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6月9日~6月15日 第10巻 『犬神の権三』

6月9日

講談社文庫の対象作品についてる応募券を集めて送ると文芸誌「群像」が1年分当たる、というキャンペーンをやっていて、文芸誌を1年間じっくり読む企画、というのはどうかと思いついた。毎回、公式サイトからその号の目次をコピペしてきて、作品を読んだらその目次の箇所に感想や読んだその日の出来事などを記録していく、というようなイメージ。やりたいけど、やるためには「群像」1年分が当たらなければならない。いや、当たらずとも自分で買えばいいんだけど、やはり「1年分が当たったからやる」という呑気さがほしい。当たらないかな。

『代わりに読む人0 創刊準備号』を読了。「準備」という切り口で、小説家から学者、お菓子屋さんまで、とにかく面白いテキストが並んでいてすごい。名前も素性も知らない人のめちゃくちゃ面白い文章が載っているというのは、「代わりに読む人」という雑誌自体への信頼度と期待値を上げる。そういう意味でも優れた「創刊準備」だ。わかしょさんの小説を読みながら、「詳細がわからないイベントへの準備を行なう不安と高揚ってあるよな~」と考えていて、僕の最近のそれは文学フリマへの出店準備だった。少なくとも自分の範囲では、当日になって「これが足りない!」ということもなく、思ったよりすんなり行ってくれたのでよかった。僕は心配性なところがあって、前日までにそわそわしてしまって、何度も荷物チェックをしないと落ち着かないところがある。心配は大体杞憂に終わるんだけど、それでも次に何か用事がある時にはまた心配事が頭をよぎってしまって、準備疲れというか心配疲れになることも多く、なんかもうちょっとスマートにやりたいものだな、といつも思う。

6月10日

古本屋で「ねむらない樹」のバックナンバーの持っていない分を買ったので、下半期はこれらをじっくり読みながら、短歌の知見を深めていきたい。何か新しい企画も始めたいけど、今のところノーアイデア。

夜は『飛行士の妻』を観ていた。エリック・ロメールの作品はこれが初見。中盤、主人公が恋人の元カレを尾行し始めるあたりからいい感じに面白くなる。見つからないように追いかけるサスペンスと、偶然知り合った女の子と距離が縮まっていく楽しさを同時並行でサラサラっと描いている手際の良さ。そこから終盤、一室での長い長い痴話喧嘩、さらにおまけでもう一展開あって、ぼんやり眺めていたけど結構楽しんでしまった。ロメールは他の作品も録画してあるから順番に観ていこう。

6月11日

昼過ぎに下北沢B&Bへ行って、「代わりに読む人0」のフェアを覗きに行く。『雑談・オブ・ザ・デッド』も並べてあってありがたい。オルタナ旧市街さんの『一般』とオカメサブレを買って、渋谷へ移動。

久々の渋谷らくごは真打4人の回。特に立川志ら乃師匠の『鰻の幇間』が印象に残った。普通なら連れていかれた鰻屋の酷さに文句を言う展開になっていくのだけど、志ら乃演出では鰻がめちゃめちゃ美味しいので、店へ怒りの矛先が向かわない。代わりに、短時間で喜んだり悲しんだり怒ったりする、幇間の感情の乱高下によって物語のボルテージが上がっていく。旦那が祝儀を置いていかなかったと聞いてガッカリするものの、「鰻をご馳走になっただけでもありがたいのに、祝儀がないことに幻滅するなんて、自分がイヤになった」と語る幇間はかなり善人だ。それでいて独学で幇間持ちになった自負や、生きていくための打算もあり、だからこそ置かれた状況に心が散り散りに乱れてしまう。感情の描き方が細やかなんだけど、オリジナルの落ちはそれを吹っ飛ばしてナンセンス・ファンタジーだったのが可笑しかった。感情がぐるぐるし過ぎて神がかってしまった、という感じ。ちょっと町田康の作品のようなテイストも感じた。

夜はオカメサブレをかじりながら読みかけの本を読み終える。Twitterを見たら、PINFUさんが僕の歌集についてツイートしてくれていて嬉しかった。人によってピックアップしてくれる歌が異なるのは、そりゃ当たり前なんだけど、楽しいことだ。

もりたがスペースをやっていて、それに合流。西田さん・神無さんもやってきてあれこれ雑談する。西田さんが更に延長スペースをやっていて、そこでランダムワードを作れるアプリで出てきた変な言葉を互いに読み合ってはゲラゲラ笑うだけの30分弱をやったので、随分寝るのが遅くなってしまった。

6月12日

夜更かしの影響でずっとねむい。ちょっと出かけようと思ったが雨が降ってきたので、部屋に帰ってダラダラと『トップガン』を観ていた。トム・クルーズ若いなぁと思ったら20代なのか。意外と恋愛パートが長いんだな、とか、空中戦の状況がよくわかんないなぁ、と眠い頭でぼやぼや思っていた。

