069. #恋人を喪った安田短歌 について その4「ジ・アート・オブ・ヤスダタンカ」
安田短歌本第一弾「安田龍彦は喪われた恋人の夢を見るか?」の文学フリマでの頒布から約2か月後の2017年7月、神山君とTwitterでやりとりしているうちに、「じゃあ、安田短歌本2やるか」という話になった。相変わらず、ノリと勢いで「やる」と決めてしまったわけだ。
さて、安田短歌本1が作品・年表・座談・評論・小説が混ざった総合誌だったのに対して、第2弾は「詠み手がそれぞれ別の詠み手の短歌10首をセレクトし、短評を書く」という他薦パートと、安田短歌を作る時に何を考えているかのアンケートパートの二つを中心にした作りになっている。これは「#恋人を喪った安田短歌」という共通のタグでありながら、詠み手自身のアプローチや創作を行なう上での目線が多岐にわたっていることを浮き彫りにしたいという狙いがあったからだ。また、同時期にたまたまお会いすることができた海老の人さんの安田短歌の創作方法があまりに衝撃的だったので、他の人たちがどのように作っているのか単純に気になったというのもある。
コンセプトはすぐにできたが、普段から短歌を詠んできたわけではないメンバーも多かったので、他の人の短歌についてまとまった感想を書く作業が(ある程度予想はできたものの)難航してしまい、原稿が集まるまでには時間がかかった。
ちなみに僕は神山君の詠んだ膨大な短歌を時期ごとに前半と後半に分けて、その前半部を担当することになった。制作期間中に、神山君作品の後半部担当の菜漓さんとお会いしたのだが、「短歌の量が多すぎて大変」という話で盛り上がった。
さらにこの制作期間の間に「角川短歌」10月号、山田航さんの時評コラム『題詠2.0』にて、安田短歌が紹介されるという事件が発生。もりたと高野アオさんにいたっては短歌が引用されるという展開に。しかも児童向け短歌や一人称の問題など、本流の短歌の話題と地続きで言及されている。なんとなく思い付きで作ったハッシュタグが、発足から約1年で本格的な短歌誌上で言及されてしまうという事態に、全く理解が追いつかなかった。
そんなこんなを経て2018年7月、安田短歌本第2弾「ジ・アート・オブ・ヤスダタンカ」は頒布された。なんと一年がかりで出来上がった本だ。頒布が札幌の文学フリマになったので、売り場に行くことはかなわなかったが、どうやらガチの短歌クラスタの方々の手にも渡ったらしく、完成できてよかったなぁと思った。
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