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187.影響を受けた作品メモ 古川日出男『ボディ・アンド・ソウル』

小説家であるフルカワヒデオが主人公。彼の作家生活が描かれる私小説のようでありながら、途中から喪われた(?)妻が登場したり、フルカワヒデオ自体が喪われたような描写が入ったりと、虚実がグラグラに揺らぐ小説。

たぶん最初に読んだのは中学生くらいのはず。古川日出男を初めて読んだのは『ルート350』という短編集。その摩訶不思議なストーリーと異質な文体が面白く、次に手にとったのが『ボディ・アンド・ソウル』だった。僕にとって、初めての「メタフィクション的」なものとの出会いだった。著者と同じフルカワヒデオが主人公で、文体のノリもところどころものすごく軽かったり異様なテンションだったりするので「これはこのまま、ライトなノリでいくのかしら」とおもったら唐突に暴力が勃発し、次の章は全く何事もなかったように再開されて……。正直読んでいて「なんじゃこら!?」とは思ったものの、その語り口とフィクションなのかノンフィクションなのか、フィクションだとしてもいろんなフィクション濃度に切り替わっていくのが異様に面白かった。

僕のnoteをよく読んでくれている方なら、僕が「虚実がわからなくなるもの」や「メタな作りのもの」を表現として好んでいるのはご存知だろうが、そうした嗜好が芽生えたきっかけはこの作品だったと思う。

最近久しく読んでないので、そろそろ読み直したいな。中学の頃の自分ではわからなかった諸々に気づけるだろう。僕が当時、衝撃を受けたものはなんだったのか、その輪郭くらいは掴めるんじゃないだろうか。
ちなみに文庫版の装丁もとっても好き。

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