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7月19日~27日 第10巻 『お熊と茂平』

7月19日

昨日深夜から真山さんのスペースを聴いていていいところで切り上げて寝ちゃうつもりだったが、途中で話したくなってスピーカーとして参加。結局深夜3時ごろまで真山さんと喋っていた。映画『恋は光』の話や好きな本の話、個人的なもやもやの話など。よく考えると、真山さんと二人でこんなに話したのって初めてかもしれなかった。

午前中はボリューム多めの案件が続いたけど、その後は午後からは比較的暇になったので、なんとかやっつける。

7月20日

コロナの新規感染者がえらいことになっていて、かなりマズいのではないか。週末出かけたい気持ちがあったのだが、家にこもった方がよいのかもしれない。様子を見よう。

仕事をして、帰って『歓待1.1』を観る。小さな町工場に男がやってきてどんどん内部に食い込んでくる前半は『淵に立つ』と共通しつつも、後半の方はこっちの方が突飛で混沌とした感じがあり、ちょっと可笑しみがありつつヒリヒリもする変な映画だった。ほどよくうさん臭い古館寛治、鋭い雰囲気もありながら所在なさげな杉野希妃がよかった。

7月21日

今日は完全に調子が悪い。早くに目が覚めてしまって「これはダメだ」と分かる寝足りなさ。一応、二度寝をするも立て直せず。なんとなく目の焦点が合わないし、なんだか体が遠い感覚。しかし午前中は案件がなく、ちょっと会社のブログを書いては休憩しながらやり過ごす。

夜は日本映画専門チャンネルで録画していた『岸辺のアルバム』第1話を観る。仕事中心で家庭を顧みない夫、反抗期の娘、受験前の息子に囲まれ、自分は家事と内職ばかりで自由な時間がない主婦が、顔も知らない怪しい男からの電話に「人との交流や非日常な体験に飢えている」ことを指摘され、じわじわと浮足立つまでをじっくり描いている。今のドラマだともう少し起伏のある展開をやりそうだけど、全15話という長さもあってか、程よいところで留めている印象。

7月22日

会社の人にコロナ陽性の診断が出て、感染拡大もいよいよだな、と思って帰宅後、38℃台の熱がガツンと出る。これは危ないぞと思い、急いで東京都発熱相談センターに連絡を取る。家からぎりぎり徒歩圏内で土曜日にも診療を受けられる病院を3軒紹介してもらい、明日の朝イチで電話をかけて、発熱外来の予約を取るように指示を受ける。

7月23日

朝9時ごろから紹介してもらった病院に電話をかけるも、どこも話し中でなかなか繋がらない。コロナの影響をひしひしと感じる。やっと1軒つながり、電話で問診があった後、11時半に病院へ来るように言われる。

外は暑い。公共交通機関はなるべく使わないようにと言われているので、徒歩で病院へ向かう。病院は教えてもらった3軒の中で家から最も遠く、一駅分に近い距離を歩くことになった。
内科は住宅街の中にたたずむ一軒家で、電話で指定された通り裏口からチャイムを鳴らすと、「はーい」と女性の声がしてドアが開く。入ったところがすぐ、こじんまりとした診察室につながっている。先生も看護師さんもおばあちゃんで、地域のお医者さんとして、長いことここでやってきたんだろうな、というほのぼのとした雰囲気があった。鼻に棒を突っ込まれて数分で「コロナ陽性」という診断が出る。この後の手順を聞いて、薬をもらって、暑い中、来た道を引き返していった。

コロナ陽性になった旨の登録やら、配食の申し込みやらを済ませ、あとはほとんど寝ていた。コロナ陽性になった旨を会社の同部署メンバーにLINEしたら、他のメンバーもみんな発熱していた。こりゃ大変だ。

7月24日

先にネタばらしをしておくと、これから7月27日までの日記は、8月1日に書かれている。というか、7月23日の日記の途中からそうだ。ほとんどこのコロナ療養期間は日記を書く気力がなかったので、ずいぶん書き進めるのが後回しになってしまった。

