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5月4日~9日 第20巻 『おしま金三郎』

5月4日

BOOKOFFの20%オフのセールなので、昼前から家を出て最寄りの店舗に行き、歌集1冊、小説2冊を買った。電車で荻窪へ出る。読みかけていた三品輝起『すべての雑貨』を読了。雑貨論的な文章も面白いが、色々な人との思い出話も印象的で、特に父親について回想した文章と、レゴ仲間だった友人とのエピソードがよかった。Titleに立ち寄りつつfuzkue西荻窪を覗いたが混んでそうなので立ち寄るのは断念し、吉祥寺までぶらぶら歩く。

外はすっかり初夏。途中、鳥の糞が落ちてきてシャツに付いた。鳥の糞が直撃したの人生初かもしれない。少し歩いたところに公園があったので、そこの公衆トイレでシャツに石鹸を付けて濯ぎ洗いをする。少し絞って羽織ると、日差しが強いのもあってか割とすぐに乾いた。吉祥寺について本屋を覗き、下北沢まで井の頭線で出てB&Bに寄って、天気がいいので、ボーナストラックのベンチに座って、暗くなるまで群像を読み進めた。石田夏穂『我が手の太陽』は「溶接」をテーマに職人のプライドと慢心、下請け的な立場への苛立ちなどを丹念に描いていた。主人公にはこんなに高温度の中で作業をやっているんだという自負がありつつ、しかし仕事中はアーク光を直視できないため、自分の手元を実際に見ることなく出来上がってしまうところに不確かさが残る、「溶接作業」というモチーフの面白さもある。

5月5日

溜まっていた日記を書く。

夕方から編境に行くつもりだったが、店番予定だった柿内さんが急遽店を開けられなくなったとのことで、一日暇になってしまって、とりあえず外にも出てみたが軽く池袋をうろうろして帰ってきてしまった。群像の最新号が届いていた。

夜は文フリの気になるブースを紹介したり、本の話をしたりするスペースをやる。カタログを見ると、ノーチェックだった面白そうなブースが見つかり、散財の予感。自分のスペース後、菜漓さんがお友達とスペースをやっていたので、そっちを聴いてから寝る。今回は参加せず。

5月6日

午前中は配信の中から『映画大好きポンポさん』を流し見。映画制作の肝を撮ることではなく、素材を選び他を切り捨てる編集作業に置いたのは面白い一方、他を犠牲にしたのだからこれをやり抜かねば、という順序が入れ替わると「優れた作品を作るためには他を犠牲にしても良い」になりかねないので、割と危ういラインすれすれの話をやっているな、とも思う。

夕方あたりから外へ出る。またもボーナストラック近くのベンチで少し本を読んでから、新代田FEVERでトリプルファイヤーのワンマンへ。フェス的な音楽イベントはちょいちょい足を運んだけど、バンドのワンマンライブは随分久しぶりな気がする。ライブで聴くトリプルファイヤーは「中毒性」なんて生易しい言葉では足りないほどの凄みがあり、ビール飲んで2時間弱踊りっぱなしになって汗だく。新曲はどれもキャッチーさが増している気がして、新しい音源も早く出してほしい。
帰りの電車で今村夏子『木になった亜沙』を読了。三篇とも不穏で落ち着かせてくれない。「的になった七未」を読んで、子どもの頃に感じた、不意に暴力性を発動させる大人の不気味さを思い出す。

5月7日

一日天気が悪いらしいので、ほぼ寝転がってぼんやり過ごしていた。録画していた『ドライブ・マイ・カー』を観る。岡田将生の内面が見えそうで見えない気味の悪さ。演じ合っている人たちの間だけで生じている”何か”の空気感が映像的に捉えられている感触もあって、家で3時間観る映画としては集中が途切れず面白く観れたけど、得体の知れなさ・消化しきれなさも残る。ぬるっとゴールデンウィークが終わる。

5月8日

今日から仕事再開。連休前に病欠だったもう一人のライターさんも復帰。体調崩すわ、ペットも病気になるわ、夫婦仲が悪くなるわで大変なゴールデンウィークだったらしい。仕事も割と分量多くて、あれこれ対応していたら一日が終わった。

仕事帰り、レイトショーに間に合いそうだったので『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』を観た。横スクロールや空中アクション、3次元的カーチェイスなど、ゲーム内の動きの快楽をアニメーションに落とし込んでいて、アトラクション的な楽しさは充分。ただ、ストーリー面が割とベタで、例えば『LEGOムービー』等と比べると、「この題材ならではの要素が物語面では薄いな~」という感想。ゲームを通っていない人にはご都合主義に見えそうなところも多く、逆にゲームを知っている人はあれを使って勝つんだろうなと読めてしまって意外性はない。マリオ楽曲以外の既存ポップスの積極は、ゲーム発売当時の時代性を反映したんだろうけど、世代じゃない観客にとっては他の文脈で再三聴いていてフレッシュさに欠けるところもあり、ルックのバツグンな楽しさに比べると他はそれほど……という気持ち。

帰宅後、だらだらテレビ見たり(激レアさんの赤松利市回が面白かった、作品読みたい)、だらだらTwitterしてたらすっかり夜更かし。

5月9日

仕事が15時前には落ち着いて夕方からは暇め。求人関連の資格の更新試験を来月末までに受けないといけないので、問題集をちょこちょこやる。原稿制作の際にあまり関係ないところで結構忘れているところがあるな。

帰宅後、鬼平。元同心・松波金三郎が同心・小柳を訪れた。金三郎は過去に因縁のあった女賊・おしまから「小柳の命を狙っている盗賊がいる」という話を聞き、小柳にそれを告げに来たのだった……という話。盗賊から足を洗った人物が登場するエピソードは多いが、元・同心というキャラが登場する話って過去になかったかも。話の出だし、シリーズ初登場の男女の会話がどこへ向かっているのかと思うと急に「小柳安五郎が殺されても、いいのかえ?」というセリフが飛び出して、「え!小柳ピンチの回なの!?」となったので、シリーズ読者向けにはバッチリの掴み。
実は金三郎が同心を辞めることになった理由はおしまにあった。かつて、盗賊・牛尾の又平一味を捕らえるにあたり、金三郎はおしまに又平を裏切らせ、盗人宿の情報を得た。その交換条件として、おしまは金三郎に抱いてくれるよう要求する。「同心が女賊と同衾した」となれば松波の弱味になるから、ということらしい(結局明るみに出て、金三郎は辞職)。ところが関係を続けるうちにおしまの方がどんどんと金三郎に執着を見せて、事態はややこしいことになっていく。この辺り、割と男が女に執着する話が多い中、女性から男への執着が話を掻き回すパターンは珍しく、話の膨らませ方が面白い。その執念に負けて、平蔵から許しを得られるかもしれないチャンスを棒に振っておしまと夫婦になってしまう金三郎と、妻子を亡くしてから同心の仕事一筋で生きている小柳の対比もあり、結構面白く読めた一篇。

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