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285.日記(12月30日)

12月30日

よく寝れたもののダルい。外は雨だし、気圧のせいかしら。ウダウダして寝たり起きたりしている。

とりあえず読みかけだった滝口悠生『死んでいない者』を読み終えた。読み始めて数ページで「これはたぶん、細かく家系図を頭に入れなくても大丈夫なやつだな」と思っていたら、作中でも誰が誰とどういう続柄なのかわからんという言及があったり、見間違え(?)が起きたりして、そういうバランスなのねと我が意を得たり。三人称なんだけど、ちょっと親族寄りなバランスの語り口は面白いなと思いながら初めはなかなかノレなかったが、銭湯でのダニエルと勝行の義理を巡る会話のシーンで、なぜだか涙が出そうになった。全然泣くようなシーンではないんだけど。でも、ダニエルが義理を「感じる」と表現したことについて、「鋭い、えらい」と感心する勝行のその絶妙な通じ合い方にグッときてしまったのだ。それ以降は結構楽しみ方をつかんだ。時空間をふわふわと(あるいはグイグイと)移動しながら、人と人の間を描くタッチが心地よかった。滝口さんの作品は初めてだったので、他の作品も読めばもっといい感じにチューニングを合わせて読める気がする。

今年の映画納めは『カツベン!』。周防監督作品はDVDで何作か観ているけど、劇場では初。冒頭の過去回想、キャラメルを一口で食べるのではなくちょっとずつ齧るというその描写からして「いいなぁ〜」という感じであり、もうその想いのままでゆったり楽しく観れてしまった。脚本が本当にナイスで、箪笥の引き出しの件や劇場照明のくだりなど、あるアイテムやモチーフを異なる意味で繰り返し使う手際の良さよ。
キャストもみんなよくて、特に僕は今年、『チワワちゃん』『愛がなんだ』などで成田凌がす気になってしまっているので眼福です。ああいう細身長身俳優は、その細身長身をもて余すようなギクシャクした身振りのときに輝きを発揮する気がするのです。竹野内豊の熱血刑事や、悪女な井上真央など、俳優さんの普段のイメージと違うキャスティングもいいハマりっぷり。それから、成河の兄貴分もめちゃくちゃ好きでした。
ネタバレにならぬようあんまり言及は避けるけど、映画讃歌であり、話芸讃歌でもあって、そのうえ、エモくはなりすぎずさらっと見れるバランスなのが、じんわり好ましかった。

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