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10月30日〜11月7日 第6巻 『礼金二百両』

10月30日

神保町ブックフリマへ行く。昨年参加したときのことを踏まえて、おそらく一番買いこむ可能性が高い亜紀書房からスタート。で、さっそく3冊購入してしまう。繁延あづさ『山と獣と肉と皮』は、ちょうど僕が内澤旬子『飼い喰い』を読んでいたころに存在を知って似たテーマだから気になっていたもの。ティム・インゴルド『人類学とは何か』は改めて入門的な文献にあたりたいと思っていたので買った。柿内さんが最近読んで話題にしていた中村昇『落語ー哲学』も購入。パラっと巻末を見ると落語本についての案内が載っているぽくて、落語のポリフォニー性について書かれた書籍の件とかも書いてあるっぽかった。

いくらなんでもしょっぱなから買いすぎだろ、と思い、白水社、青土社、国書刊行会は物欲を耐えたが、青弓社でまったく存在を知らなかった横山泰子『妖怪手品の時代』がいい感じに面白そうだったので、これは衝動買い。

それからクオンのブースへ。チェッコリには初めて行ったんだけどいい雰囲気のお店。前に山本さんが勧めていたチャン・リュジン『仕事の喜びと哀しみ』を買い、他にも本を見ていたらスタッフさんに話しかけられる。「パク・ミンギュとか好きなんですけど、近いラインの作品でオススメありますか?」と聞いたらイ・ギホ『原州通信』を紹介されて、ものすごく面白そうにレコメンドされたのでそれもレジに持っていく。

それから彩流社のブースで半額になっていた波戸岡景太『映画原作派のためのアダプテーション入門』も購入してフィニッシュ。1日で7冊購入。個人的にはかなりの爆買いだ。

本が増える一方で読了が無いのはいかんなぁという気持ちになり、生井英考『興亡の世界史 空の帝国 アメリカの20世紀』は読み終えた。こういう文化・表象を絡めた歴史は面白いなと思いながら、世界史が全然頭に入っていないな、ということも実感する。同じ著者の『ジャングル・クルーズにうってつけの日』も積みっぱなしなので近々読もう。

夜は先輩とLINE通話飲みをしていて3時間くらい喋っていた。先輩周辺の人々のここ最近のエピソードが面白くて、ゲラゲラ笑っていたのでほっぺたの筋肉が痛くなった。

10月31日

前日飲んだのを引きずって、頭はぼんやりしている。しかし、よく考えたらほろよいの白いサワー味をひと缶飲んだだけだった。

選挙の投票をささっと終わらせて、昼から回転寿司でたっぷり喰い、夜は映画館へ。上映の時間までコメダ珈琲で時間をつぶし、昨日買った『原州通信』を読み終えてしまう。幼い頃に何気なくついた嘘、というかちょっと盛って話したことが、大人になってから回りまわってかなり厄介な問題を巻き起こす。さびしくてむなしくて、しかしユーモラスでもありナイスな短編。

夜は『黄龍の村』。なんとなく事前情報の雰囲気から、こういう展開になるのかしら…とは思っていたのでサプライズ度は薄かったけど、登場人物のキャラ立ちがよくて楽しく観た。阪元監督にはもっと予算をあげてもらって、アクションエンタメの面白いやつをどんどこ撮ってほしい。

映画館を出たら京王線で事件が起きていて、とりあえず路線を使っている友達は大丈夫だったとはいえ、なんとも気持ちがざわざわして落ち着かない。映画館で買った『ベイビーわるきゅーれ』パンフレット付録のドラマCDを聴いて逃避する。駄話のクオリティの高さがすごい。ちょっと気分が落ち着いたので、眠る。

11月1日

11月に入っても仕事は何かしら続けて入ってくるので、バタバタとさばいているうちに夜になった。

おつかいを頼まれていた本を郵送するため、コンビニにレターパックを買いに行ったのだが、「レターパックは切手などど同じで、レジの内側に置いてあるから、店員さんに声をかけて出してもらわなければならない」と知らなかったのでいくつかコンビニを回っては「店頭に無いなぁ…」となっていた。何件か回ってから、レジ中にあることを知り、家の最寄りのコンビニで店員さんに「レターパックありますか?」と聞いたらすぐ買えた。
歩き回っていた間に、最近サボり気味だったラジオ英会話を聴いていた。ちょっとずつ聞き取れる英語の分量が増えてきた気がするが、どうだろうか。TOEICに向けての勉強とか、そろそろちゃんとやりたい。

11月2日

友達から頼まれていた本は無事発送。今日は久々に仕事が忙しくない時間帯が長めにあったので、ちょっとゆったりした気持ちではいた。

武塙さんの『驟雨とビール』を読み終える。今年の6月〜8月の日記。ついこの前だけど、もう随分前にも感じる。緊急事態宣言下でもオリンピックは既定路線で遂行される、みたいなもやつきのあった時間の中でも、美味しいご飯を食べたり、面白い映画を観たり、そういう時間は確かに合ったよね、ということが書き込まれていて良い。ふかわりょうについての記述が好き。

