、神社がある村で暮らす人々の物語が描かれていく。これだけでも奇想天外な上、本文内の単語に付された注釈が次のストーリーを書き継いでいくというギミック付き。画家たちのパワーが村に巻き起こす影響の描写や、キリストの磔刑図を掲げることでキリストが昇天しようとする力を推進力にするトロッコなど、本筋以外の設定も楽しく、変なもの読んだなぁという満足感があった。他の作品も読みたい。

3月8日

天気が少し悪く、気圧の影響か、仕事中もずっとうんにょりした調子だった。

夜はNetflixで『トークサバイバー』を6話まで観る。ドラマパートの合間にそれぞれトークや大喜利をして出演継続か降板かを争うパートがあり、感触としては「キス我慢」シリーズとかに近い。演者の中では特に塚地さんが演技上手。面白いんだけど、芸能界ネタや下ネタも結構あるので、全世界配信したときに海外の人にも面白さが伝わる作りなのかはよくわかんない。

3月9日

雑談・オブ・ザ・デッドの原稿作業をぐいぐいと進めていく。小見出しを付けるとどんどん記事っぽくなっていくので嬉しい。まだ道のりは長いが。

『トークサバイバー』を全エピソード観終える。ゴッドタン感もありつつ、なんとかエピソードを絞りだす中で人生のキツい瞬間や芸能界のしんどい時期の話を話していかざるを得なくなっていって、少し『あちこちオードリー』のニュアンスも感じるんだよな。最後まで「これ、全世界対応にする意味あるのか?」とは思ったが、英語タイトル『last one standing』でTwitter検索したら、出演者に英語でリプライしているツイートを見かけたので、海外に住む日本人や日本カルチャーに興味がある層にはニーズがあるのかもしれないな。

3月10日

雑談・オブ・ザ・デッド、セーラーゾンビ回の自分の発言の整理を終える。読み直すと「かなりうろ覚えで喋ってるな~」と冷や汗が出るが、評論の正確さよりその場で繰り出される雑談の熱量を重視したいので、とりあえずうろ覚えで喋っているところも残す案配にした。

まほぴさんの歌集『水上バス浅草行き』の表紙デザインが出ていてとてもいい。コミックスくらいの持ち運びやすいサイズとのことで、やはりポータブルな歌集はいいよな、と思っている。せっかく短い詩型なんだし。Twitterで話題になった「ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし」という短歌に「あの短歌のひと、岡本真帆のはじめての歌集!」と添えてある帯がすごい。「あの短歌のひと」! たぶん発売したら「あの歌集のひと」になっちゃいますよ、まほぴさん。

仕事後、帰って録画していた『平家物語』、とうとう佳境に入ってきていて平家もかなりの没落具合だし、学校の教科書に載っていた「敦盛の最期」のくだりの描写がものすごいしで見入る。今回ものんきだった『よりぬきのん記2021』の残りを読み終えてから就寝。

3月11日

今日も低調気味。最近いい感じで睡眠が取れてなくて、一日中しんどい。

毎年恒例にしようとしているラテさんインタビューについて、この一年に起こったことのリストが届いて、ラテさんのこの一年は激動だったんだなぁ、となる。インタビューツイキャスの日付も決めた。僕の一年はこの日記に書いてあって、もう雨漏りで騒いでいたのとかだいぶ前な気がする。

今年のほしいものリストは歌集中心にしたのだけど、最近フォローされた方には僕が短歌やっているとあまり認識されてないらしく驚かれた。
真山さんがほしいものリストから一冊を送ってくれるらしくて嬉しい。

3月12日

ぽかぽかとした春らしい陽気で、ワイシャツにカーディガンでちょっと暑く感じるくらい。

夕方に渋谷へ行って、久々に渋谷らくご。今回は立川吉笑さんの三題噺企画な上、前に出る3人が鯉八・百栄・羽光というキャラの濃い新作派真打で、ものすごい座組だ。開演前に客席から集めたお題3つを入れた新作落語を90分で作ってトリで発表するという大変な企画なので、前の3人が出来るだけ時間を伸ばそうとした結果、みんな2ネタずつやるという異常事態になっていて面白かった。吉笑さんが作ったネタは「笑福亭羽光失踪事件」という、内輪ネタ+下ネタという、吉笑さんが普段やらない要素だけでできたような話で、即興で仕上げると、普段見られないような方向性を出さざるを得なくなるのが可笑しかった。

3月13日

今日も渋谷らくご。今日は11時開演の若手公演「はやおきらくご」で、前2人がかっちり正統派の古典をやったところに現れた伸べえさんが衝撃的。前からヤバい人だと名前だけは知っていたのだが今回が初聴で、独特なテンポと滑舌の悪さがそのまま不可思議なフラになっていて、ツボにハマると抜け出せなくなる笑いの起こし方をしていた。前の席の女性が身を捩って大爆笑していた。「落ち着くならドトール行ったほうが……」のような現代ネタは、古典正統派の人がやるとシラけてしまうのだが、伸べえさんがやるとアリになってしまう感じがある。ちょっと他のネタも見たくなった。

帰りに焼肉とレモンサワーを摂取して、散髪も済ませたけどまだ夕方。家でダラダラ過ごす。

鬼平は『あきれた奴』を読む。かつて捕物に向かっていたため妻子の死に目に遭えなかった経験を持つ同心・小柳。ある日、子供もろとも橋から身投げしようとしていた女性の身を助ける。しかしその女性は、先日小柳が捕らえた盗人・又八の妻だった……、という話。平蔵と盗人の連帯や絆が描かれる話は多いが、同心と盗人がこのような協力を見せる話はあんまりなくて新鮮。このエピソード、ドラマ版がものすごく良くて、五鉄の主人が身投げしようとしていた母親に里芋の調理法を教え、「一度試してみては」とさらりと言ってささやかに生きていく後押しの声をかけてあげる演出はドラマオリジナルなのだと確認する。やっぱりドラマ版の翻案の入れ方素晴らしいよな。原作では又八夫妻の馴れ初めの部分が深めに描かれた印象。

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