#恋人を喪った安田短歌 連作part3「銀河鉄道とその夜」
生まれる時は別々で死ぬときも別々ならばなぜ出会うのか
痕跡もすべて燃え尽き新しいシーツが意味もなくただ白い
体重が増減しない輪郭を抱き留めている朝が来るまで
「復興に向かっています」向かうことばかり急かされスーツを着込む
自然治癒力は心に備わってないかもしれず雨がつめたい
「さよならと言えた分だけ幸福さ」不幸を積めて電車は進む
東京 東京と2度言う声を聞いて泣き崩れる人を視た
定型が崩れた町を定型に戻す合間も亡き人を想っている
同僚も誰かを亡くしお互いに触れないままで会議は終わる
お前だけじゃないだろって言われても哀しみは互換性に乏しい
よく笑う子だったねって言う人が全員泣いているのは何故か
壊滅の直後以来に満点の星が眩しく夜だと気付く
君が帰るとき迷いませんように街に光を灯す仕事を
銀河鉄道が満席だったなら終電さえも逃せばいいよ
君は優しいから銀河鉄道の中でも席を譲るのだろう
銀河鉄道の遅延を望むけど線路に入る勇気がなくて
想い人専用車両満たされて定時に銀河鉄道は発つ
(その夜は東京中の人々が星空に手を振っていたとか)
振った手を下げる契機がわからない 涙を拭うのにも使えず
喪っていくものばかり増えていく人生だろう それの始まり
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