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2月21日〜3月3日 第8巻 『用心棒』

2月21日

話題になっているジャンプの落語マンガ「あかね噺」、第1話が公式サイトで読めるようになっていたのでチェック。冒頭、風景は浅草だけれど、その中で店を構えるらくご喫茶は神保町のらくごカフェがモチーフになっていて、やはり落語好きな目線で見ると情報量が多い。「落語は古典でもアレンジOK」ということを読者に説明しつつ物語に落とし込む描写が、「キャラクターオリジナルの演出を加える」とかではなく、「芝浜で主人公が財布を拾うシーンをカットするか否か」という、実際のリアリティに即したバランスなのが渋い。
落語マンガというと、『昭和元禄落語心中』があって業界も恩恵を受けたが、ここまでのメジャー媒体で現代を舞台にした落語家ものとなると、業界的にも大きな話題になりそう。

仕事帰りに、文庫化(サイズは新書版だが)された雪舟えま『たんぽるぽる』を購入。僕は気づいたら長いことちょっとずつ短歌を詠んできたわけだが、全然読む方はやってこなかった。今年はいろんな歌集を読んで、ポエジーを補充し、改めてイチから短歌に臨んでみたいという気持ちだ。

2月22日

隣室の目覚まし時計がずっと鳴っている音がコチラに聞こえてきて、早朝に目が覚めてしまった。隣人は全然起きず、ずっと目覚ましが鳴っていた。

誕生日まで1ヶ月を切ったので、Amazonの欲しい物リストを作った。こちらも今年のテーマである歌集をメインにしたラインナップ。頼むぜフォロワーさん。

今日はもう1人のライターさんが休み。仕事量が多いところに、そのライターさんの案件でハプニングがあったりして結構バタバタだった。

録画していた『鎌倉殿の13人』を見る。なんか、あんまり人間関係とかが頭に入っていないけど、ぼんやり眺めていてもなんとなくわかる。ティモンディ高岸が、全然普段のままの高岸ではあるんだけど、大らかな話し方がキャラクターにマッチしていてとてもいいキャスティング。ここからもっと活躍してほしい。

2月23日

週の真ん中の祝日。ここんところ忙しかったので非常にありがたい。しかし、またもや早朝に目が覚めてしまい、昼頃まで二度寝するも、やはり眠たいままだった。夕方から出かけて軽く本屋を眺めたりするも、ずーっとぼんやりした感触。

夜は『竜馬の妻とその夫と愛人』を見る。三谷幸喜脚本・市川準監督作なので、コメディではあるんだけど映像はなんとも滋味深い雰囲気。亡き坂本竜馬の面影を引きずったままのおりょう(鈴木京香)が、竜馬ワナビーの男(江口洋介)に入れ込んでしまう切なさ。今のおりょうの夫を演じる木梨憲武がずっと良かった。これは木梨憲武じゃないとだめな役だ。

2月24日

ロシアのウクライナ侵攻が始まって、Twitter上や、友達とのLINEがざわついている。一方で仕事も忙しいのが続いていて、感情の置き場が定まらずもやもやとしている。
それでいて、うたの日のお題は「温泉」で、だから温泉がテーマの短歌を詠んだ。

そりゃ足湯あったら入るでしょそこで別れ話もやったらいいよ(蜂谷希一)

全部がバラけている。

2月25日

作業中に聴いた『蛙亭のトノサマラジオ』が中野くんの結婚SPで、パートナーのえりちゃん、弟の青空くんが登場する、とても多幸感のある回でよかった。もちろん夫婦のなれそめ的なくだりもあるのだが、個人的には「以前友人の結婚式スピーチをアドリブでやろうとして失敗した」青空くんが、兄へのお祝いスピーチでリベンジする場面が微笑ましい。中野くんについて唯一の良いエピソードが、「兄が描いてくれた偽ワンピースみたいな漫画を読むのが楽しみだった」という話で、「偽ワンピース」だと自覚しながらも楽しみにするという、そこにグッとくるのだった。

アトロクが今度、短歌特集をやるらしい。落語にしろ短歌にしろ、中学あたりで興味を持ってその頃はまだそこまでブームとなってなかったものに、ここ数年でぐんぐんと流行の風が吹いていてとても楽しい。『妻、小学生になる。』を見たら、喬太郎師匠の存在感が増す展開になってきて、それも楽しい。

2月26日

当日券があるということだったので、昼からテアトロコントへ。前回は今泉監督の「市民プール」を見に来たので、2017年以来の鑑賞。竹内ズ・明日のアー・やさしいズという座組で楽しく観る。竹内ズのある楽曲の強さを的確に使った「交通整理」、どうやったらそんなことが思いつくのか意味不明な明日のアー「連続テレビ小説『お日さん』」、ものすごい安定感だったやさしいズ「タバコ」「ギャンブル」が特に好きだった。

移動中に谷頭和希『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』を読み終える。建築学や人類学に半ば自覚的にこじつけつつ、ドン・キホーテの面白さを解読していく一冊。これ読んでから渋谷に行っても荻窪に行ってもドン・キホーテの佇まいが目に留まってしまったので、この本の狙いは僕においてはしっかり達成された。

で、荻窪へはTitleへ。「木下龍也書店」の企画を眺めつつ、欲しい物リストに入れ忘れていた小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』を購入。ついでにカタリココ文庫シリーズ最新刊の『見えているパチリ!』もゲットして帰宅した。