熱は37℃台になったが、起き上がったり動いたりすると頭が痛くてしんどいので、基本的にはyoutubeで動画を観たり、録画したテレビを寝転んで観る生活に突入する。『初恋の悪魔』2話、『石子と羽男』2話。タイマン森本のウエストランド井口回は愚痴と悪口が高密度ノンストップで繰り広げられるため、「もう30分くらい聴いたかな」と思って画面を見たら、まだ10分しか経っていなかった。
日本映画専門チャンネルで『キャラクター』を観る。キャスト陣がとてもよく、小栗旬はこういう人情派のあんちゃんが似合うなぁ~、と思っていたら大変なことになってしまって絶句。イヤな展開をちゃんとやってくれて、結構面白く見れた。『キャラクター』ではバディだった小栗旬と中村獅童だったが、続けて観た『鎌倉殿の13人』最新回では中村獅童が大変なことになっていて「うへ~」となる。

夜中、キッチンにゴキブリが出てきてスピーディーに仕留める。熱が出ててもこういうときの動きは速い。

7月25日

コロナになっても給与は出るし、賞与は出る。スマホから家賃振り込みを済ませて、あとは寝たり起きたりを繰り返す。会社の人の中には週末に発熱して、まだ医師の診断を受けられていない人もいる。発症した翌日の昼にはコロナ陽性の診断が出ていた僕のケースは、かなりスムーズな方だったんだな。

『岸辺のアルバム』2話。八千草薫の「ほんとよ、ほんとよ」が耳に残る。

7月26日

昨晩は38.6℃まで熱が上がって、まだまだ油断はできない。

『恋の光』が良かったから、と同じ小林啓一監督の『殺さない彼と死なない彼女』を軽い気持ちで観はじめたら予想以上にベソべソに泣いてしまった。光多めの白っぽい画面が、そのまま青春のまぶしさと儚さとして襲いかかってくる。泣いている桜井日奈子を見てあまりに辛い気持ちになったので、youtubeで桜井日奈子公式チャンネルを検索して、桜井日奈子がスポッチャで楽しそうにしている動画を観たらちょっと落ち着いた。

夜は岩井秀人『て』を観る。認知症が進行しているおばあちゃんや、家庭内で暴力を振るってきた父親に対して、母や4人きょうだいが抱いている気持ちのグラデーションが、そのまま家族内の軋轢となっていく様が精緻に描かれて、めちゃめちゃ面白いんだけど感情のぶちまけ合いにへとへとになる。

7月27日

昼は『私をくいとめて』を観ていた。「あまちゃん」も「この世界の片隅に」もちゃんと観ておらず、よくよく考えると能年玲奈/のんの出演作をきっちり観たのって初めてだったかも。ポップでチャーミングな語り口に見えて、新しい関係を築く高揚感と不安や、社会において女性が追いやられる立場への憤り、30代となってちょっと引き返せないところに差し掛かりつつある人生への感慨などがバシバシ入ってくる。ワイワイ楽しいだけでは終わらせない絶妙なバランス感覚。

鬼平はシリーズお馴染みのキャラクター、「笹や」のお熊婆さんがメインの回。笹やの向かいにある弥勒寺で、下男として働いていた老人・茂平。お熊は茂平の穏やかな人柄を気に入り、茂平にたびたびお茶や饅頭をごちそうしてやっていた。ある日、急病に倒れた茂平は、病床へお熊を呼び寄せ、大金の入った胴巻きを預けるとそのまま息を引き取ってしまう。大金は神奈川宿にいる茂平の孫・おみつに渡してほしい、というのだが……。今回は平蔵に相談を持ち掛けるだけでなく、聞き込み調査もやって大活躍。老齢で「生きてるのに飽いちまった」と語るほどのお熊さんがこんなに生き生きするのは、鬼平シリーズで頻出する「久しぶりの仕事に張り切る老盗」パターンの変奏だろう。それでいて、コミカルなキャラだったお熊さんが、茂平のために墓を立ててやれることに涙ぐむ場面もあってグッとくる。
ようやく第10巻を読み終わった。先はまだ長い。

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