見出し画像

090.文字起こしのこと

文字起こしは雑誌の記者・編集をやっていたころからついて回った作業の一つだ。インタビューした音源を聴いて、文字として打ち込んでいく。地道な作業な上に、かなり時間がかかるので、正直やっていて結構つらい。

では、嫌いな作業なのかと言われるとそういうわけでもない。
というのも、会話の音声を集中しながら聴くことによって色々な発見があるからだ。
会話の最中ではわかっていなかったが、改めて聞き直すと「ここで言ってる発言は、さっきの発言ともつながっているな」というふうに、インタビュイーの言葉の中から通底する要素が見つかることがあり、それが記事に落とし込む上での指針となる。
また、改めて音源を聴き込むことで、人がどのように発話しているかということにも興味を持つようになった。「~です。」とか「~ます。」と一文ごとにしっかり言いきる人というのはなかなかおらず、「~っていう。」や「~と思って。」と、軟着陸のような語尾になる場合が結構ある。あるいは「すごい」を使う人はたくさんいるのに、「すごく」を使う人はあんまりいないな、とか、そういう発話のあり方が創作物を作る上で参考になっている。

自分がインタビューをしている音源だと、インタビュイーの声と同じくらい自分の声も聞くことになる。僕の声は一般男性の中では高めで少しガサガサした感じだ。最初はちょっと自分の声を聴くのに妙な違和感も感じていたが、このごろはすぐに自分だとわかる特徴的な声が気にいっている。

雑誌編集の仕事を辞めて、やっと文字起こしから解放されるかと思いきや、今度は「クーチェキ」という趣味で文字起こしをやることになってしまった。大変だし面倒だけど、やっぱりそんなに嫌ではない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?