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#恋人を喪った安田短歌 連作Part2「程度問題」

運命ノ人ヲ肯定スルナラバソノ喪失モ運命トセヨ

強度など意味を持たない夜だった君を呑み込み溶けた金属

喜びを分けあうような手振りして「またね」と言ったもういない君

「秋」に「火」は仕込まれていた 君もまた燃える人群れの一部である

幸福を計測できるわけもなく瓦礫となった君のマンション

君よりも悲しい人を見つけてね そしたらきっと僕に出会える

あの人も誰か喪ったのだろう整列のなか肩が震えて

憧れを通りすぎればもう二度と引き返さずに列車は進む

熱狂も冷めてこれから建て直すとき気づくのだ君の不在に

もう全て喪ったってわかるのにパソコンの壁紙だけが春

新聞の写真の画質では君の輪郭さえも捉えられない

押し寄せる訃報の中に君もいて漢字で書くとそんな形か

亡き人の母親よりも悲しくて許されるのか煙る夕空

悲しみの程度問題話すとき「はぁ」と応える語気だけ荒く

生きたいと思う間も無く燃え尽きた君よ明日は晴れる予報だ

あの日々のメタファーとして描かれた映画の予告編 君もいる

死者を食い物にするなと憤る気力も起きず広いベッドだ

「ひとつだけ取りに帰るね それだけは持って避難をしたいと思う」

紅葉、君、図書館で借りた小説、婚姻届が混ざった灰

仮眠中見る夢さえも君がいたけれど目覚める 生きてゆくのだ

※映画『シン・ゴジラ』に登場する安田龍彦(高橋一生)が、ゴジラの襲撃で恋人を亡くしているという妄想の設定で詠んだ短歌連作です。

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