12月1日〜8日 第6巻 『大川の隠居』
12月1日
外の雨音がうるさくて、夜中に目が覚めてしまい、再び眠るまでに時間がかかった。
中村吉右衛門が死去。鬼平を読んでいる間に、鬼平が亡くなってしまった。僕はもちろんだが、大ファンであるあやのさんはショックがかなり大きく、夜中にスペースをして、鬼平のことを話して、ドラマ版、面白いのでフォロワーさんにも観てほしいんだよね、と言い合う。とりあえずシーズン1の1話・2話だけでも……。
12月2日
文學界のお笑い特集が楽しそうで、柿内さんの書評も載るらしいので、久々に月刊文芸誌を買いたいなという気持ちになっている。
M-1の決勝進出者発表を観る。ランジャタイ、真空ジェシカあたりが入ってきて嬉しい。いい意味で荒れた大会になりそうで楽しみ。そのままランジャタイのANNポッドキャストを聴き直す。最終回の単独ライブのカオスっぷりもすごかったが、第2回でふたりしてスーパー3助のものまねをするくだりが一番ヤバいな~と思う。
流れでアメトーークの読書芸人。Aマッソ加納の「岸本佐知子への信頼感」トークにうなずきまくった。自分の読書の好みとしてはラランド・ニシダ、Aマッソ加納の間くらいだな~と見ながら思う。
12月3日
佐久間宣行のANN0をポッドキャストで聴いてたら、佐久間さんが若い頃に観て衝撃を受けたのが、エミール・クストリッツァの『アンダーグラウンド』と話していて嬉しくなる。僕も大学時代に映画を観まくるきっかけになったのが、KAVCで企画上映された『アンダーグラウンド』だったのだ。最近BSプレミアムで放送された録画を放置しているので、久々に見直したい。と言いつつ、観たいものが多すぎて全然追いつかない。
で、録画しっぱなしだったスジナシの広末涼子回を観る。広末涼子の瞬発力の高さ。アドリブとは思えない立て板に水なセリフ回しと、出してくるワード・エピソードの多さに感動する。喧嘩して怒った恋人が床に焼きそばを叩きつけた翌朝、目を覚ましてぼんやりしていると、昨日飛び散った焼きそばの一本が天井にくっついてぷらーんとぶら下がっていた、という話を(実体験らしいのだけど)、即座に会話の中に持ち込んでくるのすごい。
夜は先輩とLINEでちょっと雑談、の予定だったけど、映画の感想など話していたらすっかり深夜1時だった。
12月4日
前日の夜更かしもあって昼過ぎまではゴロゴロして過ごす。
夕方から新宿へ行き、むかし家今松師匠の独演会へ。新宿の無可有って名前だけは知ってたけど、K’sCINEMAからすぐ近くで新宿駅からアクセスしやすい場所にあるスペースで、確かにこじんまりした会をやるならちょうどいいスペースなのかも。白浪さんの「庭蟹」のあとに今松師匠の「二丁蠟燭」「おかめ団子」。ちょっと思い出し思い出しやっている感じがあるのだけど、まとっている空気感がよくてゆったり噺に浸れる。そこまで細かい描写やしぐさをやっているわけでないのに、映像が浮かんでくるのが不思議。「二丁蠟燭」では赤ん坊が大きな口を開けて欠伸する画が見えるし、「おかめ団子」での貧しい親子の会話シーンも脳内に鮮明に浮かんでくる。時代劇映画観ている感覚。良かったなぁ、と思いながら帰る。
帰りの電車で『サラ金の歴史』を読み終えた。単純に知らない業界の歴史として面白いし、貸す側借りる側のメンタリティーにまで迫っていて読みごたえがある。借金の取り立ては感情労働だったのか、とか。こういういろんな職業の業界史は掘っていくと面白そうだな。
ゾンビトークで話すかな、と思い『アナと世界の終わり』を観る。ゾンビミュージカルだから楽しい感じかな、と思ったら結構ちゃんとハードな展開で切ない余韻。「俺はクラスで一番ゾンビを殺すのが上手い」という曲が馬鹿馬鹿しくてよかった。
12月5日
和田誠展に再チャレンジするも更にめちゃくちゃに人が並んでいて、うーむこれを待つのはしんどいな、となった。何か別のものを観ようと思ってめぼしい美術館を調べて、現代美術館に行くことにする。
