7月6日〜12日 第10巻 『むかしなじみ』
7月6日
擬古典落語の作り方、みたいな本の発売情報を見かける。
そういえば太田記念美術館で「江戸時代は潮干狩りが庶民に人気の春レジャーだった」という解説を読み、潮干狩りが舞台の落語ってないのかな、もしくは誰か擬古典で作ってないのかな、と思ったのだった。軽く調べると、「さんま火事」の中で仲間連中で潮干狩りに行った時の話がちょっと出てくるらしい。「さんま火事」って名前は知っているがちゃんと聴いたことないなぁ。潮干狩りついでに品川宿で女遊び、みたいな男連中もいたらしいし、何か思いついたらネタっぽく作ってみようかなぁ、とぼんやり考えていた。
あやのさんの夫さんが、俵万智の”「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの”の短歌を、うろ覚えで「『ストロングゼロで2本で結婚しよう』っていう感じの歌」と言ったツイートを見て、にわかに「#ストゼロ2本で結婚短歌」というタグを作って詠んでしまった。
他の人もタグで詠んでいて、僕は割とおめでたいノリだったけど、みんな割と「もっと冷静になれ」という方向性で詠んでいたのが面白かった。僕の短歌にめでたいニュアンスが出た理由は、俵万智側でなく結婚を申し込む男性側にログインしているのもあるだろうし、お酒が弱く自分が結婚するイメージも持っていない人間なのでぽやーんと詠めてしまっているということ、あと「ストロングゼロ」という名前の響きの馬鹿っぽさとかからくるものだろう。
ねむみさんが、ストゼロ短歌において僕は「最大幸福の可能性」の方を詠んでる、というようなことをツイートしていて、ここ数年は普通の短歌においても不幸より幸福に持っていくパターンが多い気がするなぁと思った。
ねむみさんがゲスト出演したとのことで「心の砂地#」というポッドキャストを少し聴く。声のトーンが落ち着いていて、聴き心地がとてもいい番組だ。
雑談・オブ・ザ・デッドのあいつら、なんであんなに早口で喋り倒してたんだ……。
7月7日
午前中はあまり忙しくなくて会社のブログを書いていたが、午後からちょっとバタついた。
夜は大学の先輩と同期がスペースをやっていたのを聴く。同期が先輩を振り回す珍しい構図になっていて、終盤には更にもうひとり同期も加わり、だいぶカオスになっていたのをゲラゲラ笑いながら聴いていた。懐かしい話も繰り広げられていて、あれからもうずいぶんたったんだなぁとしみじみしてから寝る。
7月8日
仕事中にニュースで大変なことになってるのを知り、しかし仕事は普通にやっていて、なんとも不可思議な気分になった。なにかしらの一線が超えられてしまったのかもしれない、と頭ではぼんやり思うが、実感としては結びつかず、ぼんやりとしている。そのまま、仕事を終えた。落ち着かないのでSpotifyで霜降り明星のオールナイトニッポン0のアーカイブを聴いていた。マネーの虎の社長がゲストで来た回が抜群に面白くて、それがかなり救いだった。
7月9日
昼から神保町シアターで『学校の怪談』。もしかしたら幼い頃にテレビで観たかもしれないけど、感覚的には完全な初見。子どもたちのイマジネーションに起因したお化けたちなので、トイレの花子さんもいれば、遊星からの物体X的な怪物もいて、そのごった煮感が楽しい。用務員さんの怪物化した姿が結構ちゃんと怖くて、これは子供のころに見ていたらトラウマになりそう(ということはやはり、今回が初見なのかも)。あと、大人が子どもを平気で放置していくのが、いまの時代だとなさそうな描写だな、と思った。
7月10日
朝から投票へ。僕の家は投票所になっている学校の向かいにあるので、家を出て数分で投票が済んでしまう。
投票証明書をもらってその足で渋谷へ。ユーロライブで渋谷らくごの「はやおきらくご」回を観る。気になっていた柳家小ふねさん、落語に映える声質、古風な佇まいとユーモラスな雰囲気も相まって、独特の可笑しみがある。演目は鈴ヶ森。まだ二つ目になったばかりだから、これは成長を追っていきたいファンが出てくるのもわかる。また見たい。柳亭市寿さんはさらさらっと聴き心地のいい阿武松。昇さんはヤギさん郵便がモチーフの新作で、ファンシーなヤギたちが手紙を食べるときだけリアリズムになるギャップはわかっていても笑ってしまうやつ。パワフルな爆笑派っぽく見える昇さんだけど、新作だとメルヘンな雰囲気があって好き。トリの文吾さんはマクラなしで死神。基本的にはシリアストーンなところを、呪文だけ「いたいのいたいのとんでけ~」とかわいく言うところで笑わせる。呪文を変なフレーズにするだけじゃなくて、それを言うことで周囲からふざけていると思わせるギャグにもなっている。オリジナルのサゲも、「そっちに触れるか!」という意外性もありつつ残酷なオチ。ただちょっと死神がダークすぎる感じもあって、個人的にはそんなに好みじゃないな、とも思う。