2月27日

昼間から池袋へ出て、喫茶店でちょっと読書してから、レンタルスペースへ行く。

今日は柿内さんとの『雑談・オブ・ザ・デッド』の録音。対面での収録は初めてだ。僕が先に着いたので、DVDプレーヤーの準備などをする。今回はロメロ以前のゾンビ映画を見てそのままの流れで収録するぞ、という試みで、柿内さん私物の「ホラー映画パーフェクトコレクション ゾンビの世界 リビング・デッド DVD10枚組」という、権利が切れた映画をまとめて安く売っている廉価版の中から映画を2本観る。で、詳しくはポッドキャストの中でも語られているはずだが、これがロメロ以降の「ゾンビ」というものと明らかに異質な様相を呈していて、観た直後の僕らはかなり面食らってしまった。そのあとすぐの録音では、柿内さんは喋りすぎているし、僕は喋ることが全然まとまらないという、異常事態になっていて、これはなんともスゴい最終回になったと思う。「権利が切れたものをまとめて叩き売る廉価版」の価値を再確認した。

ポッドキャスト収録後に柿内さんと話していて、前日に読んだ『ドンキにはなぜペンギンがいるのか』を踏まえて、「ロメロは『ゾンビ』を居抜きしたのだ!」という着想が降臨して、二人して「面白いなぁ」と言い合って、それからZINE作りの打ち合わせをして解散した。

2月28日

通例だと月末はそんなに忙しくないはずだが、なんだかあれこれと案件が入ってきて、仕事をさばいている間に1日が終わった。月末締めの終礼があって帰るのも遅かったので、ちょっと英語の勉強をやって、ボーっとしていたら一日が終わる。

とりあえず2月はうたの日に毎日投稿できたのが偉かった。素朴なやつでいいので、とりあえず毎日1首は作る週間を作りつつ、歌集を読んでいって詩情を養っていきたい。
元来、僕の短歌は非日常へズラした着想が多く、悪く言えば「大喜利を31音にまとめました」という手癖に陥りがちだ。例えば、題詠についてもお題を正面から受け取るのではなく、まず題自体をメタに捉える、というのを初手でやってしまうような。そうやって意味をスライドさせるのではなく、真正面から日常に深く入って言葉で引き上げていくのに必要な表現力や語彙が全然足りてないんだよな。そこをもうちょっとなんとかしていきたい。

3月1日

あっという間に3月になってしまった。今月は色々楽しみな予定もあるし、文フリに向けた作業も本格化するから、割と忙しくなるのではなかろうか。

で、仕事の方はここんところ立て続けにやってきていた案件が一旦途切れて、久々に帰り際あたりはゆったりした時間が流れていた。ちょっとバタバタしてきているけど、3月中はみんなそれぞれ有給をとって適度に休もうね、という話をチーム内でする。

帰宅して、そろそろ溜まっている録画も観ていかねばと思い、日本映画専門チャンネルの岩井秀人特集で録画していた『投げられやすい石』を観た。美大時代、「大学で5年に1人の天才だった」佐藤が、失踪していた2年間を経て、変わり果てた姿で友人・山田の前に現れる……という話。冒頭、つやつやしていた天才・佐藤が、2年後にはいたたまれない感じで戻ってきて、岩井秀人が演じるそのあやうく狂気もありながら物悲しい佇まいが、目を引く・見ていられないを同時に誘引する感じ。岩井さんは「いきなり本読み!」「なむはむはだむ」の印象から、演出家としての印象の方が強かったが、演者としてもすごいなぁ。

3月2日

今日は比較的仕事が忙しくなくて、合間で「雑談・オブ・ザ・デッド」のZINEの前書きを書き進めた。今まで読んできた様々な前書きを思い出しながら、こんな感じかなぁとちょっとずつ組み立てていく。後書きは柿内さん担当なのでいい感じに締めてくれるだろうと踏んでいるから、とりあえず前説として主旨説明に徹すればいいかな。原稿整理にもとりかかからねば。

帰宅後は『岬の兄妹』を観る。決して予算的には安いラインで作られているんだろうけど、なかなかいたたまれないストーリーと、凄まじい役者の演技、撮り方にも様々な工夫があって見応え十分だった。セックスしている相手がワンカット中で切り替わるような描写とか、この規模の映画でやってくると思わないから意表を突かれた。

3月3日

今日も比較的暇だったので、ちょっとゾンビ対談の原稿整理を進める。どれくらいの精度でやるのがいいのか、まだあんまり掴めていない。それにしても『セーラーゾンビ』回って一番長い回だとはいえ、文字起こし24000字を超えているのか。全体、どのくらいのボリュームになるのかな。10万字超えるのかしら。

帰りの電車で鬼平8巻、『用心棒』を読む。浪人者の高木軍兵衛は、大きな身体にもじゃもじゃとたくわえた顎髭によって、見るからに強そうな風体をしているが、実は剣の腕は立たず喧嘩も弱い見掛け倒しの男。現在は強いふりをしながら、味噌問屋の用心棒に収まっている。しかし、かつての知人から秘密を握られ、脅されてしまい……、という話。自分の身に起きた悲劇を父に起こったことのように語り、弱い中身を強そうな外見で隠している軍兵衛はしかし、自らを「弱いさむらい」だと認め、平蔵に(それとは知らず)助けを求める。軍兵衛が心境を吐露する場面がしみじみと切ない。また、今回はちょいちょいある平蔵が身分を隠しているパターンの話でもある。平蔵が自らを独り身の浪人・木村と名乗るのを信じ、軍兵衛が「佐野蔵の主人が近いうちに、小さな家を心配してくれるというから、いっしょに住んでください。それがいい。そうだ、それがいい」と、同居を提案するくだりが可笑しい。

夜は何か映画を観ようかなーと思い、録画している中から『ニューヨーク1997』を再生したのだけど、思ったよりトーンが淡々としていて、ほんのり眠い時に見るのはつらいなと思い、途中で切り上げる。続きは明日にでも観よう。

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