9月4日〜12日 第5巻 『乞食坊主』
9月4日
本屋さんをぐるーっと回遊するも何も買わず。
夕方に『ベイビーわるきゅーれ』を観る。西田さんの推し監督の作品で、歯と背さんもTwitterで推してたので観たかったやつ。これがとっても楽しい。殺し屋の女子2人が共同生活を始める、という話なんだけど、基本的にノリがからっと明るい。この手の作品だとやりがちな「主人公には暗い過去があって、実は今回の敵がその因縁の相手……」みたいなのは一切ナシ。会話劇は楽しいし、話の主軸は「バイトが決まらない」ことだったりして悩みも社会に出たばかりの等身大。日常生活を同じ位置のカメラからジャンプカットで見せる場面とか、へたなやつだと殺人と日常のギャップで笑わせにいきがちなんだと思うが、それをやらずにちゃんと彼女たちの日常生活の良さで押し切っているのも素敵。それでいて敵とのアクションはキレキレ。冒頭のコンビニ戦、体格差によって敵に持ち上げられたところに臆せず刺しまくって崩すのとか、小柄な体格ならではの仕留め方もあってよかった。阪元監督は他の作品も見ねば。
家に帰ってポッドキャストを更新。今回は浪曲、ポストロックと落語のコラボという「音楽+話芸」特集回。たぶんMusic+Talkでは音楽を解説する番組が増えると思うんだが、実はそのままだとなかなか聴いてもらえない10分超の音源に前説・後説をつけて番組化して届ける、みたいなやり方がかなりアリな気はしている。
Twitterでのやり取りの流れから大学時代のレポート・卒論の話になって、懐かしいので久しぶりに引っ張りだしてきて読む。荒いところはめちゃめちゃ雑だけど、読んでいて面白いなぁとは思う。これくらい色々と考えて書く、みたいなことは最近できていない。大学時代は常に講義で面白い情報をインプットしまくっていたからなぁ。あの環境はすごいことだったんだな、と社会人をやっているとひしひし感じる。
9月5日
昼からぐずぐずと動き始めて、太田記念美術館の歌川国芳展。「女形を演じる男性俳優を猫に戯画化して表現する」とか、なんて込み入った表現なんだと驚く一方で、今でもTwitterとかでこういうの見かけ得るよなと思う。『東海道中膝栗毛』の作中にない場面を描いたものとか、二次創作のファンアートっぽいし。
ものすごく眠いな~と思いながら、タイミングが合ったので『孤狼の血 LEVEL2』も観てしまう。自分が調整役となって裏から上手いこと手を回していた、と思ったら完全に組織の掌の上だった、という悲哀。特に後半のある展開では「え~~~!?」と声を上げそうになってしまった。そういえば誰かが展開を匂わせているツイートを見たはずなんだけど、かなり素直に騙されていた。ダーティさと青臭さの間でゆらぐ松坂桃李、顔つきからして悪魔的な鈴木亮平はとてもいい。不自然に揺らぎだす手持ちカメラのシーンなどギョッとする場面とかがある一方、ちょっと139分は長いかなとか、「え、その情報は知った上で、こいつを信用してたの?」みたいな若干腑に落ちないポイントもあったかな。
9月6日
今週は交代休業で制作部も入れ替わりで休む予定なんだけど、ここのところ細々と仕事量が増えて忙しくなってきているので、回せるのかどうかちょっと心配。ちなみに僕は明日休み。
久々にゾンビ映画の話をTwitterでしていて、ゾンビ映画見直したいな~という気持ちになりながら、全く関係のない『なぜ君は総理大臣になれないのか』を観た。心からこの国を良くしたい気持ちはありながら、上昇志向や欲の薄さ、駆け引きベタな面があり、なかなかいいポジションに立てない政治家・小川淳也の選挙戦を追うドキュメンタリー。自分の意見を通すためには議員内で影響力を持たなければならない、そのためには選挙区で勝たなければならず、そのためには信条の異なる党へ合流することもやむを得ないというジレンマに揺らぐ小川さんの苦闘っぷりが見ごたえある。「あいつは政治家には向いていないと思う」と言いながらも息子をサポートする両親、「小学校の頃、父親の看板が学校のすぐ近くに立って最悪だった」と愚痴りながらも父親と共に街頭にたつ娘など、家族のあり方も面白い。っていうか政治家の家族推しってちゃんと効き目あるんだな、と、選挙活動に対する市井の人々の反応を見て思う。