『クリスチャン・マークレー トランスレーティング[翻訳する]』は、音声と記号をめぐる作品を数多く作ったアーティストの個展。マンガのオノマトペを使った作品や、街中のお店の装飾として描かれている音符を楽譜に見立てた作品など、ユーモラスな切り口で視聴覚の間を遊んでいる感覚があり楽しい。
『Viva Video! 久保田成子展』、久保田成子について全然知らなかったので、ナムジュン・パイクのパートナーだと知って驚く。ビデオを彫刻に埋め込んだ諸作品やデュシャンへのオマージュ作品などを観る。脳梗塞で倒れてリハビリすることになったナムジュン・パイクが、若い女性に介護してもらってニヤニヤしている映像に、マーヴィン・ゲイの「セクシュアル・フィーリング」を重ねた作品に笑ってしまった。
夜は『ゾンビの中心で、愛を叫ぶ』。もはやほとんどゾンビは出てこず、途中に闖入者はいるものの、マンションの一室での夫婦の物語がメイン。もっと夫婦間が殺伐していくのかと思いきや、ドラッグやったり、初めてのデートを思い出したプレイをやったりして楽しそうだったりもする。最終的にゾンビになったとしても、それまでに人としての生があるんだぞ、という作りになっていてグッとくるが、途中のエピソードの入り方とか変なところもあって、「変な映画だったな」という余韻。
12月6日
制作部チームのもう一人のライターさんが体調不良でお休み、僕一人体制に急になってしまって恐ろしかったが、そこまで忙しくなかったのでセーフ。
文フリで買ったてぱとら委員会『私たちの中学お受験フェミニズム』を読了。僕はおそらく著者の方々と世代や地域が近いものの、公立中学に進学後「この大学のこの学部が面白そうだから行きたい!」と自ら言い出して、そこに届く偏差値の高校に通い、狙ってた大学に進学できた、という遍歴なので、親からの進学に関する圧とかを全く感じずに来てしまった節がある。加えて受験可能な学校数や定員数の男女差などの実情に触れ、「全然何も分かってないまま学生時代を過ごしてたな……」と思う。言及されてる本も気になるので読みたい。
12月7日
ゾンビZINEの文字起こし、とりあえず第1回の荒い第一段階は完了。音声認識を使うととりあえず音から文字化するのはだいぶ楽。音から文字の変換……クリスチャン・マークレー……。ここからどんどん整えていくステップに入っていきたい。短歌も準備せねば。
夜はポイエティークRADIOのゾンビトーク第4回収録。なんとなく今回取り上げる作品は柿内さん的に好きでない路線、ということは事前に聞いていたのでどういう展開になるのかしら、と思っていたが、その好きでなさを掘り下げることで、ゾンビ作品が持つ魅力に別角度から切り込む話になっていったので、同じ「ゾンビ」がテーマなのにちゃんと上手いこと各回で違うテイストになっていくものだなぁと思う。
柿内さんから表紙案も届き、いい感じな不気味さ。表紙デザインがビジュアル化されるともうかなり完成した感覚を覚えるが、まだ全6回を録り終えてもいないのだった。
12月8日
通勤の行きの電車で鬼平。『大川の隠居』。中年になって老いを感じ始めた平蔵と、六十歳を過ぎてなお盗みの腕試しをして心が躍ってしまう友五郎の対比。やはり鬼平は読者層がその年代が中心だからか、中年の悲哀みたいなものが多く、若者がメインの話でも青春真っ只中というよりは、中高年が若き日の失敗を思い返すような距離感がある気がする。
父の形見の煙管を盗まれて激昂するわけでもなく、むしろ友五郎の盗みの手腕を試して面白がるような平蔵の遊び心も楽しい。正義の立場だと罪の大小を問わず裁く方がそれこそ「正しい」気がするが、平蔵は相手がどういう人物か個々に見て判断するようなスタンス。個々を尊重する好人物というキャラ造形であると共に、そうした方が似たような話運びの短編でも、味わいのグラデーションが付けられるのかもしれないな。
今日は仕事のミーティングで、来年あたりからまた案件数が増えて制作の負担も増すかも、という話になり、うへぇーという気持ち。僕もこの会社では勤務年数でいうと中堅社員になってしまった……。
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