8月10日〜16日 第11巻 『穴』
8月10日
この頃、きっちり眠れてなくて、めちゃくちゃ早く目が覚めてしまう上に悪夢をよく見ている。まずい。まだ咳も出るし、相変わらず低調ぎみ。
今日はお盆休み前の最後の出勤日で、そんなに忙しくはなくサクサクっと仕事をこなす。セロテープ台もテープカットするギザギザのところに肘をガンとぶつけてしまい、痛さでテンションが下がる。
8月11日
BOOKOFFがアプリ会員20%オフセールだったので、買い物に出かける。新宿と代々木の店に行き、帰りに家の最寄りの店舗にも寄って、計7冊購入。月10冊ペースで読書を進めることにしているが、今月だけで既に16冊買っており、そりゃあ積ん読は増える一方だわ、となる。
武塙さんの日記新刊『頭蓋骨のうら側』を読了。春先の武塙さんは桜味をたくさん食べていた。雑談・オブ・ザ・デッドや文フリのことが書いてあり、こうやって本の形で読むとずいぶん時間が経ってしまった感覚になる。日記祭の日の日記では、僕は「たったった」と歩いて登場して、現実の僕よりも颯爽としている。読み返したときに「なんだか楽しそうな一年を過ごしている」と思えるように書かれた日記に登場できるのは喜ばしいことだ。
夜に、武塙さんの日記に頻出する木村屋の「ジャンボむしケーキ」を初めて食べた。ほんのり甘いプレーン味。
8月12日
眠すぎて午前中はずっとゴロゴロしていて、昼から外に出て渋谷らくごへ行く。今日は立川談吉さんが「もう半分」、入船亭扇里師匠が「お札はがし」という怪談回。いつもより客席の照明を落としてじっくり語られていく。談吉さんが、「落語家が怪談をなぜ語るかというと、やりたいから」と話していた。両方とも夫婦が欲のために、生きるために大金をせしめる話でもあったな。
夜は『石子と羽男』を観てから寝る。
8月13日
台風が近づいていて、気圧のせいかほとんど寝ているような日。合間で『ザ・ファブル』の2作目を観た。団地のアクションシーンは流石。住人に危害が及ばないようにしつつ、廊下・室内・外に組まれた足場を行き来し、時には建物の間を滑り落ちながら敵を倒していく。足場陥落シーンもしっかり迫力あり。
夜は『初恋の悪魔』で、とうとう前半の1話完結で事件を解決する刑事ドラマフォーマットが剥がれ落ち、じわじわと様子が変わってきている。私刑やカラオケの描写は『スイッチ』を思い出すし、坂元作品でたびたび描かれる罪と恋の話がこれからもっと全面に出てきそう。
8月14日
下北沢の本屋を回遊してから渋谷へ。今日は渋谷らくごの創作落語回。サンキュータツオさんのツイートを見て気になってた三遊亭青森さんを初めて観ることができた。開口一番「愛と平和!愛と平和!」と叫び、パンクロックのMCのようなアジテーション的な枕でシャウトして、「ユージとトミ子は今夜も夢中」というネタに入る。カップル2人の他愛もない会話の合間に「ユージとトミ子は今夜も夢中!」というブリッジが入るネタなんだけど、噺が進むにつれて、実はユージとトミ子はバイク事故で亡くなった幽霊なのだと明らかになる。2人は愛を囁き合いながら高座から消えてゆくのだった。余韻が切なくてちょっとエモい。落語という「言えばあることになる芸能」の力を活用して、死んだカップルを束の間幻出させていて、この人はなんだかわからんけどすごいのではないか。結構いろんな新作をやってるらしいから、他のネタも気になる。そのあとはきく麿師匠の「ブラジル産」。ただ巻き舌で「ブラジル」と言いたいだけの呑気なネタ。吉笑さんの「舌打たず」は初期ネタではあるけど相変わらずめちゃくちゃウケる。トリの鯉八さんは「若草」「最後の夏」の二本立て。女子校の朝礼、敗退した高校野球という、高校生もの括りだったのかしら。新作落語は事前に話をよく知っている古典に比べて想像力を振り絞らなければならず、頭を使ってへとへとになる。
夜は鎌倉殿。比企が退場してしまい、どんどんしんどい展開になる。
夏季休暇は基本一人行動で全然言葉を発してないからまずいな、と思い、突発的にスペースを開いて話した。コロナ体験談から落語の話がメインになり、末広亭のことなどをあれこれ喋った。
8月15日
思ったより早い時間に目が覚めて、二度寝しようとゴロゴロ寝ころぶもどんどん目が覚めてきたので諦める。
