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6月29日~7月2日 第21回 『討ち入り市兵衛』

6月29日

作業中にポッドキャストで聴いていた「川島明のねごと」で、若い頃の天津・向が天才っぽい雰囲気を出していたことを麒麟・川島が例えて「小林賢太郎さん的な」「隙あったらポツネンやったろか、みたいな」と言っていて、この世代の吉本芸人からラーメンズや小林賢太郎の話が出てくる印象がなくて新鮮だった。男性ブランコとかかなり後輩でラーメンズからはっきり影響を受けている芸人もいるけど、同時期に活動していた吉本芸人ってラーメンズをどう見てたのだろう、というのはちょっと気になる。

帰宅後は溜まっていた日記を更新。元コウテイ・シモタと元なにわスワンキーズ・前田がコンビを結成したとのことで、粗品のチンチロ動画とか観ていたので「おーっ!」と驚いて、粗品のYouTubeチャンネルの結成報告動画とかを観た。

6月30日

月末は締め日なので、締め作業が終わるまで帰れず、と言っても制作の仕事は概ね終わっていて何もやることがなく、ぼんやりしてやりすごす。

帰宅途中に藤井隆のFIRST TAKE版の「ナンダカンダ」を観て、アレンジもステキでご機嫌。その流れで久し振りに「ディスコの神様」を聴いて、こんなに名曲だったっけ?と思う。

7月1日

下半期! 寝たいだけの長さ寝れてなくて、二度寝したいのにできない、というグダグダした時間を過ごす。

夜はユーロスペースで『絶唱浪曲ストーリー』を観た。浪曲の師匠と弟子に数年にわたって密着したドキュメンタリー。師弟間の話となると1対1の閉じた関係で渦巻く情念や愛憎、みたいなものを思い浮かべがちだが、浪曲師の傍らには三味線を弾く曲師がいて、師匠・弟子、浪曲師・曲師のトライアングルな関係性を形成している。それによって、濃密な時間を切り取りながらも風通しがよく開かれた感触に繋がっているように思う。小そめさんはチンドン屋にしろ浪曲にしろ、弟子入りするにあたって「チンドンや浪曲が体からあふれている姿に惹かれた」というようなことを語るが、カメラは小柳師匠の体からまさに浪曲があふれている姿をきっちり映像に収めている。それは、時に浪曲を小声で口ずさむ姿であり、時に過去の録音をベッドで聴きながら思わず動いてしまう腕だ。その様に、数十年にわたって、人生をかけて芸の世界にどっぷり身を浸した者の凄みを感じた。
ドキュメンタリーではあるが、浪曲や木馬亭が置かれている状況が登場人物たちの発言によって解説される場面もあるし、後のちょっとした展開に繋がるシーンを的確に入れていたりして、めちゃくちゃ分かりやすく見やすい作りになっているのも美点。小柳師匠が亡き後、曲師の祐子師匠(映画の時間内では90代、現在は100歳を超えて現役!)が小そめさんに稽古を付ける場面では、例えば伝説のボクサーの名セコンドがジム生を鍛え上げるスポコン映画のワンシーンのような、そういうアツさもあって見応えたっぷりの映画だった。ホクホクした気分で帰路につく。

7月2日

昼前から家を出て、豊洲へ落語を見に行く。開場まで時間があるので、ららぽーとの中をウロウロする。有隣堂書店が2階に、SPBSのブックカフェが4階にあっていいなぁ。SPBSでコーヒーを飲みながら、読みかけだった中村文則『列』を最後まで読み切る。これで群像7月号は読了。1ヶ月以内に読み切れるようになってきたぞ。

で、豊洲文化センターで立川志ら乃師匠の「豊洲ワシツアー 51畳」。公開稽古会的なニュアンスの小規模な会で、最初に弟子ののの一さんが「饅頭こわい」。それを観ていた志ら乃師匠がのの一さんに公開アドバイスをする。のの一さんが課題だと思っている部分に対して、こっちのアプローチでやったほうがいいよ、と志ら乃師匠が実演を交えて教えた「落語の基礎的な技術」の話が、「そういう演じ方なのか!」とめちゃくちゃタメになって興味深い。志ら乃師匠は「粗忽長屋」「もう半分」の二席。「粗忽長屋」は今年の前半力を入れて取り組みすぎたのでもうちょっとあっさりしたバージョンを、とのことで、確かに数か月前にシブラクで見たのと比べるとくすぐりなど減らしている箇所もあれこれあったが、それでもパワー充分でとっても楽しい。「もう半分」は数日前にアレンジを思いついてバーっと作り直したバージョンとのこと。凄惨で救いようのない展開があってホラー度増し増し。完全に巻き込まれて地獄のような状況に引きずり込まれている主人公の叫びが迫真。口演後、再度のの一さんを呼び入れて「もう半分」の感想戦。前日に新しいバージョンの「もう半分」を見せてもらったのの一さんが「こんなに怖い話を真に迫って演じてたのに、終わった後、笑顔で明るく「どうだった~?」って師匠が聞いてきたのが一番怖かった」と言っていて爆笑した。志ら乃・のの一師弟は父娘感があって何だか微笑ましい。今年は徐々に立川流の会や志ら乃師匠自身の会を整理して立ち上げたりクローズしたりしていくらしく、ワシツアーも一旦9月までで終わるらしいのだけど、面白い会だったので来月も都合が合いそうなら来たいなぁ。

かなり満足度が高くほわーんとなって歩いていたら、本来、有楽町線から帰るのが早いのにうっかりゆりかもめの改札をくぐってしまう。仕方がないので、そのまま新橋へ出てそのままブラブラと歩き、虎ノ門を経由して永田町から電車に乗って帰宅。

帰りの電車で鬼平を読む。笹やのお熊婆は、店の裏手で血まみれになっている男を発見し、店の中で手当をする。お熊に呼び出されて駆け付けた彦十は、男が松戸の繁蔵という盗人だと気づく。繁蔵は伝説の大泥棒・蓮沼の市兵衛の片腕と呼ばれた男だった。事情が分かるにつれ、無駄な殺生はしない本格派の市兵衛一味と、乱暴な急ぎ働きを行う壁川の源内一味による、盗人同士の諍いが起こっていることが明らかになる。今回はなんといっても市兵衛のキャラ造詣が魅力的。およそ盗人の頭領と思えない、お地蔵様のように可愛らしく物腰のやわらかい雰囲気ながら、後に繁蔵の仇討ちに乗り込む際には機敏な動きを見せるのがかっこよい。こういう魅力的な人物が一話限りで散っていくのが鬼平シリーズの潔いところでもある。

『日曜の夜ぐらいは…』最終回。「楽しいの、ダメなんだよね」と言っていたサチが、楽しい未来を想像するところまでたどりつけて良い余韻。

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