ふらふら代々木まで歩いてから、中央・総武線で幕張駅まで行く。一時間弱の間で読みかけだった『聖なるズー』を読み切る。
本屋lighthouseは『雑談・オブ・ザ・デッド』販売記念の柿内正午デーで、店内に入るとレジのところに関口さん、その横の椅子に柿内さんが座っている。今日は店内にいながら柿内さんがリアルタイムで日記を書いていくという試み。Googleドキュメントで更新されていくので、書かれている様子をスマホから確認できる。柿内さんを訪ねてくる人もいて、柿内さんは話しつつ『雑談・オブ・ザ・デッド』をどうにか買ってもらえないかという方向に持っていこうとするも、「いや~、私はゾンビはちょっと……」みたいな感じでかわされていた。
柿内さんがツイートしてた写真が美味しそうだったので、lighthouseと同じ並びの、たがやというラーメン屋へ行き、醬油ラーメンを食べた。食べ始めて気付いたのだが、今日はもう電車に乗る前に松屋のチーズ牛めしを食べていたので、全然お腹が空いていなかったのだ。体は全く欲していないのに、視覚情報だけで食べたくなったパターン。だから太る。
夕方ごろから柿内さんの奥さんもやってきて、お店の奥の部屋で『リトル・モンスターズ』の鑑賞会。久々に観直して、「雑談・オブ・ザ・デッド」で割と記憶違いのまま話していたところあるな~となったりした。あの本の、というか、自分の記憶の当てにならなさ。そして、やはり映画はめちゃくちゃ面白い。
映画館以外の場所で、みんなでゲラゲラ笑いながら映画を観る、というのはものすごく久しぶりな感覚だった。
帰りは、電車で途中まで柿内さん夫婦と一緒。「雑談・オブ・ザ・デッド、どうやったら売れますかねぇ」「やっぱりゾンビがハードルになっているんですかねぇ」と話していたら、奥さんから「そもそも、読書好き・柿内正午の日記本好きと、ゾンビ映画は相性がよくないのでは」という明晰な指摘があり、蒙を啓かれた柿内さんの背筋がどんどん伸びていて(というかちょっと仰け反っていて)面白かった。柿内さん夫婦が乗り換えで電車を降りたあとは、今日lighthouseで買った増村十七『花四段といっしょ』を読む。登場するキャラクターがみんなかわいらしい。
帰ったらもうへとへとで、とっても眠かったがなんとか風呂にだけは入って就寝。
7月11日
昨日の疲れもあり、一日ぼんやり。賞与支給前の面談があったんだけど、割とぼやぼやしながら話していた。今期は社内の給与水準のベースアップのため、みんな昇給するらしく、とりあえず嬉しい。
ポイエティークRADIOの最新回、『リトル・モンスターズ』の感想に頷きつつ聴く。主人公が変わっていく様がヒロイックでないことの良さ。自分のミスで甥っ子が命の危機に直面する中、みっともなく必死に対処したことを契機に、甥っ子のガールフレンドへ、そして園児たちや先生へとケアの射程がじわじわと広がっていく。そしてその時の振る舞いは、彼の独りよがりではなく、むしろ自己を手放した上で姉や先生から学んだものだったりする。そこに爽やかな感動があるのだった。
柿内さんが「雑談・オブ・ザ・デッド」を人に勧めるときの振る舞いは、『リトル・モンスターズ』序盤の、良くない時の主人公と同じなのではないか、と気づいていて面白かった。
7月12日
調子は低調ぎみだけど、仕事が忙しくないので助かっている。会社のブログを書いたり、ちょこっと修正したりするぐらい。
夜は鬼平を読んだ。彦十がメインの回。かつての盗人仲間だった久六と再会した彦十。今や平蔵の密偵としての自負がある彦十は、久六から持ちかけられた盗みの相談に乗ったフリをしていたが、久六の境遇を聞くうちに、段々と本当に盗みへ参加する気持ちになってきて……、という話。老境に差し掛かり体の調子も悪い中で、もうひと働きすることへのときめき、みたいな話は鬼平シリーズだと頻出していて、これは中高年男性を読者のメインターゲット層と想定したことによる特徴だろう。それにしても平蔵とは長きにわたっての仲である彦十までもぐらついてしまうのは、老いによってそんな心境になってしまうのか……とちょい切ない。こちらも彦十と昔ながらの仲であるおまさ・五郎蔵が見張りを務め、その精神的プレッシャーのしんどい感じも漂っている。ちょっと密偵って自分がやるとなると気が重くなりそうな仕事だな、と読んでいて思う。
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