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#恋人を喪った安田短歌 アンソロジーpart2(Ryota選)「声を最初に忘れる」

映画『シン・ゴジラ』の登場人物・安田龍彦がゴジラの暴走により恋人を喪ったという妄想の設定で詠まれた短歌のアンソロジーの二つ目です。

「がんばって。家で待ってる」
逃げろって言えばよかった。言っていたなら、

(菜漓)



 でんぱのとどかないばしょにおかけになっげんざいつかわでんげんがはい

(岡本真帆) 



龍の食べ残しの資料を頂く甘く煮た人参が嫌いで

(菊池依々子) 



意味もなく身に染みている形式がこころのうちの焔を鎮め

(神山六人)



 終局は君の目をして視ていよう浄化宣言革命前夜

(ヒロセ) 



朝焼けがめちゃくちゃ綺麗だったから腑に落ちたんだ もういない、って

(高野アオ) 


肌の皺髪の長さに爪の先けれど骨だけ知り得なかった

(かりあしな)



 見た目より素直と褒めた声憶い
貶されていい忘れたと云ふ

(海老の人) 


電話帳すべる指先無意識でおやすみを言うひとがいないね

(ずんだ) 


聞いてないのに花の名を教えたりするからさほら、定着してる

(岡本真帆)


 燃え尽きた11月なら捨ててゆけ「声を最初に忘れる」という

(ヒロセ) 


塵積もる夜の東京駅に立つ払い戻せない切符二枚と

(樋辻翠) 


理性的であろうと努めてあの夜にMacBookを一つ壊した

(ひくたす) 


ありふれて記録にできないものたちをこぼさないでねなくさないでね

(ずんだ) 



「安田くん寝癖ついてる」君の手がひどくつめたく白かったこと

(岡本真帆)

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