深夜にTwitter見てたら「仏俳優ベルモンドさん死去」との文字が。まさかと思って見てみたらやはりジャン=ポール・ベルモンドの訃報だった。ベルモンドさんって。
9月7日
録画していたテレ東の謎番組「蓋」を見る。監視カメラやスマホの自撮り、隠しカメラ(?)などの映像を繋いだPOV。一応、人の会話も映っているが、現時点ではどう転がっていくのか不明。フェイクドキュメンタリーなのかな。
今日はお休みなので朝から最寄りの映画館で『映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』を観る。今作の肝であるミステリー要素はしっかりしていて、これは誰が犯人か途中で気付く人・気付かない人がほどよくバラけるだろうなという案配。ある謎について言葉で解説するのでなく、楽しいアクションの流れの中で画として見せるのとか上手い。容疑者となるキャラたちをミスリード要員にせず、ちゃんとそれぞれの活躍の場を与えているのもよくできている。今は仲良しでも成長したら離れ離れになるであろう関係性に踏み込み、それを「青春」としてポジティブに捉え直す作りに加え、親たちの子離れ、成果主義・ネオリベが蔓延した社会への批評性、エッセンシャルワーカーに置き換わる機械・AIなども盛り込んで100分台。全てがキレイで最先端な環境の中、唯一ボロボロで誰も使っていない場所が図書館、とか、設定の行き届き方に感心する。しかも「オトナ帝国」的な高品質ですよ、という気取りがなくて、おバカなギャグや楽しいエンタメ要素も散りばめてあり、こりゃ評価が高いのわかるなぁと思った。何か所かで泣く。
帰りに日高屋で期間限定の天津飯と餃子。関西の王将で育ってきた身なので、「あー、そうか、関東だと天津飯は甘酢かぁ……」となってしまったが、まぁまぁ美味しい。週末のワクチン接種に向けた買い出しも終えて帰宅。
夜は先輩とLINE飲みをやって近況なり、最近面白かったコンテンツ話などもして、3時間強話していた。誰かと喋りたい欲が解消されるどころか、話し過ぎてちょっと喉が枯れた。
9月8日
朝早く目が覚めたのでパリッコ/スズキナオ『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』。お酒の楽しみを紹介する雑誌として立ち上げながら、コロナ禍直撃で家飲み特集になったらしい。日常の飲みをナイスな一回に変えてしまうためのささやかなアイデア集。「水を酒だと思って飲む」はもう行くところまで行ききっている気がするが。
仕事は雑発注がまたもややってきて、本文に詳細を書かず「PDFを見てもらえればわかる」という旨のメールに添付されたそのPDFがめちゃくちゃ間違っている、という、もう俺にはどうしようもないよ……というレベルのものだったので、もう気分ががっくりくる。
わかしょ文庫さんがTwitterで「『ユニヴァーサル相撲協会』が読みたい(ない)。」と書いていて、それなら『ユニヴァーサル落語協会』も読みたいな、と思った。架空の寄席で、架空の落語家たちが出演する架空の公演を、サイコロを振って決めるのだ。何のネタをやるのかもランダムな方がいい。しかし、野球に比べて分岐の選択肢が多すぎるので、かなり途方もない感じがあるが……。どちらにしろ積ん読している『ユニヴァーサル野球協会』を読まなければならない。
9月9日
週末に新型コロナのワクチン接種1回目なので、何を準備しておけばいいかをTwitterで聞いたら、大量に知見リプライが届いた。普段ふざけたリプライばかりの友人ですら、真面目な情報を送ってきたので、ことの大変さがよくわかる。まだ1回目だからそこまで症状は出ないのでは、という予想はあるが、念のためかなり万全な準備をしておく。
ウィダーinゼリーを冷蔵庫にぎゅうぎゅう詰め込む。
夜はNetflixで『ガス人間第一号』を観ていた。
