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5月10日~14日 第20巻 『二度ある事は』

5月10日

なかなか寝れず、夜更かししちゃったので、眠い。

友田とんさんの連載「地下鉄にも雨は降る」が柏書房のWebマガジンで始まった。以前から友田さんがツイートしていた、地下鉄の漏水対策についての連載。手作業によるその場しのぎと試行錯誤の痕跡なのに、作業を行なった個人の姿はインフラの陰に隠れて見えない、という感触が面白いな。満を持して漏水対策を見に行ったら駅に無かったのは「パリのガイドブックで東京を闊歩する」のフレンチトーストを食べられないくだりを思い出した。

帰宅後、溜まっていた日記を書いて更新。

5月11日

夜中に地震があり、揺れと共に町内での注意喚起の放送によって睡眠が中断され、今日も眠い。

群像5月号を読了。いつもより分厚い号だったが思ったよりスムーズに読み切れた。スムーズに通読するコツを掴み始めているのかもしれない。

外が結構な雨。洗濯物干しっぱなしだったのでしょんぼり。予定のある週末も雨らしく、更にしょんぼり。アトロクの木村衣有子さんのゲスト回、淡々とした語り口でちょこちょこ引っ掛かりのあるフレーズを差し込んでくるのがいい。お通しでメニューで頼んだものと同じ料理が来ちゃう件をどう思うかについて、即座に「ダブルジョイ」と応じていたのが最高だった。

帰宅後、「未来」の月詠を作成。短歌のストックが尽きてきた。少し群像読み進めて就寝。

5月12日

わかしょ文庫さんの新連載「美しきもの見し人は」初回、どういうコンセプトの連載なのか様子見だったんだけど、年末に放送された「ミリオネア・バイヤーズクラブ」というどうかしているテレビ番組をじっと見ているうちに、徐々に自分の実存が揺らぎ始め、なぜかペーパードライバー講習を受けることに決める、というヤバい文章だった。最初はテレビ番組の内容の変さを淡々と伝える内容だったのが、少しずつ著者に対して何言ってるんだ感が強まり、テレビ画面にゆらめく虚実が現実にしみ出す時空に置いてけぼりにされてしまう。番組について検索したら、番組のTwitterアカウントに文中に登場したドルガバの家電の画像が貼ってあって、想像の百倍の派手さだった。

帰宅後だらだらしていて、観ようと思っていたBSプレミアム「男たちの旅路」をすっかり忘れていたことに気づく。明日に備えて寝る。

5月13日

天気が不安定な中、昼前に出かけて神保町ブックフリマへ。作品社・国書刊行会・青弓社・青土社のブースから行く。作品社が全品1000円になっていて安い。パッと目についた佐々木敦『この映画を視ているのは誰か?』を買う。青弓社では気になってた『「テレビは見ない」というけれど」を購入。そのブースから道を挟んだ対角線上に進むと白水社。色々と作品を眺めているとキム・ホンビ『多情所感』があって、「あー、これ白水社か!」となって即購入。読書人隣りの合同ブースへ移動。代わりに読む人のブースでは友田さんと少しおしゃべり。わかしょさんの連載が面白かった話をしたり、群像を通読するのが大変な件を聞いてもらったりした。帰り際、共和国で東直子『レモン石鹸泡立てる』を買った。

サイゼリヤで昼飯を食べて休憩した後、渋谷へ移動。渋谷らくごの17時回で、今回はそれぞれキャラが濃い怪しい落語家3人+軽やかな講談・いちかさん、という番組。こしら師匠は新刊の自著宣伝を兼ねたマクラに力が入りすぎたからか、本来笑いどころであるはずの後半を大幅に省略した短縮版時そば。珍しくとちりまくりセルフツッコミを入れながらの高座になって可笑しかった。小ふねさんは観るの2回目。古典っぽい語り口の中に、隙をつくように現代的なドライな言い回しを挟んできて、それが捉えどころのない独自のテンポ感になっててユニーク。なんとなく聞きながら思い浮かべる絵が和田ラヂヲとか吉田戦車とかのタッチ。いちかさんの講談は、もう時代劇ドラマを観ているかのような演じ分けと安定のテンポ。「腰元彫名人昆寛」は初めて聴くネタ。講談はまだまだ知らない演目がたくさんある。昆寛の才能と作品の見事さによって、結局奥さんがしている苦労は仕方ない犠牲として追いやられてしまう感じがうーむちょっと飲み込みづらいバランスではあるけど、どうなる話なのか読めず面白くは観た。時間を持て余したり遅刻しそうになったりと、なんだか一日うまく時間を使えなかったらしい百栄師匠は、時間調整もかねて長めの身辺雑記的なマクラをまったり話してから「天使と悪魔」。もう若いころからの代表作として、風格さえあるネタになってるな。

5月14日

天気が不安定なのもあって、昼までは家でゆったり過ごす。午後から電車に乗って渋谷へ向かう。行きの電車で鬼平を読み進める。非番の日、目黒の感得寺へ母親の墓参りに出かけた細川峯太郎。一度は墓参りついでに茶店のお長と情事にふけっている平蔵に目撃され、二度目に浮気心を持ってお長の様子を見に行った際にも平蔵に叱られている細川は、今回ばかりはただ墓参りだけを済ませるつもりだったが、気が付けば足はお長のいる茶店へ向かっていた。二度あることは三度ある、またもやある事態をきっかけに平蔵に怒られ、勘定方に逆戻り……、という話。最近、忠吾のポジションを揺らがすかと思われていた細川だけど、結局女絡みのしくじりで大失態。ここまでみっともない目に遭う同心キャラも珍しい。平蔵が裏で勘を働かせ、盗賊連中を一網打尽にするシーンは痛快。せっかく盗人から足を洗い眼鏡師として真面目に働いていた市兵衛が弟子に黙って店を去る場面が切なかったが、最終的には密偵になってまた地道に働けるようになったのでひと安心。

渋谷らくご17時回。新作と古典が入り混じったいいバランス。信楽さんの「犬」はイルミネーションのアニメ映画『ペット』のイメージで聴いていた。犬が楽器を弾けるようになるシーンやオチがところどころ力技なのが可笑しい。朝枝さん、端正な落語のイメージだが、ここ何回か聴いている感じ、実は誇張めで演じるのが好きな人なのではないかと思う。それが浮かないのはあのスタイルと声質による部分が大きい。鯉八さんの「いまじん」、一人が三人を演じ、その三人もそれぞれ別の人を演じる、という複雑な構造なわけだけど、それを速いテンポで繰り広げながらなんとなく分からせて、きっちり笑わせるのすごい。姫と侍の逢瀬のシーン、月の入り方でなんだかほっこり。トリの扇辰師匠がすごく良くて、俳句をひねる導入からスッと入ってじわじわと物語が立ち上がっていく感触。無言でお茶を入れるシーンは、ゆったりした時間の流れの中に、なぜ店の奥に呼ばれたのだろうという夫婦の緊張感も含まれていて、見入ってしまった。あれこれ想像させるような3席の後に、扇辰師匠の地に足付いた人情噺という良い締め方。終演後、会場に来ていたはちたそさんと合流。はちたそさんは落語をちゃんと観るのが初めてとのことで、かなり楽しんでもらえた様子。おすすめツイートしてよかった。

帰宅後、『だが、情熱はある』を観てから寝る。

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