6月22日〜28日 第10巻 『追跡』
6月22日
前日夜更かし気味だったのでずっとねむい。それを差し引いても、30歳になってから調子が100%いい日が1日もないな。
全然気づいていなかったんだけど、池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題』の表紙について書いたnoteのことを、角川新書のTwitterアカウントが2020年時点で言及してくれていたらしい。こちらへのリプライなどが無かったので知らなかった。文中で「僕は1冊も、というか1ページも読んだことがない」と書いているnoteを紹介してくれるなんて、懐が深い。事前に表紙のイメージ画像や、数字のサンプル模型を作っていることも紹介されていて、そんなに手間暇かけて作った表紙をネタ的にいじって申し訳ない。
夜はレイトショーで『恋は光』。「恋愛の定義とは?』を問いながら進む青春映画で、「定義なんかできない人それぞれのもの」と逃げずに、なぜ人それぞれなのかまで作中内のロジックとして説明した上で、しかしやはり定義不能なところはあるよね、という話にまで持っていってる。小林啓一監督作は、「そんなキャラっぽいやりとりしないだろう」というセリフ回しを保ちながら、しかし実在感も載せていくバランス感覚があるなと思っていて、今作もそんな話し方しないでしょう、と思いつつもどのキャラもチャーミング。序盤のシーンを反転させたようなクライマックスの展開が見事でうなった。
6月23日
『覚醒するシスターフッド』を読み始めて柚木麻子『パティオ8』が面白かった。緊急事態宣言のステイホーム中の設定ながら、「メンバーの得意分野を活かして作戦を遂行していくチームものエンタメ」をやっている。ZOOM会議がチームの秘密基地代わり。
夜は西田さんとTwitterで与太なやりとりをしていたら、変な時間まで起きてしまった。
6月24日
ねむすぎて全然ダメ。仕事中に右と左を間違える。
代わりに読む人がメルマガを始めるらしい。クレジットカード決済なので、とうとう後回しにしてきたクレカ発行をやるときが来たのか……。どのクレカがいいのか全く分からん。「思考錯誤」というメルマガのタイトルを見て、雑誌の編集部にいたころ、他のみんなが見過ごしていた「思考錯誤」という誤字に最後の最後で気付いて、「試行錯誤」と赤字を入れられられたことに妙にテンションが上がったのを思い出した。
6月25日
もう本格的な夏だ。暑い。昼はぷらぷらお出かけして、青山ブックセンターで『全身が青春』を買う。
夜は、最近読んで面白かった本を紹介するキャス。『忘れられない絵の話 絵画検討会2020-2021』、『汀日記 若手はなしかの思索ノート』『旅書簡集 ゆきあってしあさって』『本が語ること、語らせること』の4冊。30分通してまったく言葉がまとまんないままだったけど、とりあえず面白かったと名前を挙げることに意味があると思っている。
その後、スペースで自室の積の読本の冊数を数える配信をする。あっさり100冊を超えて結構焦った。結果、積ん読は合計164冊。スペースを聴いていた人たちが「自分の積ん読はRyotaさんより少ないから励まされた」という旨をツイートしていて、謎のエンパワーメントになっていた。それにしてもどんどん読まねばやばいぞ。
6月26日
霜降り明星のオールナイトニッポンが、ANN0の昔の音源からpodcast配信始まっていることに気づいて、放送第1回を聴く。メールテーマが「オールスター感謝祭で目立つためのアドバイス」で、「こんな頃から感謝祭の話してるのか!」と思う。
夕方から円盤に乗る場のイベントで、小台のおぐセンターへ。柿内さんがホスト、高田公太さん・蛙坂須美さんがゲストで実話怪談についてのトーク。まったくもって知らないジャンルなので、「そもそも実話怪談作家とは何ぞや?」という基本的な話題から、とても面白い。文章上で作家性を出しすぎると怪談にとってのノイズとなり、淡々とやりすぎると読み物としての面白さが損なわれてしまう。その絶妙な案配を探っている文芸ジャンルとしての「実話怪談」。一方、人の体験談をネタにするという意味では、ゲスさというか、ゴシップっぽさもまとわりついている。そういう俗っぽさも受け入れつつ、どうやって面白いものを作るか。結構テクニカルな話もあって職人っぽい仕事だなと思った。