夕方から「文化系トークラジオLife」の配信を観る。会場となっている斉藤さんの自宅が壁一面本棚で素晴らしい。こういうのを観ると自分の蔵書量や積読なんて大したことないなと思う。山本さんが「雑談・オブ・ザ・デッド」にも言及してくれてた。

6月13日

今日も今日とてとびきり眠い。仕事が忙しくないのが幸い。

武塙さん・岸波さんの『往復書簡 きっとどこかへ流れつく』を読了。読むこと・書くことや、怖いもの、物事への取り組み方・続け方など、日常のささいなことへゆるゆると滑りながら(上滑りではなく、気ままなシュプールの描かれ方)、やり取りされる手紙の良さ。最近、他にも往復書簡を数冊読んだけど、どれも、書簡のやりとりの間に横たわっている時間ごと、ふんわりと織り込まれている感触があった。

夜はあやのさんとスペースで1時間ほど話す。あやのさんが幼馴染に抱いている巨大感情の話。

6月14日

『挟み撃ち』を読み始めた。ゴーゴリの話へ行きつ戻りつ、時に脱線したり、というシームレスな語り口は、確かに友田さんの『『百年の孤独』を代わりに読む』と共通の読み応えだなと思う。あの書き口の源流のひとつはここか。

仕事帰りに『ファンダムエコノミー入門』を購入。店頭で見つけたら想定よりひとまわりデカかった。黒鳥社の本からしかビジネス/テクノロジー/政治経済絡みの情報を得ていない説があるな、俺。

夜は日本映画専門チャンネルでだいぶ前に録画していた舞台『ヒッキー・カンクーントルネード』を観ていた。15年引きこもっている長男、その唯一の理解者である妹、息子を心配し外に出てほしい母親。ある日、母親が息子の引きこもりを解決できるらしいときき、「出張お兄さん」を連れてくるが……、という話。家族自体はお互い愛情を持っているんだけど、だからこそ状況は停滞しているし、状況が変化する事への恐れもある。妹に彼氏ができたことを知った兄が、「貸したビデオを早く返せ」とツラく当たるシーンは、情けなく痛々しいんだけど、兄からすると彼の世界が変化してしまうことへの切実な反応でもあり、なんとも胸が締め付けられる。感情のぶつかり合いなシーンもあるんだけど、希望を持たせつつさらっと終わるので、余韻はすがすがしかった。それにしても岩井秀人さんっていい役者だなぁ。続編も録画してあるので近々観よう。

6月15日

通勤電車で鬼平を読む。『犬神の権三』。久々に江戸にやってきた盗賊・権三郎は、運悪く与力と出くわしてしまい捕縛される。ところが、権三郎は役宅内で発生した火事騒ぎに乗じて牢を抜け出し、どこかへ逃げてしまった。平蔵は役宅の構造を知っている何者かが、権三郎の脱獄を手引きしたのではないかと考えて……、という話。実は権三郎を助けたのは、以前登場した雨引の文五郎で、元盗人でありながら今は平蔵の密偵になっている。油断していると以前登場したキャラがひょっこり登場するので鬼平シリーズは油断ならない。
権三郎はかつて文五郎と共に仕事をした際、盗んだ金額をごまかし300両も多めにくすねていた。それを知った文五郎が復讐するためにあえて自分を逃がしたのではないか、と思っている。しかし実は、文五郎にとっては、病床にあった妻を手厚く看取ってくれた恩返しのつもりだった。アンジャッシュのコント状態だ。やられる前にやってやろうと思っている権三郎は文五郎を襲撃しようとするし、文五郎は責任をとって自害しちゃうしでなんともやりきれない。文五郎、いいキャラクターだからもっと生きてて活躍できただろうに、こういうところでスパっと退場させちゃうのが鬼平シリーズの潔さでもある。

BTSがグループでの活動停止報道があり、今後、当分はソロでの活動に力を入れるらしい。調べたら、韓国では徴兵もあるから、そこら辺の諸々の事情もあるのかしら。昨日買った『ファンダムエコノミー入門』がちょうどBTSのファンダムに言及している本なので、早めに読んでおきたい。

僕は池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題』の表紙ウォッチャーなのだけど、ふと調べたら最新刊が出ていて、パート13では池上さんが数字を指さしているポーズだった。これはパート11と同じポーズだけど、写真は別のものを使っている。個人的にはやはりパート6~9の、池上さんが数字を手に持っているパターンのやつが好き。パート6では「6」の下の丸いところを鷲掴みしている。パート7の「7」を下からサンドイッチ持つみたいな手つきで持っているのも好き。パート8は「8」を下から優しく支える形。パート9の「9」の持ち方は変。「数字を手に持っているていで写真を撮る行為」を面白がっているだけなので、本文は1文字も読んだことがない。パート10からは池上さんが数字を浮かばせているような「ハンドパワー期」(僕命名)に入っているので、ぜひパート14からは池上さんにふたたび数字を手に掴んでほしい。フォークとナイフを持つみたいに、両手でがしっと。

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