彼が書く文章もとても好きで、とにかく私は普段は忘れていることもあるけれどふとした時にとてもふかわりょうのことが大好きだ。久しぶりにJ-WAVEで聴くふかわりょうの声は懐かしかった。夜は、二日めのカレー。いちごかき氷を食べて寝る。

こういう感じはかっちり文章を書くぞ、と構えて書いたものにはあんまり出てこない気がする。日記という、日々のつらつらとした記述だからこそ捕まえられる感覚。

11月3日

昼からオペラシティアートギャラリーに行くも、和田誠展には結構な行列ができていて、今から並ぶのしんどいなぁと思い断念。とりあえず昼食がてら初台のfuzkueに行く。お味噌汁の定食は野菜がたくさんで体に優しい感じがする。波戸岡景太『映画原作派のためのアダプテーション入門』を読み切ってしまう。原作準拠と裏切りが混在する間に生まれるのがアダプテーション、という考え方なのか、と感心した。『インヒアレント・ヴァイス』を見直したくなる。

もう一度オペラシティに戻るも和田誠展はやはり混んでいて断念。ICCが当日でも入れたので、ぐるっとデジタルアートを観てから帰る。

夜は『ペット・セメタリー』89年版。引っ越し先の家の目の前であんなにがんがんトラックが走っていたら最悪だ。死体が甦るという意味では広義のゾンビなのかもしれないが、その死体は明確に悪魔的な何かに乗っ取られていて、特に幼児の異質さが気味悪い。やられて死ぬ間際の言葉が「ずるい」なのもイヤな感じでよかった。

11月4日

久々に仕事でミスがあって、これはヒューマンエラーとして今後も起きうるからこうしましょうという話をして、もう昼まででドッと疲れた。

夜はラジオ英会話、英会話定番レシピを一回分ずつやって、ズボラストレッチの筋トレメニューをやって、ミルハウザーの『ホーム・ラン』の短編と、『USO』をちょっと読む。『USO』はタイトル通り嘘をテーマにしたエッセイをまとめた本なんだけど、思ったより重めのテキストが並んでいた。

11月5日

ズボラストレッチのせいか、めちゃくちゃ背中が筋肉痛でしんどいレベル。グダーッとして過ごす。
コロナ禍以降飲み会とかもなく、新卒などと交流する機会もなかったから、ということでオフィスで懇親会が開かれる。小分けにされたオードブルを自席で食べ、大きいスクリーンでマリオカート大会。64でちょっとプレイしたきりなので、いい順位は出せず。

11月6日

ポッドキャストを大量にMP3プレーヤーに突っ込んで、散歩に出かける。三鷹のりんてん舎、水中書房、吉祥寺の防破堤、百年、荻窪のTitleと回っていくも、結局特に何も買うことなく、ただたくさん本を見て、とにかく歩いたのだった。

帰りに最寄りの図書館に立ち寄ったらミルハウザーの『夜の声』が新着コーナーに来ていたので借りる。ちょうど昨日読み始めた『ホーム・ラン』と『夜の声』は原著では1冊の短編集だったのだが、日本版では2冊に分けて刊行されたらしい。『夜の声』の巻末に、原著の収録順で短編の訳者解説が載っていたので、その順に読んでいこうと思う。

夜はポッドキャスト更新。最近読んだ本の紹介をダーっと喋る。『驟雨とビール』に対してP.O.P『猫とBEER』は我ながらベストマッチの選曲だと思う。

筋肉痛がしんどすぎて、夜はなかなか寝付けず。

11月7日

寝不足がしんどくてまともに動けず。とりあえず今度のゾンビトークに備えて『セーラーゾンビ』見直しは最後まで終えた。やはり舞子が将来の自分へ語りかける動画を撮るシーンはすごく良いなぁ。

鬼平は6巻目に突入して今回は『礼金二百両』。平蔵が内密に相談された誘拐事件&将軍から賜った短刀の窃盗事件を解決する話。実は密偵のケアなど諸々に金がかかって、火付盗賊改は経営がなかなかキツいという事情がわかるのが面白い。事件を解決したことでもらったせっかくの礼金二百両も、火盗改の運営費用に回すことにして、部下の佐嶋と2人で冬の夕暮れの寒い中のっぺい汁を食べるラストはしみじみと侘しい。それでもこの仕事を辞められないのは、正義感というよりも、この仕事の妙な面白さゆえだった。

「(前略)つまりはその、盗賊相手にはたらく御役目へ、おれはどっぷり足をとられてしまっている。いまのおれとくらべて見て、以前に、いろいろとつとめた他の御役目なぞの味気なさをおもい出すと、ぞっとしてしまうのだ」
「まあ、そのようなことを……」
「そのとおりだ。いずれも堅苦しく肩ひじを張っておつとめをする役目で、なんの新しさも感動もなかった。それにくらべると、いまおれがしていることは、日に日に新しい。いろいろな人間たちの、いろいろな心とふれあい、憎みながらあわれみ、あわれみつつ闘わねばならぬ。四十をこえて長谷川平蔵、人の世がまことにおもしろくなってきて、な……」

この辺り、単純なヒーローものとはやっぱり違うバランスだな。

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