途中、高田さんが自分が書いた文章を朗読するところがあった。震災当時の福島で、点くはずのない街の灯りが一瞬光って消えた目撃譚を聴きながら、随分前にフィールドレコーディングについてのトークイベントで話されていたことを思い出した。ひとりで見るものは、それが本当にそこに実在しているものなのか、自分にしか見えていない幻覚なのか判断できない。ふたり以上で見ることで、そこで初めて風景が立ち現れる。では、自分と相手が同じものを見ているのかどうかはどう確かめるのか。それは、信じるしかない。実話怪談は、「実話」であるからノンフィクションに近いのだけど、その体験者が語る不思議な出来事は、我々の一般的な常識に照らし合わせると「幻覚」だとみなされてしまうだろう。それを一旦「それは面白い体験ですね」と信じて、受け取って、他の人にもシェアできる文章(怪談師なら語り)にすることで、風景化する(もちろん体験者が見たものとピッタリ同じにはならないだろうけど)。実話怪談というジャンルは、そういう営みのことなのかもしれない。
6月27日
代わりに読む人のメルマガのためにクレジットカードを発行。あれこれ調べたけど、結局使い勝手が良さそうでアプリで即日発行できるものにしてしまった。昼休憩の時間を使ってスマホでぽちぽち申込みをして、とりあえず契約完了。それからすぐにメルマガ「思考錯誤」の購読申込。
今日はここ最近だと久しぶりに仕事がバタバタしていて慌ただしかった。もうちょっと早く指示を出しなさいよ、と思うことばかり。とはいえ、なんとか業務時間内に全部終わらせると、「思考錯誤」第一回が届いている。
「思考錯誤」の連載は大相撲・蓮實重彦・ボラーニョ+友田さんの雑記的エッセイというラインナップで、大相撲が冒頭にくることで途端に雑多なマガジン感が出る。相撲についてはまったく門外漢なので、出てくる固有名詞もかなりメジャーどころ以外は全然わかんないんだけど、わかしょさんの文章が上手くてなんだかんだするすると読んでしまう。妙に相撲取りの情報に詳しい(そして当たり前のようにそれを書く)のがいい。映画好きな割に蓮實重彦はそんなに読んでないので、現状、蓮實論がとりあえず一番の楽しみで、初回から読み応えあった。『2666』は分厚いこと以外知らず、面白いらしいということも聞くのだけど、これ以上部屋に分厚い本を積むのもなぁと思い(なにせ164冊の積ん読本が自室にあるのだ)、当分は友田さんが代わりに読んでくれているのを読むのに留まりそう。
6月28日
通勤電車で鬼平を読む。かつて火盗改を裏切り、賊の仲間になってしまった元目明しの甚五郎。消息を絶っていた彼を見かけた平蔵は、賊を捕らえる手がかりを得るため尾行を開始する。ところがその尾行の最中に、平蔵にいきなり侍が話しかけてきた。九兵衛と名乗る浪人者は、平蔵の剣術の腕を見込んで手合わせしたいというのだが…。前半はしつこく勝負を仕掛けてくる浪人に、平蔵が尾行を邪魔されるという可笑しみのある話。しかし、後半からは狂気に走った九兵衛が刀を振り回して逃走、通りがかりの市井の人をどんどん切りまくる凶行に出るというとんでもない展開になる。鬼平では切り合いの場面もあるにはあるけど、盗人相手が中心なこともあって、ここまで人が切られまくる話は珍しい。結局、九兵衛は牢の中で獄死、甚五郎も無事に捕まえられて一件落着、という結末にはなるんだけど、九兵衛の狂気の理由は語られず、不気味な余韻が残る。
今日の仕事はちょい暇。昨日バタバタした分、比較的ぼんやりしてやり過ごした感じ。
昨日は寝る前にキム・ギヨン『下女』を観て眠くなって中断したので、途中から最後まで見る。下女と肉体関係を持ってしまった男とその妻の愛憎劇がものすごい悲惨な結末を迎えたかと思ったら、ものすごい梯子の外され方をして終わったので呆然としてしまった。
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