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8月13日~16日 第24巻 『誘拐』(完結)

8月13日

天気悪いのではと思ったらめちゃくちゃ晴れている朝。とはいえ、天気予報サイトの雨雲レーダーを見ると、この後降りそうな雰囲気で油断ならない。とりあえず外に出ると、やっぱりざーっと降ってきて、雨宿りとかしながらだったので、目的の落語会に遅れそうになった。

当日券で滑り込んだ、柳家小ふねさんの独演会「小ふねのみなと」。シブラクで以前2回ほど観て、もっとたっぷり見たいと思っていたので来られて嬉しい。口調は古典っぽいのに、意表を突いてくるフレーズの数々が可笑しくてゲラゲラ笑う。ネタ下ろしらしい「天災」は、凶暴な八五郎に紅羅坊先生がちゃんとビビっているのが面白い。八五郎を差し向けた隠居に対して先生がつぶやく「やってくれましたな、岩田のご隠居!」、少しずつ理詰めが効いてきた時の「よし、勝てる」など、ちょっとしたワード選びのセンスがすごい。鈴ヶ森、金明竹もかなり面白くて、これは追いたい二つ目さんが増えた。助演として立川笑王丸さんが自作「八五郎長屋」をやっていたんだけど、これもよくできていた。特に途中で出てくるバカの八公は、笑王丸さんの明るさととてもマッチしている。前座でどかどかウケていてすごい。

会場を出ると大雨で、体をなんとか縮こませて折り畳み傘の幅に収まろうとするも、ズボンの裾はぐっしょり。

途中また雨宿りで時間をつぶしつつ帰宅。めちゃくちゃデカい蝉の羽音が聞こえて、「室内に閉じ込めちゃったか?」と慌てたが、どうやら部屋から漏れ出た光を目指して飛んできた蝉が窓に激突してきているっぽい。蝉がかわいそうだが、羽音がデカくていちいちビクッとなる。

夜。『VIVANT』を観てから、ひとりでスペース配信。はちたそさんから「落語を体系的に知るにはどうしたら?」という質問ツイートがあったので、それにこたえる形で落語入門的な話を思いつくままに喋った。

8月14日

雨が降る前に予定を済ませようと思い、急いで月詠を作って郵便局で発送。せっかく外に出たし、と思い昼からビールと焼鳥で一杯やる。まだ全然天気がよさそうだなと思って、急遽初台まで足を伸ばしてfuzkue。最近は西荻窪の店舗に行くことが多かったので、こっちのお店は久し振り。シャンディガフとチーズケーキ、ジンジャーミルクで3時間。僕にとってのfuzkueの味は、ジンジャーシロップになりつつある。群像8月号で読みかけだった鈴木涼美『トラディション』を読み切り、長嶋有『トゥデイズ』を頭から最後まで。これで群像8月号は読了。9月号にいよいよ取り組めるぞ。

帰りに新宿ブックファーストに立ち寄ると、家具コーナー(家具のお店のポップアップ的なやつ?)ができていて、フロア内にたくさんのソファとテーブル。結構、圧迫感がある。

8月15日

前日、だらだらと夜更かししたので、日記の更新を済ませたら3時間弱の昼寝。夜は渋谷らくごで「談吉イリュージョン」の回を観る。伸べえさんは新作でも独特なテンション。タコパも陶芸教室も、みんなモテることしか考えていないという偏見炸裂でそういう噺かぁと思って見ていたら、いきなりドタバタコメディみたいになり、ラストは力技な展開でオチにしていて可笑しい。百栄師匠が「伸べえさんはずっと『次にオチ言いますよ』みたいな喋り方だ」と評していた。百栄師匠の「七つのツボを押す男」は音源で聴いていたが生の高座は初めて。北斗の拳がマッサージ師になっていたら、というコントみたいな設定に、森の石松三十石を組み合わせるという謎のマリアージュ。あまりテンションを上げ過ぎないトーンから入って淡々と馬鹿馬鹿しい噺をやっていて、ずっとニヤニヤしながら観ていた。きく麿師匠は、デイホームでの人気を回復するために70代のおじいさんが「老人あるある自虐漫談」を披露するという噺で、劇中劇としておじいさんによるピンネタがまるっと演じられるんだけどこれのクオリティが異様に高い。落語内ではスベッたことになっていたが、実際の客席は爆笑に次ぐ爆笑だった。トリの談吉さんは何も思いつかないまま書いてみたという新作ネタ下ろし「ゴメス」と、ちょっと講談的な面白さもある「師匠殺しのサイゾー」の二本立て。ゴメスは一つの要素が入れ替わったり付け加わったりするだけで、脳内がエラーを感知して笑いになる感触が独特。師匠殺しのサイゾーは、師匠になったやつだけを殺す殺人者という設定からして変なのだけど、師匠を殺された弟子たちが協力してサイゾーを捕らえる展開は、映像を思い浮かべるとちょっとだけアツい。講談師の人にカバーしてもらいたい。

脳みそをぐいぐい揉みほぐされて満足。帰路につき最寄り駅に降りたら大雨。雨雲レーダーを見たら、縦にまっすぐの雨雲がちょうど僕の住んでいるエリアを通過している。折り畳み傘もあまり効かず。びしょ濡れで家に着いた。

8月16日

夏休み明け1発目の仕事。ほとんど案件がなくて、ちょっとした修正作業等に返したら、後はほとんど暇になってしまった。もう週末どこ行こうかなぁとか考えている。

鬼平を読む。「誘拐」は池波が途中で逝去したため未完となった作品。同心・松永が盗人・虎次郎を捕縛した。取り調べ拷問されても虎次郎は何も吐かない。平蔵はあえて役宅から虎次郎を逃がし、密偵たちに見張らせる策をとった。翌日、虎次郎はキレイな身なりになって笹屋に現れる。なんと、おまさを訪ねて来たというのだが……という話。おまさが誘拐されてしまったあたりで、未完の物語は途切れてしまっている。以前のエピソードでおまさに惹かれ執着するも裏切られてしまった、荒神のお夏が裏で糸を引いているらしいのだが、姿を見せることなく、鬼平犯科帳は終わりを迎えた。巻末に池波作品を概観するような尾崎秀樹の解説があり、それを読み終えて、『鬼平犯科帳』全24巻は読破。

途切れた物語の続きを想像しながら、眠りにつく。

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