昼の中入り前に末広亭に入り、この時点で結構混んでいる。伸衛門師匠は中入り休憩後の食いつきというポジションでサクサクとテンポよく「七段目」。寄席ではあんまり観たことないネタだったけど、意外とこの持ち時間でもやれちゃうんだな。山上兄弟は弟のみ。普段は「兄が手品をやっているので…」というのがフリになっているので、どのネタをやるかじっと考えているところもクスクス笑いが起こる。昇吉師匠は生では初めて。東大出身のインテリという売り出し方で一時期テレビにも出てた気がするが、マクラとか喋り方はむしろおバカっぽいトーンとテンションで笑わせるタイプで意外。新作がよくウケていた。太福さんは浪曲版男はつらいよの「寅次郎頑張れ!」。寄席の出番だとちょろっとだけのダイジェストみたいな構成にはなってしまうが、寅さんシリーズのレギュラーメンバーやゲスト俳優の物まね部分が盛り上がる。初見の小すみさんは、昔ながらの音曲から急にヨーデル風の「冷蔵庫の歌」が始まり、最後は踊りで上品に締める流れがとってもいい。昼のトリは昇太師匠。よく考えると寄席の昇太師匠は初めて観るかも。ネタは「不動坊火焔」で、八つぁんの浮かれ具合にゲラゲラ笑う。
夜席。ねづっちが客席からのちょっと扱いにくい時事ネタもさらっと謎かけで処理していて見事。二つ目昇進の南楽さんはおどおどした感じがあまり他の落語家さんにはいないタイプ。たどたどしいんだけどそれを補う言葉が面白くてウケていたので、このままスタイルとして確立していくのかもしれない。萬橘師匠はパワフルな「猫と金魚」。ナイツのちょっとテレビでやりづらそうなラインの漫才に、平治師匠、桃太郎師匠という違うタイプの曲者が続く。中トリは松鯉先生の「屏風の蘇生」。講談はまだまだ聴いたことが無い演目ばかりだな。
中入り後の活動弁士・坂本頼光先生がめちゃくちゃ面白かった。「石川五右衛門の法事」という無声映画をプロジェクターで投影し、リアルタイムで説明していく。映画自体の面白さに加え、昔の映画ならではの雑なところ・チープなところもツッコミつつ笑いに変えていく。若干セッティングに時間がかかる問題はあるが、寄席でももっと観たいな。活弁付きの映画上映は過去に何度か観たことがあるんだけど、毎回ものすごく面白いから、上映会とかあったらもっと足を運びたい。18時まで自宅で寝ていて危うく遅刻しそうだった小痴楽師匠は「浮世床・夢」。床屋で寝ているところを起こされる男の噺を、寝起きの落語家が語るという趣向は狙ったものなのかしら。小南師匠は独特の語り口で「写真の仇討ち」、東京ボーイズを挟んでトリは遊雀師匠の大工調べ。普段はカットされる後半までフルサイズの口演で、サゲの切れ味などは抜群だったんだけど、ちょっと声が小さくて聞き取れないところがちらほら。後ろの方に座っていたので末広の音響の問題なのかしら。師匠が最近までご病気で入院していたこともあり、それが遠因としてあるならちょっと心配。
6時間半寄席にこもりっぱなしで、全体的に満足度高い回だった。ふわふわした足取りで帰る。
8月16日
夏季休暇が終わって今日からまた仕事。昨日寝付くのがかなり遅くなったので、一日中眠いなぁとなりながら、バタバタと仕事を片付けていく。結構細々とした案件が続けて来たけど1日で終わらせられた。
帰りの電車で鬼平を読む。化粧品屋の金蔵から三百両余りの大金が盗まれる事件が発生。蔵には鍵がかかっていたため、事前に合鍵が作られていたのか、店に賊の一味が紛れ込んでいたのか……。捜査が難航していたある日、鍵がかかったままの金蔵に盗まれたはずの三百両が戻ってきて、という話。ミステリなどで、実は地下まで穴が掘られていて、というパターンはたまに見た記憶があるが、鬼平にもあるとは。加えて鬼平頻出の「盗人を引退した老人が再び盗みを働いて、活力を取り戻す」パターンでもある。扇屋の主人である源助は、欲目ではなくあくまで道楽の腕試しとして金蔵に忍び込む。盗んだ金を返して、今度は金蔵に鼠の麦藁細工を置いてこようかなぁ〜、とウキウキしているのが可笑しい。元は手下である番頭・茂兵衛とのコンビ感も楽しい。番頭の妻や奉公人には内緒でちょっとしたいたずらに心を躍らせるのが、引退した盗人たちのささやかな道楽というのは、なんだかかわいらしく思える。源助・茂兵衛は平蔵の密偵になったのでまた登場するエピソードもあるのかな。楽しみ。
コロナの後遺症か、まだ喉が腫れていて痛い。のどスプレー買って使い始めたが効き目はどうかしら。
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