どんな物でも思いのままになる能力を得てむしろ自らの欲望を叶えることに虚無を感じ、その一方で悲劇の主人公として自己憐憫に耽溺しているガス人間。恋人・藤千代とのやり取りで「僕は精いっぱい生きるんだ!」と口走ったり、藤千代の公演後に「僕ら負けるもんか」と言ったりとあくまで自己中心。一方、彼から金を受け取ったり、作戦に反して公演を続けた挙句爺やを巻き込んでしまったりと、藤千代もあくまで自己中心であり、純愛のようでありながら、互いに利用しあっている関係、というのが恐ろしくもある。ガス人間が鉄格子をすり抜ける描写など、特殊効果も楽しい。
9月10日
仕事、結構なボリュームのものが入ってきた。週末ワクチンで副反応がどうなるかわからんので、来週この量捌けるのかしら……とちょっと心配。
帰宅後はアトロクの森田芳光特集を聴きながら、予診票の準備。早めに寝てしまう。
9月11日
早めに家を出てブックファースト新宿店を覗いてから、東京都庁のワクチン接種会場へ。受付を済ませてエレベーターで急上昇すると、展望台内にブースが設営されすっかり接種センターとなっていた。いきものがかりの曲のピアノ版が流れていたけど、あれは備え付けのピアノを誰かが弾いていたのだろうか、それとも単なるBGM音源だったのだろうか。接種はスムーズに終わって、とりあえずまっすぐ帰宅。風呂に入って軽く昼寝。
数時間経ったが腕の痛みがあるくらいで熱は無し。録画していた映画の中から『海を駆ける』を観る。ディーン・フジオカがもっと掻き回すのかと思っていたが、生と死のどちらも司る海の化身のような存在としてふわふわ存在していて(その分、不条理な行動にゾッともするのだが)、どちらかと言えば戦争や津波の傷跡が残るインドネシアの街での、若者たちの交流や恋がメイン。それぞれの言語で歌われる「幸せなら手を叩こう」のシーンが印象的だった。
夜は誰かと喋りたいな〜と思ってTwitterスペースを開く。前半は菜漓さんからソシャゲ話を聞き、後半はにゃぽーなさんや金柑さんも加わって映画の話などをした。
9月12日
腕の痛みはまだまだ残っているが、熱や変な違和感はない。
昼から三鷹のりんてん舎、水中書店、西荻窪のロカンタン、今野書店をぐるっと回る。今野書店では『時給はいつも最低賃金、これって私のせいですか?』を買う。
読みかけの本と、それから鬼平を読んでしまおうと思い、西荻窪のfuzkueへ初めて行く。ちゃんとfuzkueの雰囲気だ!となって、噂の店内一番奥の席(通称・精神の時の部屋)へは行けずに、手前の普通の席に座って本を読む。飲み物はコーラシロップにミルク。炭酸がない、コーラだけの要素を抽出されると「あー、要するにコーラの味ってスパイスの味わいなのか」と再認識する。チーズケーキもちょっとずつ食べる。読みかけていた本、『理不尽な進化』を読み切ってしまって、途中の進化論に関する専門家間での論争のくだりはちょっとぼんやりしてしまったが、基本的には面白く読めた。
鬼平は『乞食坊主』。盗賊たちの相談の場に偶然居合わせた、乞食坊主・録之助。口封じのために差し向けられた刺客を返り討ちにするも、その相手は殺し屋に身を落としたかつての剣友・伊介だった。同じく道場で剣友だった平蔵の元へ訪れた録之助は、事情を話した上で、伊介へのお目こぼしを願う。仲間への情状酌量を平蔵に頼むという展開は、1話前の『深川・千鳥橋』と似ている。『深川・千鳥橋』で大工の万三は平蔵に見逃してもらい生き延びたが(と言っても病で余命は少ないのだが)、今回は伊介が自害してしまうラストになっていてやりきれなさが残る。平蔵も今は火付盗賊改方のリーダーという要職に就いているが、どこかで踏み外していれば、乞食坊主や殺し屋としてアウトローに転落してしまう可能性も十分あったから余計に切ない。うっすらと『理不尽な進化』で書かれていることも思い浮かべる。平蔵はある程度の地位を得て、録之助・伊介は侍としての出世から外れた。それを隔てたのは個人の能力よりも運の要素が大きいわけで、個人が環境変化に適応できなかったのが悪いわけではない。むしろ録之助の乞食坊主という生き方はによってここまで生き延びれたということでもあるし……。
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